人材派遣事業の運営には様々な法律に則った書類の作成が求められます。
労働者派遣契約書は、その中でも派遣先企業との料金や秘密保持に関する情報が記載されているため、慎重に作成しなければなりません。
そこで、この記事では労働者派遣契約書の中でも最初に作成する「労働者派遣基本契約書」について紹介します。
労働者派遣基本契約書に記載すべき内容から注意点までを解説しておりますので、派遣事業を運営されている方はぜひ参考にご覧ください。
労働者派遣基本契約書とは
労働者派遣基本契約書とは、派遣会社と派遣先企業の間で結ぶ契約書のことです。この契約書では、派遣契約に関するほぼ全ての情報が網羅されています。
特に派遣料金や派遣期間、双方の秘密保持情報など、派遣会社と派遣先企業との取引上で必要な情報が網羅されているため、労働者派遣基本契約書を作成する際は、派遣先企業と派遣会社の双方の意思を明確に記す必要があります。
労働者派遣基本契約書の作成の流れは以下です。
労働者派遣基本契約書に明確な作成方法はありません。派遣先企業と相談しながら、双方が納得のいく形で作っていきましょう。
労働者派遣基本契約書の流れ
労働者派遣基本契約書を締結する流れは以下の5つです。
①労働者派遣基本契約書の内容の合意
②労働者派遣基本契約を締結する
③抵触日を通知する
④個別契約を締結する
⑤派遣先管理台帳に保存
労働者派遣基本契約書を派遣先企業と交わすためには、まず双方で契約内容を確認します。
派遣料金や支払い時期、派遣スタッフ管理方法などの契約内容を明確に記しましょう。
契約内容に合意した後、基本契約を結び、派遣スタッフの抵触日を通知します。
その後労働者派遣個別契約を締結した後、派遣先管理台帳に人材情報を保存し、そこから人材派遣が開始されます。
労働者派遣基本契約書の作り方は?
労働者派遣基本契約書は、原則自由に記載することができますが、派遣事業を運営する上で抵触日や労働者派遣法などで定められた情報は記載しなければなりません。
フォーマットや記載する情報は自由でも、最低限記載する情報は決まっているため、労働者派遣基本契約書を作成する際は記載する情報を事前に確認しておきましょう。
このように労働者派遣基本契約書は派遣会社が自由に作成し、派遣先企業と契約を交わしますが、一体どのような情報を記載すれば良いのでしょうか。
以下では、労働者派遣基本契約書を作成する上で必要な記載事項について解説します。
労働者派遣基本契約書の記載事項
労働派遣基本契約書は原則自由に作成することができ、記載する情報も作成者によって自由に決められます。しかし、派遣事業は労働者派遣法が関係してくるため、記載事項は慎重に決めなければなりません。
以下では、労働派遣基本契約書に必要な記載事項を6つ紹介します。
派遣会社を運営されている方はぜひ参考にしてみてください。
①派遣料金
労働派遣基本契約書には、派遣料金の記載が必要です。
派遣料金は派遣先企業が支払う金額や支払い金額の算出方法、支払い期日、支払い方法を記載しましょう。
また、上記のような派遣スタッフひとりの派遣に対しての料金はもちろん、派遣先企業の都合により休業が生じた場合の損害金や契約期間満了前に契約を破棄する場合の違約金なども、派遣料金の欄に記載しておくと良いでしょう。
②相互の義務
労働派遣基本契約書では、派遣会社と派遣先企業がお互いに履行しなければならない義務を記載しなければなりません。
労働派遣基本契約書では、主に「法令遵守」「守秘義務」「信義則」を記載し、お互いに守るべき約束事を記載します。
労働者派遣法に則った派遣スタッフの労働環境の是正に努めることや、会社間で守るべき秘匿事項、そして、円滑に取引を進める上で、お互いの権利を守り穏やかに業務を進めるための信義則の詳細を記載しましょう。
ここに記載された内容に違反した場合は、民事での訴訟はもちろん、労働者派遣法などの違反には公的機関からの行政指導が入ることも考えられます。
慎重に話し合い、記載すべき事項を詰めていきましょう。
③派遣労働者の行為により損害を被ったときの損害賠償
この項では、派遣会社から派遣先企業への損害賠償に関する内容を記載します。
派遣会社は、自社が派遣した派遣スタッフが派遣先企業にて過失による損害を発生した場合でも損害賠償責任を負わない取り決めが一般的です。
しかし、派遣した派遣スタッフが明らかに故意に損害を与えた場合は、派遣会社が派遣先企業に対して損害賠償責任を負わなければならない可能性もあります。
実際にあったケースでは、派遣スタッフが派遣先企業の経理申請を偽証し横領していた場合に、該当の問題を起こした派遣スタッフはもちろん、派遣元である派遣会社も責任を負うこととなりました。
