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ビジネスの「見える化」とは?「可視化」との違いや具体的な取り組み方を解説!

働き方改革やDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む今、企業の新しい考え方として「見える化」という概念が浸透し始めています。

この「見える化」という言葉を聞くと、多くの方が混同しがちなのが「可視化」です。しかし、実はこの2つには根本的な違いがあります。

仕事における「可視化」とは、これまで見えにくかった財務に関する数値や、従業員それぞれの実績などをデータ化して「見えるようにする」ことを指します。

人材派遣企業における「見える化」の目的は、自社の事業内にある課題や問題点の抽出と解決策を図ること。この点において、業績データを開示する「可視化」とは大きく行動が違うのです。

ここでは、人材派遣企業における「見える化」の意味や目的を解説します。そして「見える化」が企業にもたらすメリットや取り組み方も紹介していきます。

この「見える化」を進めることで、あなたの会社の問題の解決が可能となり、結果として従業員のモチベーションと業績の向上に繋がるでしょう。

これから人材派遣事業を運営される方は、この記事の内容をぜひ参考にしてください。

企業が取り組む「見える化」の意味とは

ここで言う「見える化」の意味は、事業内にある課題や問題点を抽出して「解決策を図る」ことを指します。

仕事を「見える化」すると聞くと、これまでに見えにくかった情報を、数値や言葉で具体的に表わして「見えるようにする」と思われがちです。しかし、これは以前から行われている「可視化」に過ぎません。

「見える化」とは、可視化されたデータや情報を基にして「問題点を抽出」し「課題の解決に利用する」ことです。

具体的な例を紹介すると、会社の壁に貼られた社員の営業成績のグラフ。これは、売上データを「可視化」したものです。

しかし「見える化」では、この可視化されたデータを基にして、更に一歩踏み込みます。

まずは、売上げ上位の社員がどのような行動を取っているのか、また売上げが低迷している社員とどこが違うのかをデータにして「可視化」します。そして、そこにある問題点や課題を「見える化」するのです。

これは、派遣従業員の行動を「見える化」する際にも役立ちます。派遣先での評価をただ「可視化」するのではなく、そこにある問題や課題を抽出し、他の派遣従業員や過去のデータと照らし合わせて課題解決していきます。

このように、知りたい情報を取り出してデータ化することを「可視化」と言い、そのデータを基にして問題解決を目指すことが「見える化」なのです。

見える化に取り組む目的

人材派遣企業が「見える化」に取り組む目的は、「企業内にあるシステムや人材の問題と課題の解決」にあります。

業務上の問題点や課題を発見し、その解決策を導き出して理想の結果に近づける行動を起こすことが「見える化」だからです。

そもそも「見える化」という言葉が使われるようになったきっかけは、1998年にトヨタ自動車の岡本渉氏が発表した「生産保全活動の実態の見える化」という論文が最初と言われています。トヨタの自動車工場で生産ラインに異常が発生したときに、そのトラブルの原因別に違う色のランプが点灯して生産ラインが止まる。この仕組みを「見える化」と呼んでいました。

この「見える化」は、かんばん方式(ジャストインタイム方式)という画期的な経営管理方式を発表していたトヨタの経営手法として、ビジネス界に瞬く間に広がっていったのです。

しかし、トヨタの「見える化」は「皆がトラブルに気づく」だけなので、むしろ「可視化」に近い表現になります。そのようなこともあり「見える化」という言葉は、未だに曖昧なニュアンスで使用されているのが現実です。

企業が見える化に取り組むメリット

それでは次に「見える化」を進めることで、企業にどのようなメリットがもたらされるのかを考えていきましょう。

ここでは「見える化」のメリットを4つに分けて解説します。

課題や問題を見つけて具体的に把握する

人材派遣企業が「見える化」に取り組む際に、まず必要になるのが「可視化」です。

企業にとって最も大切な「利益を出すこと」を例にすると、売上げと経費を可視化する必要があります。

「利益」=「売上げ」-「経費」と言えば当たり前のように思うかもしれません。

しかし、この利益を生み出す構造は、それぞれの企業によって大きく異なるのが現実です。

企業によっては人材のコストを見直す必要があるかもしれません。また、広告コストがかかりすぎている企業もあるでしょう。それ以外にも、その他の設備費などを掛け過ぎている例も多くあります。

