派遣会社は派遣する社員が派遣先企業で3年以上連続して働いてはいけないルール。いわゆる3年ルールが存在するため、抵触日は派遣会社が必ず守らなければならないルールです。
しかし、この抵触日をしっかりと把握し派遣先企業と連携しておくことで、円滑に派遣事業を運営できる効果もあります。
そこでこの記事では、派遣事業に大切な「抵触日」と、派遣先企業が必ず送付しなければならない「抵触日通知書」について詳しく解説していきます。
これから派遣事業の運営を考えている方はぜひ参考にしてみてください。
抵触日通知書とは
派遣社員の雇用契約期間である3年の最後の出勤日となる抵触日。
派遣会社を利用している派遣先企業は、この抵触日を派遣元、つまり、派遣会社へ通知する義務があります。この抵触日の通知を正式に書類にしたものが「抵触日通知書」と呼びます。
派遣事業では、派遣する社員は派遣先企業にて3年以上働いてはいけないというルール、いわゆる3年ルールが存在します。この3年ルールは、2021年に施行された労働者派遣方改正(派遣法第26条第5項、第6項)にも記載されている内容であり、派遣事業運営会社はこのルールを守る必要があります。
しかし、例外として派遣先企業へ直接雇用される場合は別部署への異動などで3年以上働けることもあるので、気になる方は以下のリンクから「抵触日」について詳しい説明をご覧ください。
この抵触日通知書は、派遣社員を派遣先企業へ送ることが決定した「派遣契約」が締結される前に、派遣するひとりひとりの抵触日を書面にて通知する必要があります。
これは、派遣会社と派遣先企業間で労働者派遣法にある3年ルールを破らないようにするためや、抵触日後に人材配置に空きがないようにする目的があります。
つまり、この抵触日通知書は、事業所単位の抵触日を把握し派遣可能期間の制限を超えないようにする機能はもちろん。派遣会社と派遣先企業が円滑に事業を運営するために重要な書類となります。
そのため、必ず派遣契約を締結する前に抵触日通知書を事前に送付しておきましょう。
抵触日通知書の通知方法は紙媒体だけでなく電子媒体(電子メール)などでも認められているため、比較的簡単に通知することができます。派遣先は、何人の派遣スタッフを抱えているのかを把握し、ひとりひとりの抵触日を把握し管理する必要があります。
厳格な管理に基づき、派遣契約を締結する際には、抵触日通知書の受領を忘れないようにしましょう。
抵触日通知書は、原則派遣会社を利用する派遣先企業が制作する必要があります。もちろん、契約締結時に派遣会社から抵触日通知書のフォーマットなどがもらえる場合もありますが、記入し通知するのは派遣先企業。
そこで、初めて派遣会社を利用する場合はどんな抵触日通知書を作れば良いのでしょうか。
以下では、抵触日通知書の作り方と記載しなければならない情報について解説していきます。
記載事項
抵触日通知書には決められたフォーマットはありません。派遣先企業がそれぞれ自由に作成できますが、記載しなければならない情報は存在します。
抵触日通知書に記載すべき情報は就業場所・業務内容・派遣受け入れ開始予定日・派遣受け入れ期間制限抵触日の主に4つです。
就業場所
抵触日通知書では、派遣会社が派遣する派遣労働者がどこの派遣先企業で働くか、会社所在地の住所や営業所などを記す必要があります。
移動を伴う業務の場合は原則配属される営業所が就業場所となりますが、派遣先企業によって異なるため、派遣契約を結ぶ前に確認しておくことが大切です。
抵触日通知書は後から修正することが困難です。事前に派遣先企業とテキストが残る形での確認をおすすめします。
業務内容
業務内容も抵触日通知書に記載すべき情報です。
抵触日通知書そのものに業務内容を確約する効果などはありませんが、事業所によって仕事が違う場合などは、抵触日後に他人材を派遣する際の目安となります。
業務内容を確認しておくことで、今後の派遣事業にも良い影響を与えてくれることでしょう。
派遣受け入れ開始予定日
抵触日通知書で必ず記入しなければならないのが「派遣受け入れ開始日」です。
これは派遣社員が派遣先企業で働き出した日のことを指し、この日から3年ルールが始まるため、この日を通知できていなければ抵触日を正確に測ることができません。
もし、派遣社員を抵触日を破って派遣してしまった場合、労働局から指導が下ることもあります。最悪のケースでは営業停止処分となった事例もあるため、忘れずに開始予定日を記入するようにしましょう。
また、何らかの事情で派遣受け入れ予定日がズレる場合は、再度派遣契約締結前に抵触日通知書を派遣会社に送付するようにしてください。こういったケースが考えられるため、抵触日通知書は比較的簡単な送付が認められていると言えるでしょう。
派遣受け入れ期間制限抵触日
最後に「派遣受け入れ期間制限抵触日」を記入するようにしてください。
一般的な抵触日は「3年ルール」に基づき派遣開始日から3年後の翌日になります。
つまり、2020/4/1に派遣会社が派遣先企業に社員を派遣した場合。3年ルールに基づき2023/4/1に抵触日に触れることとなります。