このように、一般的に損害賠償責任はスタッフの「過失」か「故意」かにより賠償責任を追うか否かとその程度が問われるためため、どういった場合に損害賠償責任を負い、どの際にどう対応するのかをこの項で詳しく定めておきましょう。
④禁止事項
禁止事項では、反社会勢力の排除について記載します。
派遣会社と派遣先企業の両方が反社会勢力と関わりがないことをここで証明し、過去と未来を問わず反社会勢力と関わりがあった場合の契約解除や、違反した場合の責任をここで詳細に取り決めます。
⑤知的所有権の帰属
派遣先企業によりますが、派遣スタッフが派遣先企業にて制作した制作物に知的所有権が付属している場合、この知的所有権はどちらに帰属するのかをここに示します。
⑥契約解除事項
契約解除事項についても記載しておきましょう。
契約解除事項とは、基本契約中に契約解除に至る条件のことです。
たとえば、派遣会社や派遣先企業を問わず粉飾決算をしていた場合や、どちらかが倒産してしまった場合など、取引を進める上で契約を続行できないと判断できる場合の条件をここで記載しておきます。
基本契約はもちろんですが、基本契約の後で定める個別契約自体も解除する旨を記載しておくことでもしもの時に備えることができます。
契約解除にならないために、双方で努力できる点や譲歩できる条件などをすり合わせ、円滑に取引できるように努めましょう。
⑦派遣スタッフからの苦情処理
苦情処理についても、労働者派遣基本契約書に記載しておくべき項目です。
この苦情処理とは、派遣スタッフからの労働環境などの苦情を指しており、派遣スタッフから苦情があった際に派遣会社と派遣先企業のどちらが対応するかのことです。
特に労働環境についての苦情は、労働者派遣法などの法律に大きく関わるものであるため、どちらがどのような責任を負うのかを明記しておくと、トラブルを事前に回避できるものとなるでしょう。
⑧協議事項
労働者派遣基本契約書の中では、協議事項も記載すべき項目のひとつです。
協議事項とは、派遣会社と派遣先企業間で起こり得る問題について、その問題が起こった際にどう対応するかを示したものです。
具体的な事例として、出張や事業部間の異動がない前提で派遣した派遣スタッフに、派遣先企業から出張や異動を依頼された際に断るか協議するかを事前に定めておきます。
協議事項は派遣スタッフの働き方にも大きく関わるため、事前にトラブルになり得る事例を協議事項として定めておくことで、派遣スタッフの労働環境を守ることに繋がります。
その他、よく起こりうるトラブルを防ぐために派遣契約中には派遣先から派遣社員へ直接採用を禁止する旨なども記載しておいたほうがよいでしょう。(参考記事:https://www.dispa.matchingood.co.jp/trend/945)
労働者派遣基本契約書はどう管理すべき?
最後に労働者派遣基本契約書の管理方法について解説します。
労働者派遣基本契約書には、明確な管理方法は定められていません。以下で、管理方法や原則を紹介しますので、参考にしながら管理方法を吟味してみましょう。
印紙の要否
労働者派遣基本契約書に収入印紙は必要ありません。
一般的な契約などに付随する「印紙税法」では、「請負に関する契約書」(2号文書)は課税文書であると規定しています。しかし、派遣に関する契約書はこの「請負に関する契約書」には該当しません。
印紙税法上、派遣に関する契約書は労働力を提供し、派遣スタッフの労働環境を「委任する契約書」になるため、不課税となります。
保管の義務
契約が締結された時点で効力を持ちますが、保管自体も義務はなく、派遣事業を運営する会社と派遣先によって変わります。労働者派遣基本契約書には、労働者方などで定めはなく、派遣会社と派遣先企業のそれぞれ管理方法で保管します。
一般的な保管方法として、派遣会社と派遣先企業の契約を代表する人物が1通ずつ保管するのが良いでしょう。労働者派遣基本契約書は、上記で紹介したように派遣スタッフを派遣する際の取り決めや損害賠償など、派遣スタッフを派遣する上で必要な情報が記されています。
つまり、管理は義務化されていませんが紛失してしまうのはご法度と言えるでしょう。
まとめ|労働者派遣基本契約書はテンプレートの利用がおすすめ!
以上のように、派遣先、派遣元、そして何よりも派遣スタッフが安心して長期にわたって働ける環境を提供するためにも、労働者派遣基本契約書の締結は所定の内容を漏れることなく取り交わすことが重要です。
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