最近では、リモートワークが増える中、東京の都心にあるビルやオフィスを売却したり解約することで大きく業績を回復させている企業があります。これなどは企業の課題を「見える化」し、解決した良い例と言えるでしょう。

そのためには、自社の売上げがどのサービスで最大化されているのか、またどの部署のどの部分で最も経費がかかっているのかといったことを、客観的にデータ化して「可視化」します。そして「可視化」したデータを基に節約や削減方法を「見える化」することで、課題や問題を具体的に把握し、最終的な解決に結びつけることができるのです。

合理的な実務方法を具体化し共有する

「見える化」で重要なことは、収益を改善するだけではなく、業務改革も可能なことです。

例えば、優秀な営業部員の行動を可視化することで、合理的な営業方法や販売スキルを具体的にデータとして落とし込み、他の営業部員に共有することができます。

その結果、営業部全体の販売スキルが底上げされ、企業の業績もアップするでしょう。

ただ、気をつけなければいけないのは、優秀な営業データを提供してくれた従業員に対する報酬や待遇も一緒に見直すことです。これを疎かにすると、社内に不公平感が生まれ、逆に社員のモチベーションが下がってしまう可能性があります。

優秀な社員が、自らのスキルを提供することで出世したり給与が上がれば、その他の社員もこれまで以上に工夫や努力を惜しまなくなるでしょう。

このように、仕事の実務の合理化と自動化が当たり前になれば、売上げが増えて経費を減らすための具体的な行動が容易にできるようになるのです。

事業を効率化してミスを減らす

このように企業が「見える化」に取り組むことで、結果として利益が増えるメカニズムがおわかりいただけたと思います。

しかし「見える化」には、企業や従業員に対するメリットがまだまだあります。

次に紹介するメリットは、仕事を「効率化」して「ミス」を減らすことです。

例えば、企業内にはクレームを処理する担当部署が存在します。よく耳にする「お客様相談室」などのことです。人材派遣でも派遣先や派遣従業員からのクレームを受ける部署があるでしょう。このような部署は「クレーム処理」というネガティブなイメージがあるために、会社内でもあまり優秀な社員を配置しなかったり、部署そのものをアウトソーシングする企業もあります。

しかし、このお客様相談室の仕事を見直し、逆にファンづくりに活かした有名なお菓子メーカーがあります。その企業では以前、クレーム処理の一部をアウトソーシングしていました。その結果、外注先の顧客対応があまり良くなかったこともあり、ネットで悪い評判が広まったのです。これは、そのお菓子メーカーが直接犯したミスとは言えません。しかし、クレーム処理をアウトソーシングする選択自体がミスだったのです。

その経験から、クレーム処理の業務を全て内製化し、お客様相談室のチームでクレーム内容を丁寧に分析し、その報告内容を製造から営業にまで広く共有したのです。

その結果、企業内の各部署で横のつながりが生まれ、生産から販売までのマーケティングが効率化できました。そしてお客様相談室を内製化したことで顧客満足度が向上し、企業のファンが増加するという相乗効果に転じたのです。

人材派遣企業の場合、このような内製化は、費用と手間を考えると効率化とは逆行するかもしれません。しかし実際には、クレーム処理を内製化したことで「サービスの改善ポイント」を毎日のように取引先から吸い上げるきっかけができ、これまで費用を掛けて行ってきたアンケート調査などを実施する費用と手間が省けるようになったとの事例も見受けられます。

