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特定技能と技能実習の違いは?人材派遣できる業種やメリット・デメリットを解説!

特定技能とは、外国人労働者に発行される比較的新しい在留資格(ビザ)で、2019年4月に新設されました。

特定技能の目的は、一定水準を満たした技能や知識を持つ外国人労働者を受け入れることで、日本国内で人手不足が深刻化している特定の産業における労働者不足を解消することです。

これに対し技能実習制度は、開発途上国の人材に、日本の企業で母国では習得困難な技能を習得してもらうための制度です。帰国後に習得した技能を活かし母国の経済発展に活かしてもらうことを目的としています。

特定技能と技能実習には、目的以外にも6つの大きな違いがあり、メリットやデメリットも異なります。そこで今回は、この特定技能と技能実習の違いについて徹底解説します。

なお、2022年5月現在、人材派遣で対応できる特定技能は「農業」と「漁業」の2業種に限られています。しかし今後の法改正により、特定技能の派遣対象が拡大される可能性は否定できません。また、特定技能外国人労働者の増加を見込み、人材派遣事業から人材紹介事業へ業務を拡大する企業も目立っています。

そこで、これから特定技能ビザを持つ外国人労働者の受入れを活発化したいと考えている人材派遣会社の運営に携わる方は、ぜひ本記事を参考にしていただければ幸いです。

特定技能とは?

特定技能とは、日本国内で人材不足が顕著となっている14種の産業分野において、外国人労働者を積極的に確保するためにできた在留資格です。

これまで日本国内で外国人が就労する際は、技能実習生や外国人留学生が実質的な労働力となっていました。しかし技能実習生や留学生の本来の目的は、日本で学び習得した知識や経験を本国に持ち帰り活躍することです。

そこで、日本国内の特定産業の深刻な人手不足を解消するために新しく制定されたのが特定技能です。

特定技能の制度は、2018年12月8日に成立し、2019年4月1日より施行されています。

特定技能では業種によって従事できる職種が決まっており、同じ施設内であっても違う業務を兼務することができません。

一例を挙げるとホテルの「外食業」で働く特定技能外国人労働者が、手が空いたからと言って「宿泊業」のフロントやその他の業務をしてはいけないというルールがあります。

また特定技能には比較的単純労働が多く、在留期間の上限が通算で5年と定められているのも特徴です。ただし一部の業種に関しては、在留資格の更新制限のない永住権取得に至るものがあります。

特定技能制度ができた背景

特定技能で規定される14の職種は、単純労働という理由から、原則として外国人労働者の就労が禁止されています。

しかし近年は少子高齢化に伴う労働者不足が深刻化し、今後の労働人口の増加が見込めないと判断されたため、外国人労働者の受け入れが解禁されました。

そして2022年以降、特定技能2号制度の対象分野が拡大され、外国人労働者の就労期間に制限がなくなる業種が増える予定となっています。

特定技能1号・2号とは?

特定技能は、在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分けられています。2022年5月現在、日本国内に在留するほとんどの外国人労働者が特定技能1号であるため、一般的に特定技能が指す種別は特定技能1号の場合がほとんどです。

特定技能1号

特定技能1号とは、特定の産業分野において「相当程度の知識と経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」となっており、ある程度のコミュニケーション能力と知識があれば取得できる内容となっています。

特定技能2号

特定技能2号については、特定産業分野において「熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、コミュニケーション能力や知識はもちろん、熟練した技能が求められるのが特徴です。

特定技能2号は基本的に、特定技能1号の修了者が望んだ場合、次のステップとして用意されている在留資格です。

しかし、2021年段階で特定技能2号に移行できる分野は、「建設業」と「造船・舶用工業」の2分野だけとなっています。

2022年度内に特定技能2号の対象分野が追加される見通し

なお2021年11月中旬頃、法務大臣により特定技能2号について、対象分野の追加を検討する考えが示され、日経新聞をはじめとする各種メディアで一斉に報じられました。

具体的には、2022年度に飲食料品製造、農業、産業機械製造、素形材産業、外食業、電気・電子情報関連産業、ビルクリーニング、漁業、自動車整備、宿泊、航空の11分野を特定技能2号の対象分野として追加する方針です。

すでに特定技能2号対象分野である建設業と造船・舶用工業に加え、別の長期労働制度がある介護を含め、2022年度内には実質的に特定技能14分野のすべてが、就労期間が無期限となる環境が整う見通しとなっています。(※具体的な発表についてはされていません)

特定技能と技能実習6つの違い

特定技能と技能実習は、それぞれに1号と2号の区分があるため混同されがちです。

しかし特定技能と技能実習には、目的や活動が認められている範囲が大きく異なります。

以下では、特定技能と技能実習の6つの違いを詳しく解説します。

制度の目的が違う

「特定技能」は日本の労働力不足解消のために、広く海外からの労働者を雇用するために導入されたのに対し、「技能実習」は日本の技術を発展途上にある国々に広めるための国際貢献が目的です。

