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労働者派遣事業報告書の作成と注意点を解説!違反者には許可の取消しも?

労働者派遣事業報告書は、人材派遣業に携わるすべての事業者に提出が義務付けられている書類です。

人材派遣会社には、労働者派遣法以外にもさまざま法令が適用されておりますが、事業者が何をどのように記入し、提出しなければならないのか、未提出による罰則規定などについて確認したいという人も多いでしょう。

そこで今回は、この労働者派遣事業報告書について、詳しく解説していきます。

人材派遣業を営む方、もしくは従事されている方は、ぜひ参考にしてください。

労働者派遣事業報告書とは

労働者派遣事業報告書は、人材派遣を行う企業が管轄の労働局に対し、派遣労働者の待遇や労働環境を守り、法令通りに正しく運営しているかを報告するための書類です。

この報告書は、人材派遣会社が派遣事業を行っている限り、労働者の派遣実績が無い年度においても提出しなければならない重要書類となっています。

以前、労働者派遣事業報告書は、年度報告書と状況報告書の2つに分けられており、それぞれ年に1回ずつ提出されていました。しかし現在では、労働者派遣法の改正により労働者派遣事業報告書として1本化され、年に1回、6月30日迄の提出となっています。

労働者派遣事業報告書の内容は、事業の業績のほか、雇用する派遣スタッフの契約や雇用の状況、安全・衛生面教育、キャリアアップに資する教育訓練などです。そしてこれらを、厚生労働大臣宛てに詳細に報告します。

労働者派遣事業報告書の提出は労働者派遣法により義務化されています。そのため、虚偽報告や未提出、または提出期限を過ぎた場合に対し、厳しい罰則規定が設けられているので注意が必要です。

労働者派遣事業報告書の目的

派遣事業報告書の提出目的は、派遣労働者への待遇を良くすることにあります。

派遣労働者はその制度上、企業の労働者不足の穴埋めとして雇用されることが多く、安定した仕事とは言えない側面があります。そのため、派遣先の企業や現場の都合によって契約が打ち切られるなど、弱い立場に置かれているのが現実です。

そこで、派遣労働者の権利を守るため、派遣事業の業績や派遣労働者の勤務状況や待遇改善状況といった事業運営について毎年1回の労働者派遣事業報告書の提出を義務付けています。

記載前準備資料

労働者派遣事業報告書を作成するにあたり、まずは以下の書類が必要となります。

労働者派遣事業収支決算書

労働者派遣事業報告書に、派遣事業の売上報告をする必要があるため、直近の決算報告書を用意しましょう。

労働者派遣事業個別契約書

各企業で雇用する派遣労働者の人数、有期雇用者と無期雇用者それぞれの人数、雇用期間、派遣先で従事する職種などを詳細に記入、報告するために、労働者派遣事業個別契約書が必要となります。

雇入れ時又は配置転換時の安全衛生教育実施記録

労働者派遣事業報告書では、安全衛生教育の実施記録についての報告が必要となります。

いつ、誰に、どのような内容で、何時間の安全衛生教育を実施したかを記録し、まとめておく必要があります。

派遣元管理台帳

安全衛生教育と同様、キャリアアップに関する教育や、雇用の安定に向けた措置についても詳細を報告しなければなりません。

そこで、教育指導の実施者や責任者、そして誰にどのような内容の教育を実施したかなどを記録しておきます。

その他の教育訓練実施記録

派遣労働者に対し、上記のような安全衛生やキャリアアップ教育以外の指導・教育を行っている事業者は、その内容を労働者派遣事業報告書に記載できるように記録しておきます。

総勘定元帳(派遣先事業主との取引額確認の為)

労働者派遣事業報告書には、各事業者の主な派遣先を記入する項目があります。そこには、取引額上位5社の社名と住所等を明記しなければならないため、総勘定元帳の準備が必要となります。

派遣料金請求書

労働者派遣事業報告書では、派遣料金を業種ごとに記入します。そこで、各業種ごとの派遣料金を確認するために、それぞれの請求書を整理しておきます。

雇用保険・社会保険通知書等

労働者派遣事業報告書では、各人材派遣会社で抱える派遣労働者の雇用保険や社会保険への加入状況の報告が必要です。また、雇用の見込み期間や、有期契約と無期契約などに分けて記入するため、個別の加入状況を把握できるようにしておきましょう。

労働者派遣事業報告書の記載内容

それではここで、労働者派遣事業報告書の具体的な記載内容を紹介します。

労働者派遣事業報告書は、第1面~第14面からなる書類となっており、第1面から第9面までが記載書類です。第10面~第14面にかけては記載要領のため、記入の必要はありません。

