お役立ちノート 各種ドキュメント解説

労働者派遣事業収支決算書とは|必要性や書き方、記入例を紹介

人材派遣会社の事業主は、毎年「労働者派遣事業報告書」「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」の3つの書類を作成し、厚生労働大臣に提出しなければなりません。

その中の1つである「労働者派遣事業収支決算書」は、人材派遣会社の資産状況や売上状況を厚生労働大臣に報告するための資料で、労働者派遣事業報告書の作成における準備書類でもある重要な書類です。

この労働者派遣事業報告書は、労働者派遣法によって人材派遣業に携わるすべての事業者に提出が義務付けられているため、各書類をしっかりと作成・提出しなければなりません。

そこで今回は、労働者派遣事業収支決算書について、詳しく解説します。人材派遣業を営む方、または従事されている方も、ぜひ参考にしてください。

労働者派遣事業収支決算書とは

労働者派遣事業収支決算書とは、人材派遣会社の報告対象事業年度における資産等の状況及び労働者派遣事業に係る売り上げ等の状況について、事業主が厚生労働大臣に報告するための書類です。

報告内容に関しては、報告対象事業年度末における資産等の状況、及び労働者派遣事業に係る売上高等となっており、以下の事業形態に則して提出しましょう。

派遣元事業主が法人である場合

派遣元事業主が法人である場合には、労働者派遣事業収支決算書の記載に代えて、報告対象事業年度における確定した決算の貸借対照表及び損益計算書を添付しても差し支えありません。

また複数の事業を営む企業では、損益計算書について、可能な限り事業区分単位で記載することとなっており、労働者派遣事業に係る売上額を確認できる状況が望ましいとされています。

派遣元事業主が個人事業主である場合

派遣元事業主が個人事業主で青色申告をしている場合(記載事項の簡易な損益計算書を作成する場合を除く)には、収支決算書の記載に代えて、報告対象事業年度に係る貸借対照表及び損益計算書(税務署に提出したもので所得税青色申告決算書(一般用)中に貸借対照表及び損益計算書が記載されているもの)を添付しても差し支えありません。

なお、個人事業主の場合の損益計算書についても、可能な限り事業区分単位で記載することとなっており、労働者派遣事業に係る売上額が確認できる状況が望ましいとされています。

このように、派遣元事業主が労働者派遣事業以外の事業を兼業する場合において、収支決算書については、事業区分単位で記載することとなっており、労働者派遣事業に係る内容の確認をできる状況が望ましいとされています。ただし、事業区分単位の決算をしていない場合や、その把握が困難な場合等については、事業全体の収支の状況を記載しても差し支えありません。

なお、収支決算書の記載に代えて貸借対照表及び損益計算書を提出する場合も、原則として労働者派遣事業に係る売上額を確認できる状況が望ましいとされています。

労働者派遣事業収支決算書 様式第12号と記入例

労働者派遣事業収支決算書については、一般的に「様式第12号」が使用されます。この様式については「厚生労働省 労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年7月19日以降)」のページ内にある、労働者派遣事業収支決算書(様式第12号) [excel: 17KB 及び PDF: 111KB] よりダウンロード可能です。

なお、収支決算書は、様式第12号の「記載事例」を参考に記載しましょう。

参照:「厚生労働省 労働者派遣事業関係業務取扱要領(令和4年7月19日以降)」及び「厚生労働省 労働者派遣事業収支決算書(様式第12号)の記載事例」

労働者派遣事業収支決算書の提出

それでは次に、労働者派遣事業収支決算書の提出について解説します。

提出部数等について

人材派遣会社の事業主は、作成した収支決算書について、正本の1通とコピーした写しの2通を、事業主を管轄する労働局を経て、厚生労働大臣に提出しなければなりません。

なお、記載に代えて、貸借対照表及び損益計算書を提出することとした場合も同様です。 

事業主を管轄する労働局では、人材派遣会社の事業主から提出された収支決算書について、記載事項に不備がないことを確認の上で受理し、正本1通を本省に送付するとともに、そのうち1通を提出者に控えとして交付します。

提出期限について

収支決算書の提出期限は、人材派遣会社の事業主の事業年度を経過後3ヶ月以内とされています。

労働者派遣事業収支決算書の押印

労働者派遣事業収支決算書の押印に関しては、2020年12月25日に厚生労働省令の改正があり、当日以降の派遣事業や職業紹介事業に関する申請書や届出書への事業主の押印が不要となりました。

また労働者派遣事業収支決算書だけでなく、新規許可申請や更新申請、変更届の他、事業報告書についても同様の取り扱いとなるため、「届出者・申請者」欄の事業主の押印なしで労働局で受理してもらえます。これらの書類の裏面の記入要領には、これまで「記名押印又は署名」となっていましたが、現在は「記載」だけとなっており、署名も不要です。

労働者派遣事業収支決算書などの提出方法について

人材派遣会社の事業主は、毎年「労働者派遣事業報告書」「労働者派遣事業収支決算書」「関係派遣先派遣割合報告書」を作成し、事業主を管轄する労働局を経て、厚生労働大臣に提出しなければなりません。なお、人材を派遣した実績がない場合でも提出は必要です。 