これまでは単なる「クレーム処理」だった部署を「マーケティング部門のひとつ」としたことで、費用を掛けずに売上げが増加する「増収増益」に繋がった良い例と言えます。

このような「攻めの効率化」ができるのも「見える化」のメリットの1つなのです。

コストの削減に繋がる

これまでに「見える化」の3つのメリットを紹介しました。この3つの全ては、最終的に4つ目のメリットである「コストの削減」に繋がります。

1つめのメリットは「課題や問題を見つけて具体的に把握する」ことでした。ここでは、企業内のあらゆる情報をデータ化することで「ムダ」を洗い出すことができます。

人件費、販促費、賃料やリース代など、企業にかかる様々なコストを「可視化」した上で、課題や問題を「見える化」するのです。

2つめのメリットは「合理的な実務方法を具体化し共有する」ことでした。これは、優秀な社員のスキルをデータ化して共有し、それを「見える化」することで社員のモチベーションと業績をアップさせる最強のメソッドです。これができれば、企業にとって大きな負担となる「社員教育」のコストが大幅に削減できます。

産労総合研究所が実施した教育研修費用の実態調査2020では、2019年度の社員1人あたりにかかった研修費用が平均で35,628円※1となっています。この費用は決して安いとは言えません。しかも、その効果が目に見えないこともあります。

しかし「見える化」することで、自社の販売実績に基づいたデータを共有し、社内で自主的に社員教育が教育や研修をできるようになれば、これほど大きなコスト削減はありません。

              ※1参考:2020年度(第44回)教育研修費用の実態調査より

3つめのメリット「事業を効率化してミスを減らす」では、縦割りに行われていた業務を効率化することで、余計にかかっていたコストを削減できる可能性があるのです。

あなたの会社で、よく考えてみると、大事なポストを外注していることはありませんか?

この機会に、これまでとはちょっと違う視点で事業を見直してみてはいかがでしょうか。

企業が見える化に取り組む方法

このように「見える化」は「可視化」とは違い、単に企業の情報を見やすくすることではありません。

「見える化」では、企業の状況を改善することを目的として、今ある情報をデータ化して分析することが重要です。そのためには、今の社内の状況を常に把握し、そこから課題や問題点を抽出する必要があります。

そして抽出した課題や問題に対する解決策を出し合いながら、理想的な企業の在り方を創造して行くのです。この理想的な企業像には、いくつかの種類があると考えられます。

例えばメジャーな商品やサービスを扱う市場で、できるだけ多くのシェアを確立したい企業であれば、ヒト・モノ・カネの三種の神器を上手く配分しながら事業を拡大しなければなりません。

逆にニッチな市場を狙うベンチャーであれば、少数精鋭のスタッフでサービスを開発し、インターネットを使った効率の良いマーケティングも可能となります。

このように、自らの理想的な企業像を先に見出すことで、そこにある課題や問題を効率良く発見し「見える化」ができるのです。

具体的な課題や問題を見つける方法には、2つの視点があります。

1つは、経営に関する各部署(財務・営業・製造・人事など)ごとに分析し「見える化」する方法です。この方法は、比較的大きな事業を運営している企業、または社員や設備などに費用がかかる企業に必要な視点です。

2つめの方法は、企業を客観的に把握しながら、市場の全体像、商品やサービス、そして会社を客観的に眺める視点です。この方法は、ITベンチャーなどの「無形のサービス」を提供する企業で有効な方法です。特に、市場の全体像を観察しながら時代の流れを読むことが必要なサービス業では、この視点が欠かせません。人材派遣企業では、このタイプがあてはまると考えられます。

このように様々な角度の視点から、企業の「見える化」を実施し、その結果もまた「見える化」する。この繰り返しが最も重要なのです。

まとめ

いかがでしたか?このように「見える化」には様々な方法や視点があります。しかし、その目的はただ1つ。企業の問題を解決することです。

総務省によると、日本の事業者数は個人と法人を合わせると実に580万件に近い数※2となっています。

その事業者それぞれに、大なり小なりの問題点があるでしょう。もちろん、その中には今すぐに改善が必要な企業もあれば、プラスの成長を続けている企業もあります。

しかし、ビジネスにおいて「いつ何が起こるか分からない時代」なのも事実です。だからこそ、経営者は常に自らの事業を「見える化」しておかなければならないのです。

この記事を読んでいただいた人材派遣事業を運営される方は、今すぐに「可視化」したデータを基にして、事業の「見える化」に取り組んでみて下さい。  

             ※2参考:総務省統計局「経済センサス-基礎調査結果2018」

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