尚、労働者派遣事業報告書のフォーマットは、厚生労働省からフォームのダウンロードが可能です。

第1面

第1面では、企業や事業所の情報、派遣事業の売上情報などの14項目を記載します。

第2面

第2面では、派遣労働者の人数や安全衛生教育の実施状況。また、その他の教育訓練の実施状況、雇用安定措置等の実施状況を記載します。

第3面~第4面

第3面~第4面では、派遣料金と派遣労働者の賃金について記載します。

業務全体や、有期・無期・業務ごとの平均額を記載しましょう。労使協定方式を採用している派遣会社はその欄にも記載します。

尚、2021年度からは医師・薬剤師・看護師・准看護師・診療放射線技師・臨床検査技師・その他の医療技術者についての業種区分が追加されています。

 第5面

第5面では、日雇派遣労働者の業務別派遣料金賃金を記載します。

なお、日雇いでの派遣を行っていない場合は「記載なし」として斜線を引きます。

日雇派遣労働者においても、2021年度から看護業務の業種区分が追加されています。

第6面

第6面は、キャリアアップ措置の実施についての記載です。

キャリアコンサルタントの人数、キャリアコンサルティングの実施回数、キャリアアップに資する教育訓練の内容についての詳細な報告が必要となります。

この資料は、教育訓練の内容が派遣社員のキャリアアップに役立つという根拠を説明するものとなります。

フルタイム・短時間勤務ごとに、1年目~4年目以降の教育訓練の実施時間と実施人数、入職時、職能別、職種転換、階層別の教育訓練内容などの実施状況を集計し、それぞれ記載していきます。

尚、キャリアアップ教育訓練は有給無償の教育となります。1人1時間あたり平均での支払った賃金額も記載しましょう。

また、キャリアアップ教育訓練については、詳細な教育訓練内容が分かる別の資料が求められるため、教育訓練カリキュラムと教育訓練内容などを別紙として添付し、提出します。

その他の教育訓練を実施している場合も、その詳細をここに記載してください。

 第7面~第8面

第7面では、6月1日現在の派遣労働者の実人数を記載します。

2020年度より、全派遣労働者のうち、労使協定対象の派遣労働者数を記載する項目が追加されました。尚、第3面と同様に、2021年度からは医師・薬剤師・看護師・准看護師・診療放射線技師・臨床検査技師・その他の医療技術者についての業種区分が追加されています。

第9面

第9面では、日雇派遣労働者の実人数を記載します。また、過去1年以内に労働者派遣されたことのある登録者(雇用されている者を含む)の数も記載が必要です。

尚、第5面と同様に、2021年度から看護業務の業種区分が追加されています。

第10面~第14面

第10面~第14面については、第1面~第9面についての記載要領が掲載されているため、記入の必要はありません。

労働者派遣事業報告書の提出

以下では、労働者派遣事業報告書の提出についての注意事項などを解説します。

労働者派遣事業報告書の提出要否

労働者派遣事業報告書の提出については、人材派遣会社が業務を実施している以上は提出義務があり、派遣実績がないケースでも必要です。

提出部数

労働者派遣事業報告書は、各事業所ごとに正本1部と写し2部の提出が必要です。

提出方法

提出の方法には2種類があり、郵送か所管の労働局へ提出します。現在は、新型コロナウイルス感染防止のため、郵送での提出を推奨しています。

提出期限

労働者派遣事業報告書の提出期限は、毎年6月30日となっています。

本年度の場合も2022年(令和4年)の6月30日です。忘れないよう注意しておきましょう。

また、労働者派遣事業報告書の他に派遣会社が提出する資料は下記の通りです。

労働者派遣事業収支報告書は、事業年度末(決算月)から3カ月以内。同じく関係派遣先割合報告書も、事業年度末(決算月)から3カ月以内です。その他にも労使協定方式を選択している会社は、添付して提出しなければなりません。

労働者派遣事業報告書についての罰則規定

労働者派遣事業報告書の作成と提出は、派遣労働者の待遇を改善するための施策であり、人材派遣会社の義務となっています。

そこで、労働者派遣事業報告書を期限までに提出しない場合や虚偽の報告をした場合については、30万円以下の罰金に処せられ、併せて人材派遣許可の取り消し対象となることがあります。

例えば、社会保険の未加入者を偽り全員が加入しているように報告書したり、キャリアアップ教育訓練を実施していないにもかかわらず、実施しているように記載するといったケースは、とくに悪質な行為として摘発されるでしょう。

仮にこのような事態があった場合には、まずは正確な状況を報告し、その後の改善策と共に提示することが大切です。

労働者派遣事業報告書のまとめ

このように、労働者派遣事業報告書の作成や提出は、人材派遣会社の適切な運営に欠かせない重要書類です。

労働者派遣事業報告書の作成にあたっては、提出期限である6月になってから慌てて準備することのないように計画的に取り組まなければなりません。なぜなら、日頃の営業活動と並行して労働者派遣事業報告書を作成することで、大変な業務の負担を強いられるからです。

人材派遣会社では、労働者派遣事業報告書以外にもさまざまな書類の作成や提出、保管といった重要な業務があります。これらすべての書類作成においては、常に進捗状況を見える化し、社員同士で確認できるようにしておくことが大切です。

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