よく、抵触日は3年ルールと言われるため、3年間で抵触日に触れると思われがちですが、実際には「3年間働ける」ため、抵触日自体は3年と1日後になりますので、注意が必要です。
上記が、抵触日通知書に記載するべき情報でした。
書き方やフォーマットは原則自由ですが、インターネット上には社労士事務所などが無料で配布している抵触日通知書のフォーマットなどがありますので、そちらを使うと手間がなく抵触日通知書を作成できます。
マッチングッドでは、この抵触日通知書のフォーマットを無料でダウンロードできます。
抵触日通知書をゼロから作るのが難しいという方はぜひこちらのフォーマットをご利用ください。
抵触日通知書は、派遣会社にとって社員を派遣する度に使うものです。社員を派遣する度にいちから作っていては手間も時間もかかってしまうため、可能な限りフォーマット化し、簡略化しておきましょう。
抵触日通知書は、労働者派遣法の3年ルールに基づいて通知が必要です。しかし、この3年ルールに該当しない場合はどうすれば良いのでしょうか?
実は、3年ルールに該当しない派遣社員の抵触日は通知する必要がありません。以下ではそのような抵触日の通知が必要ない派遣社員の特徴について解説します。
抵触日通知が不要な派遣の例
上記で解説したように、抵触日の通知は派遣事業を運営する上で欠かせません。
しかし、以下に該当する派遣社員の方には、抵触日の通知が不要です。
派遣元事業主に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
派遣元の事業主。つまり、派遣会社に無期雇用される場合も、抵触日を通知する必要がありません。
抵触日は期限がある派遣労働者の方に通知するものである一方、無期雇用の派遣労働者の方には通知する義務はありません。
60 歳以上の派遣労働者を派遣する場合
60歳以上の派遣社員の方を、派遣先企業に派遣する場合は、本人と派遣先企業のどちらにも抵触日を通知する必要はありません。
しかし、60歳を超えている場合でも有期雇用である場合は、派遣会社は抵触日を通知する義務があります。60歳以上の場合は、明確に期間が決められている場合をのぞいて抵触日を通知する必要はないため、その場合は事前に確認しておきましょう。
終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
有期雇用の場合に必要になる抵触日の通知ですが、終期が明確なプロジェクトへ参画する場合も抵触日の通知は必要ありません。
そのため、雇用が終わるとともにプロジェクト自体がなくなるような場合は終期が確実になります。終期が確実な場合でなければ抵触日を通知する必要はありますが、このような場合は抵触日を通知する必要はありません。
日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ 10 日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
前項の場合と同様に日数が限定されていることで終期が明確な場合も抵触日を通知する必要はありません。この場合も有期的ではありますが「終期が明確になっている」という条件から抵触日を通知しなくても良い決まりになっています。
ただし、これは1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ10日以下であるものという条件付きです。このような場合に該当する派遣労働者の方がいる場合には、事前に確認し、終期がズレる恐れがないかも確認する必要があります。
産前産後休業・育児休業・介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合
派遣先企業が派遣社員の方を求める理由として、産前産後休業・育児休業・介護休業等を取得する社員が持つ業務の穴埋めのために、派遣労働者を派遣する場合も、抵触日を通知する必要はありません。
この背景としては、抵触日の通知の目的に「長期雇用慣行を前提とした企業への帰属意識の高揚等が困難となり、技術革新等への柔軟な対応が困難になることを及ぼすおそれ」があるからです。
産前産後休業・育児休業・介護休業等は、休業期間が有期的でないケースや、有期的であったとしてもずれ込む恐れがあるためです。このような場合は抵触日を通知する必要はないと定められています。
まとめ:抵触日通知書は忘れずに!派遣元会社も注意しておきましょう
抵触日通知書は、派遣元は受領するのみです。派遣会社が能動的に用意する必要のない抵触日通知書ですが、契約に際して抵触日通知書が必要になる場合と不要となる場合があるため、派遣会社もここに注意しておく必要があります。
抵触日通知書は、派遣労働者ひとりひとりの個別事情に照らして決定するため、派遣先と確認をしたうえで派遣契約の締結に進めていく必要があります。
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