「労働者派遣事業報告書」「労働者派遣事業収支決算書」及び「関係派遣先派遣割合報告書」については、郵送での提出も可能です。特に「労働者派遣事業報告書(年度報告)(6月1日現在の状況報告)」の提出期間(6/2~6/30)については、労働局の窓口が混み合うため、郵送での提出が推奨されています。    

郵送で提出する場合には、事業主の控えが返送されるため、切手を貼付した返信用封筒を必ず同封しましょう。なお、返送処理には数ヶ月かかるケースもあります)また、封筒には『労働者派遣事業報告書在中』と記載して送ります。

労働者派遣事業報告書の事前準備書類としての決算報告書

労働者派遣事業報告書とは、人材派遣業に携わるすべての事業者に提出が義務付けられている書類です。労働者派遣事業収支決算書は、この労働者派遣事業報告書の準備書類としても必要となる書類で、収支決算書類以外にも重要な書類などがあります。

以下では、労働者派遣事業報告書や、その準備のために必要となる書類について解説します。

労働者派遣事業報告書とは

労働者派遣事業報告書は、人材派遣を行う企業が管轄の労働局に対し、派遣労働者の待遇や労働環境を守り、法令通りに正しく運営しているかを報告するための書類です。

この報告書は、人材派遣会社が派遣事業を行っている限り、労働者の派遣実績が無い年度においても提出しなければならない重要書類となっています。

以前、労働者派遣事業報告書は、年度報告書と状況報告書の2つに分けられており、それぞれ年に1回ずつ提出されていました。しかし現在では、労働者派遣法の改正により労働者派遣事業報告書として1本化され、年に1回、6月30日迄の提出となっています。

労働者派遣事業報告書の内容は、事業の業績のほか、雇用する派遣スタッフの契約や雇用の状況、安全・衛生面教育、キャリアアップに資する教育訓練などです。そしてこれらを、厚生労働大臣宛てに詳細に報告します。

労働者派遣事業報告書の提出は労働者派遣法により義務化されています。そのため、虚偽報告や未提出、または提出期限を過ぎた場合に対し、厳しい罰則規定が設けられているので注意が必要です。

労働者派遣事業報告書についての詳しい解説はこちらの記事「労働者派遣事業報告書の作成と注意点を解説!違反者には許可の取消しも?」をご参照ください。

その他の準備書類

労働者派遣事業報告書を作成するにあたり、まずは以下の書類が必要となります。

労働者派遣事業収支決算書

労働者派遣事業報告書に、派遣事業の売上報告をする必要があるため、直近の決算報告書を用意しましょう。

労働者派遣事業個別契約書

各企業で雇用する派遣労働者の人数、有期雇用者と無期雇用者それぞれの人数、雇用期間、派遣先で従事する職種などを詳細に記入、報告するために、労働者派遣事業個別契約書が必要となります。

雇入れ時又は配置転換時の安全衛生教育実施記録

労働者派遣事業報告書では、安全衛生教育の実施記録についての報告が必要となります。

いつ、誰に、どのような内容で、何時間の安全衛生教育を実施したかを記録し、まとめておく必要があります。

派遣元管理台帳

安全衛生教育と同様、キャリアアップに関する教育や、雇用の安定に向けた措置についても詳細を報告しなければなりません。

そこで、教育指導の実施者や責任者、そして誰にどのような内容の教育を実施したかなどを記録しておきます。

その他の教育訓練実施記録

派遣労働者に対し、上記のような安全衛生やキャリアアップ教育以外の指導・教育を行っている事業者は、その内容を労働者派遣事業報告書に記載できるように記録しておきます。

総勘定元帳(派遣先事業主との取引額確認の為)

労働者派遣事業報告書には、各事業者の主な派遣先を記入する項目があります。そこには、取引額上位5社の社名と住所等を明記しなければならないため、総勘定元帳の準備が必要となります。

派遣料金請求書

労働者派遣事業報告書では、派遣料金を業種ごとに記入します。そこで、各業種ごとの派遣料金を確認するために、それぞれの請求書を整理しておきます。

雇用保険・社会保険通知書等

労働者派遣事業報告書では、各人材派遣会社で抱える派遣労働者の雇用保険や社会保険への加入状況の報告が必要です。また、雇用の見込み期間や、有期契約と無期契約などに分けて記入するため、個別の加入状況を把握できるようにしておきましょう。

労働者派遣事業収支決算書のまとめ

このように、労働者派遣事業収支決算書の作成や提出は、人材派遣会社の適切な運営に欠かせない重要書類の1つです。

労働者派遣事業収支決算書の作成にあたっては、派遣元事業主の事業年度経過後3箇月以内とされているため、事業年度の終了後、速やかに作成しましょう。

人材派遣会社では、労働者派遣事業収支決算書にもさまざまな書類の作成や提出、保管といった重要な業務があります。これらすべての書類作成においては、常に進捗状況を見える化し、社員同士で確認できるようにしておくことが大切です。

まずはお気軽に資料請求!

まずはお気軽に資料請求!

マッチングッドは、人材派遣会社の
工数削減・生産性向上を叶える
クラウド業務管理システムです

CTR IMG