近年は、少子高齢化の影響による国内の労働人口の減少が続いており、外国人労働者を受け入れる企業が増加しています。また、市場のグローバル化も、企業が外国人労働者を必要とする要因の1つと言えるでしょう。
2020年以降は、新型コロナウィルスの影響により世界的な経済の停滞が起こりましたが、そのような環境下においても外国人労働者の数が増え続けているのが現状です。
そして、コロナ禍の終焉が近づいているいま、経済活動の活発化とともに、更なる人材不足が懸念されています。
このように、日本国内では今後も外国人労働者の需要は伸び続けると予測されており、外国人労働者を企業へ供給する人材紹介事業者の役割も大きくなることでしょう。
そこで今回は、外国人紹介の重要性と展望や、外国人労働者の採用基準と日本語能力試験の種類や難易度を解説します。
日本国内の人材市場について
厚生労働省が発表した2022年10月末現在の「外国人雇用状況」のまとめ※1によれば、外国人労働者は1,822,725人で前年より95,504人増加し、コロナ禍において外国人の入国が厳しく制限されている状況下においても、過去最高の数字を記録しました。また、外国人を雇用する事業所数も298,790と過去最高を更新しています。
労働人口が不足している日本では、2019年に国内産業の労働人口を補うための施策として「特定技能」という在留資格を新設しました。これは、一定の技能及び日本語能力基準を満たした者が特定技能としての在留を許可される制度です。
従来あった「技能実習」は、日本の高い技能を発展途上国へ移転することを目的とした資格であったために、試験はありませんでした(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力試験要件あり)。一方「特定技能」は、もともと外国人の労働力を目的にした資格であるため、相当の知識及び技能が必要です。また、従事する仕事のレベルも特定技能の方が高いのが特徴です。
※1参考:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)より
外国人紹介事業の重要性と今後の展望
近年、日本の労働人口が減少しており、それに伴い人材不足が深刻化しています。そのため、多くの企業が外国人労働力の誘致を検討しており、外国人紹介事業の重要性が高まっています。外国人紹介事業は、外国人の採用に関するさまざまなサポートを提供し、採用に成功した際には報酬が発生する仕組みです。
外国人紹介事業が増加傾向にある主な理由として、日本の労働人口が減少していることが挙げられます。政府も移民政策の可能性を含め、外国人労働力の誘致を視野に入れています。また、外国人材の受け入れに向けて、特定技能1号制度が導入され、外国人労働者の受け入れが容易になったことも、外国人紹介事業の拡大に繋がっていると言えるでしょう。
外国人紹介事業の今後の展望としては、日本の労働人口減少が続くことから、外国人労働力の需要は高まると予想されます。そのため、外国人紹介事業は今後も拡大することが予想されます。特に、外国人材のスキルアップや日本語教育など、採用後のサポートに力を入れることが求められるでしょう。また、社会保障制度や労働環境など、外国人労働力が安心して働ける環境整備が必要となっています。
外国人労働者を採用するメリット
以下では、外国人労働者を採用するメリットについて解説します。
新しく優秀な人材を確保できる
外国人社員を受け入れるメリットの1つ目は、若くて優秀な外国人社員が入社することです。特にエンジニア採用について日本では苦戦をしていますが、スキルの高い外国人人材を採用することで、人材不足に対応する企業が増えています。外国人が職場に入ることでこれまでになかった新しい発想やアイデアが生まれ、職場が活性化する可能性があります。
また、自分の意見を主張するのが苦手と言われる日本人社会に外国人社員が入ることで、積極的な姿勢が刺激を与え、企業の成長にも役立つことが期待されます。
企業のグローバル化への対応
外国人社員を受け入れるメリットの2つ目は、企業の多様性とグローバル化に役立つことです。なぜなら、外国人労働者を受け入れることで、新しい視点で事業を展開できたり、これまで海外へ進出していなかった企業のグローバル(国際)化にも役立つ可能性があるからです。