就業できる業種・職種が違う

「特定技能」で就業できるのは1号が14分野で2号が2分野のみとなっています。しかし「技能実習」では、対象となる職種や業種が特定技能よりも多いのが特徴です。

受け入れ人数制限の違い

「技能実習」の目的は、あくまで技能の移転であるため、適切な指導ができるように、受け入れに人数制限があります。

一方で「特定技能」では、目的が労働力の補填であるため、原則として受け入れる人数に制限がありません。ただ、建設業などの一部の業種によっては制限が設けられているため、該当する業種での受け入れには注意が必要です。

転職について

「特定技能」は同一職種であれば転職可能です。一方「技能実習」の目的は実習であるため、転職はできません。

家族滞在可否の違い

「特定技能」の1号では、在留資格をもつ外国人の家族が日本に在留できません。しかし、2号を保有する者に関しては、家族の在留が認められます。

一方「技能実習」では、家族の在留は認められません。

関わる組織・団体の違い

特定技能外国人の支援業務を委託できる団体は「登録支援機関」です。一方で、技能実習生を受け入れる企業を監理する団体は「監理団体」です。

次の章で「登録支援機関」と「監理団体」の違いを解説します。

「登録支援機関」と「監理団体」の違い

「特定技能」と「技能実習」では、それぞれの制度に違いがあることを解説しました。

ここでは、両制度の管理団体の違いを解説します。

登録支援機関とは

特定技能外国人を雇用する企業を、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)では「特定技能所属機関(受入機関)」と呼びます。

特定技能所属機関は、各業種ごとに設けられている協議会に加盟することが義務付けられており、その他にも、法令の遵守や支援できる能力、体制があるかなど、特定技能所属機関となるための要件や基準が設けられています。

このように、特定技能所属機関においては、特定技能外国人に対して住居契約の際に連帯保証人となるといった複数の支援を実施することが義務付けられています。

ただし特定技能所属機関は、これらの支援業務を「登録支援機関」に外部委託できます。そこでこれから特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能外国人の支援を自社で行うか、登録支援機関に外部委託するかを自由に選択可能です。

登録支援機関は、特定技能外国人の支援計画の作成から、技能所属機関と特定技能外国人の活動を総合的に支援する機関です。この登録支援機関になるためには、法務省の外局である出入国在留管理庁長官に登録しなければなりません。登録にあたっては「2年以内に中長期在留者の受入れ実績があり、報酬を得る目的、業として外国人に関する相談業務に従事した経験があること」といった実績面での基準も含まれます。

監理団体とは

技能実習生の受け入れには「企業単独型」と「団体監理型」の2種類があります。

企業単独型とは、日本の企業が海外の現地法人や支社、取引企業などの人材を受け入れて行う技能実習です。一方、団体監理型とは、協同組合や商工会などの営利を目的としない団体が技能実習生を受け入れるものです。

このように、監理団体とは、技能実習生を受け入れて監理までを行う組織のことを言います。

技能実習から特定技能への移行

外国人が特定技能の在留資格を取得する方法には「特定技能評価試験を受けて合格する方法」と「技能実習2号を修了する方法」 があります。

2022年5月現在、特定技能評価試験は、新型コロナウィルスの影響もあり国内外で実施されている業種と延期、もしくは中止されている業種があります。

詳しくは、ディスパ!の「特定技能試験の「日本語」と「技能」各試験内容や申込み方法を徹底解説!」をご参照ください。

そのため、特定技能の資格を取得する外国人の約半数が、技能実習から移行しているといわれています。

ただし技能実習の対象となる業種や作業内容と、特定技能の対象となる業種や作業内容が一致していないため、技能実習から特定技能へ移行できない業種があります。

そのため、技能実習から特定技能への移行を前提とした外国人を受け入れる際は、この点に注意しなければなりません。

技能実習から特定技術へ移行するメリットとデメリット

ここでは、技能実習生から特定技能への移行するメリットとデメリットを解説します。

メリット

特定技能外国人は即戦力となる労働者です。そのため、人手不足を解決する手段となります。また、ある程度の日本語や技能を有する技能実習生を特定技能へ移行して受け入れることで、採用コストを抑えることができるでしょう。

デメリット

特定技能外国人は採用コストが安い反面、特定技能の給与水準が「日本人と同等以上」と規定されることから、技能実習生より賃金が高くなります。しかも登録支援機関などの生活支援関連の費用も必要となるため、日本人を雇用するケースと比べても、人件費の負担が大きくなるのがデメリットです。

特定技能と技能実習の違いのまとめ

このように、特定技能は日本国内の人材不足を解消するための制度で、技能実習は日本の技術を発展途上国に伝えるための制度です。どちらも在留資格ですが、目的が大きく異なります。

そのため外国人の人材を受け入れる側が、それぞれのルールをしっかりと理解し、外国人労働者を不法就労や違法な求人に斡旋しないよう注意することが必要です。

これから特定技能外国人の受入れを活発化したいと考えている人材派遣会社の方は、ぜひ本記事を参考にしていただければ幸いです。

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