これまで、日本企業の多くは国内の需要を満たすだけで十分な利益を上げることができました。しかし、今後は、人口の減少とともに需要と売上が縮小することが予測されており、一刻も早く事業の多様化とグローバル化の両方を促進することが望まれています。
日本語能力と採用基準
外国人の採用を考える企業に人材紹介を行う際には、外国人労働者のコミュニケーション能力が高いかどうかが重要なポイントとなります。そこで必要となるのが「日本語能力」です。
以下では、外国人の日本語能力と採用基準について解説します。
日本語能力試験は必要か
日本企業で働く外国人労働者は、少なくとも日本語をある程度理解できる必要があります。それは、外国人労働者を受け入れ、ともに働く日本人が「公用語である英語が苦手」なことも影響していると言えるでしょう。
ただ、日本語は曖昧な表現も多く、外国人労働者とコミュニケーションが取りにくい言語の1つです。そこで、外国人労働者が日本で働く際に必要となる日本語能力を測る目安として、日本語能力試験(JLTP)があります。
日本語能力試験は、N1からN5までの5つのレベルが設定されており、N1が最も難易度が高く、平均合格率は30%程度となっています。また、日本語能力試験は国内で1年間に2回実施されていますが、世界中のさまざまな地域で実施されているため、これから日本での就業を目指す外国人も受験可能です。
日本語能力試験は目安
日本語能力試験のレベルは、あくまでも日本で働くための能力を測る目安と考えましょう。
なぜなら、日本語能力試験でもっともレベルの高い「N1」を取得していたとしても、日本語でうまくコミュニケーションを取ることができない外国人労働者もいるからです。
一方、日本語能力試験を受けていないにもかかわらず、ネイティブなレベルの日本語を話せる外国人労働者もいます。そのため、日本語能力試験の取得レベルにこだわらず、外国人労働者の本質的な能力を重視する企業も多くあります。
そこで外国人労働者を紹介する人材紹介事業者は、クライアントのニーズに合わせた人材を選び、適切にマッチングすることが重要です。
語学力を計測する検定・試験について
外国人労働者の日本語能力を測る検定試験には、いくつかの種類があります。その中でも、最も一般的なのが上記で紹介した「日本語能力検定(JLPT)」です。この日本語能力検定以外にもさまざまな種類の検定試験がありますが、受験の対象者が「外国人労働者」ではなく「日本人」を対象とするものもあるため注意が必要です。
日本語検定の種類
以下は、外国人労働者の日本語能力を測る主な検定となります。これ以外にも検定の種類はありますが、コロナ禍が終息していないために試験の実施を中止している検定もあるため、注意が必要です。
- 日本語能力検定(JLPT)
- 実用日本語検定(J.TEST)
- ビジネス日本語能力テスト(BJT)
- 実用日本語運用能力試験(TopJ)
- 日本語NAT-TEST
- 生活・職能日本語検定(J-CERT)
- 標準ビジネス日本語テスト(STBJ)
- 実践日本語コミュニケーション検定(PJC)
- 外国人日本語能力検定(JLCT)
上記のように、日本語検定はさまざまありますが、日本語能力検定(JLPT)のレベルを基準とするのが一般的となっています。
日本語能力試験(JLPT)について
日本語能力試験(JLPT)とは、外国人労働者の日本語レベルを測るために実施されている検定試験の1つです。日本語能力試験は、N1からN5までの5つのレベルが設定されており、N1を最高難度のレベルとして、N5までの5段階で分類されています。
2019年の日本語能力試験の受験者は100万人以上にのぼり、2020年以降はコロナ禍で若干の減少が見られたものの徐々に回復し、今後も増加傾向にあるようです。
また前述した通り、日本語能力試験は世界中で実施されているため、日本で働きたいと願う外国人労働者の日本語能力を証明する際に活用されています。
日本語能力試験(JPLT)のレベル
以下では、日本語能力試験のレベルの目安について解説します。日本語能力試験(JPLT)のレベルは、N1が最も高く、順に難易度が下がります。
N1レベルは、日本語を話せる貴重な人材として企業から採用されやすくなりますが、その難易度はかなり高めです。そのため、まずはN5、N4を受験し、徐々にステップアップしていくのが一般的です。
そこで以下では、N5レベルの難易度から順に解説していきます。
N5
日本語能力試験のN5は、基本的な日本語をある程度理解できるレベルです。
N5レベルの日本語を読む能力は、ひらがなやカタカナに加え、基本的な漢字で書かれた定型的な文章を読むことが可能なレベルとなります。また、聞く能力については、日常生活で交わされる短い会話から必要な情報を聞き取れるレベルに設定されています。
このように、日本語を基本的に理解できるレベルといえますが、会話などのスピードによっては上手く聞き取れないこともあるでしょう。
N4
日本語能力試験のN4は、N5よりも一歩進んで基本的な日本語を理解できる程度のレベルです。
N4レベルの能力があれば、基本的な語彙や漢字で書かれた日常的な内容を、読んで理解できます。また聞く能力についても、日常的な会話であれば内容をほとんど理解可能なレベルといえるでしょう。
N4とN5のレベルの違いは、定型的な文章でなくても読んで理解ができること、また短い会話でなくても内容がほぼ理解できるという点です。
N3
日本語能力試験のN3は、日常的な場面で使われる日本語を、ある程度理解できるレベルにあります。
読む能力については、日常的な話題だけでなく、新聞の見出しなどからおおまかな情報を読み取ることができます。また、少し難易度の高い内容の文章についても、簡単な言い換えの表現を与えることで内容を理解できるでしょう。
聞く能力に関しては、自然な会話スピードでも具体的な内容を理解可能なレベルとなります。
N2
日本語能力試験のN2は、日常的な場面で使われる日本語の理解だけでなく、さらに幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できるレベルとなります。
N2では、新聞や雑誌の記事、評論文などの内容を理解することが可能です。さらに、話の流れや著者の表現意図などについても理解できるため、かなり高いレベルで日本語を読むことが可能といえるでしょう。
聞く能力については、日常会話だけでなく、ニュースなどの内容を聞きながら、登場人物の関係を理解することも可能なレベルです。
N1
日本語能力試験のN1を取得していれば、日常生活はもちろん、ビジネスシーンを含めた幅広い場面で使われる日本語を理解することができるレベルにあるといえるでしょう。
少々複雑な内容の文章が読めるだけではなく、抽象度の高い文章でも、その内容や構成を理解することが可能です。また聞く能力に関しても、自然なスピードの会話の内容も理解できるため、日本人とほとんど同じ感覚で意思を伝えることができるでしょう。
ただ、N1レベルで文章や会話の内容が理解できるからといって、常に円滑なコミュニケーションが取れるとは限りません。特に日本語には曖昧な表現が多く、諸外国の言語や常識とは異なるところも大きいため、ビジネスなどの重要な内容を含むコミュニケーションシーンでは十分な注意が必要です。
資格の有無に縛られないことが必要
上記のように、外国人労働者を企業に紹介する際は、日本語の能力を証明する「日本語能力試験(JPLT)」が有効に働くことは事実です。しかし、日本語が苦手でも仕事の能力やスキルが高い人材も多くいることでしょう。
また、外国人労働者を紹介する際は、就労ビザの取得や期限にも注意する必要があります。それ以外にも、文化の違いや宗教観など、日頃日本人の間では気にすることの少ない気配りが必要です。
まとめ
このように、外国人紹介では、日本語能力試験の取得レベルが採用基準の1つの目安となります。ただ、日本語能力試験は、あくまでも外国人労働者の日本語のスキルを判断する1つの要素でしかありません。そのため、日本語能力試験の取得レベルだけで人材の能力を判断することはおすすめできません。
人材紹介事業者は、クライアント企業へ紹介する外国人労働者の本質的な能力や資質を見抜き、適切なクライアントとマッチングすることが重要です。
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