人材紹介事業には、求人企業と求職者の対応を一人で担当する「一気通貫型」とそれぞれの対応を分担する「分業型」という二つの営業スタイルが存在します。
「一気通貫型」と「分業型」のどちらを採用するかは、各企業の営業戦略によって変わってきますが、特定の業種に特化した人材紹介事業者は「一気通貫型」を、多くの職種をカバーする大手総合型人材紹介事業者は「分業型」を採用するケースが多いのが特徴です。
また、それぞれの営業スタイルで業務の進め方や期待される役割が違っていることも特色です。例えば「分業型」では求人企業担当を「RA(リクルーティングアドバイザー)」、求職者担当を「CA(キャリアアドバイザー)」と呼び、それぞれ専門的に業務を行っていきます。
そこで今回は、「一気通貫型」と「分業型」の業務内容やメリットやデメリットを詳しく解説します。
人材紹介における一気通貫型とは?
一気通貫型の人材紹介サービスは、1人のコンサルタントが求人企業と求職者の両方を担当し、登録からマッチングまでの業務を完遂するスタイルを指します。
以下で、一気通貫型の業務プロセスや、一気貫通で業務を行うコンサルタントに求められる能力やスキルを解説します。
一気通貫型の担当業務
一気通貫型の業務プロセスは、求人企業の開拓業務や求める人材のヒアリング、求人票の作成とともに、求職者との面談を通じたキャリアの棚卸しやキャリアプラン、履歴書、職務履歴書などの作成サポート、企業との面接指導、企業とのマッチングなどを1人で行います。
このようなさまざまな業務を1人で一貫して行うのが「一気通貫型」の特徴です。
一気通貫型に求められる能力、スキル
人材紹介事業者の一気通貫型では、「担当領域についての深い知見」「折衝能力」「提案力」等が求められます。
一気通貫型では、担当領域(業界・職種)を絞って対応するケースが多くなっています。そのため、担当業界に精通することが必須で、担当領域(業界・職種)について継続的に学び続けることが求められます。また、求人企業や求職者それぞれの条件に合ったマッチング機会を創出することだけでなく、一人で担当しているからこそ気づく可能性を見出し、提案型の人材紹介を行うことも期待されています。
一気通貫型に向いている方
一気通貫型の担当は人材紹介事業の業務プロセスを一人で実行するため、業務を幅広く完遂する能力が必要です。加えて、前述したように業界知識を学び続ける姿勢も求められます。
そのため、一気通貫型に向いている人は、以下のような特徴があります。
- 業務範囲を広げることが苦にならない方
- 学習意欲があり、学び続けることが好きな方
- 担当した求職者の面談から入社までを担当したい方
以上のような志向を持つ方は、一気通貫型の働き方に向いていると言えるでしょう。
一気通貫型のメリットとデメリット
一気通貫型のメリット
人材紹介事業者における一気通貫型のメリットとしては、ミスマッチの少ない手厚いサービスが提供可能な点が挙げられます。
1人の担当者が求人企業と求職者の対応を行うことで、細かなニーズやニュアンスを十分に理解することができます。また、初回面談から入社までを一人で担当することで入社決定後の喜びもより一層大きく感じることができます。
一気通貫型のデメリット
人材紹介事業者における一気通貫型のデメリットは、1人の担当者が対応できる案件数に限界があることです。
分業型とは異なり、担当者が求人企業から求職者まで1人で対応する一気通貫型は、どうしても担当できる案件数に限界があります。無理に1人あたりの案件数を増やすとサービスの質が下がり、一気通貫制のメリットがなくなってしまう可能性があります。
人材紹介における分業型とは?
人材紹介における分業型とは、人材紹介を行うプロセスにおいて、企業側の担当者と求職者側の担当者に分かれて業務を行うことです。
企業側を担当する担当者を「RA(リクルーティングアドバイザー)」と呼び、求人企業の開拓営業や企業ニーズのヒアリング、求人票の作成、企業側への人材紹介などを行います。
一方、求職者側のアドバイザーは「CA(キャリアアドバイザー)」と呼ばれ、求職者との面談を通じたキャリアの棚卸しやキャリア形成のアドバイス、履歴書や職務経歴書の作成や企業の選考面接のサポート、企業とのマッチングなどを行います。
分業型では、RA(リクルーティングアドバイザー)とCAが双方の情報を共有し、面接日程や、選考から入社までのサポートを協力しながら行うのが特徴です。
「RA(リクルーティングアドバイザー)」の担当業務
分業型における「RA(リクルーティングアドバイザー)」の業務プロセスは、クライアントとなる求人企業の新規開拓や既存のクライアント企業のフォローや、クライアント企業それぞれの採用に関するヒアリングと問題や課題の抽出、求人情報の整理と求人票への落とし込み、クライアント企業への人材紹介と内定後のフォローなど、求人企業に関わる業務を専任として担当します。
「RA(リクルーティングアドバイザー)」に求められる能力、スキル
RAには、クライアント企業を獲得するための「営業力」と商談やヒアリングを行うための「コミュニケーション能力」や「提案力」が必要となります。また、一気通貫型に比べると担当する業界の範囲が広くなることが多く、幅広い業界知識の習得が求められます。上記に加えて、社内ではCAとの連携が必要であり、自身の担当求人の求職者への紹介を促進するために「プレゼンテーション能力」も活かすことができます。
「CA(キャリアアドバイザー)」の担当業務
分業型におけるCA(キャリアアドバイザー)の業務プロセスでは、求職者に対する面談準備と面談の実施、求人紹介、提出資料の作成サポート、転職活動の進捗確認、企業面接のサポート、内定後のフォローなどを行います。
「CA(キャリアアドバイザー)」に求められる能力、スキル
CAには、求職者との対応に求められる「関係構築力」「コミュニケーション能力」、そして求職者の希望やキャリアプランを聞きだす「ヒアリング能力」と「傾聴力」が必要です。またそれ以外にも、多くの求職者を担当するために、一定の「事務処理能力」があると生産性を高く保つことが期待できます。
分業制に向いている方
分業型では求人企業または求職者への担当を専任して実行していくため、その業務に関するスキルや専門知識をより深く磨く必要があります。
そのため、分業型に向いている人は、以下のような特徴があります。
- 1つのことを深く追求することが好きな方細かい作業を丁寧にこなすことが得意な方
- 専門性をもって業務に取り組みたい方
以上のような特徴を持つ方は、分業型の働き方に向いていると言えるでしょう。
分業制のメリットとデメリット
分業制のメリット
人材紹介事業者における分業型のメリットは、業務の効率化によるマッチング機会を増やせることにあります。
分業型の場合は、RAとCAがそれぞれの業務に専念することができるため、求人案件の獲得と求職者への対応数を最大限に増やせる可能性があります。また、人材紹介事業の業務を分担しているため、業界未経験者でも取り組みやすいということもメリットとして挙げることができます。
分業制のデメリット
人材紹介事業者における分業制のデメリットは、RAの求職者理解と、CAの企業理解が一気通貫性に比べ低い可能性があるということです。
例えば、RAが求人企業側から「紹介する求職者に関する情報」について質問されたときに、即座に十分な情報を提供できない可能性があります。
逆に、求職者から応募先の企業の詳細な情報を聞かれた時に、企業情報をCAが即座に伝えられないケースも考えられるでしょう。
このような事態に陥らないように、常にRAとCAがスムーズに連携できる体制を構築しておく事が重要です。
人材紹介の一気通貫型と分業型のまとめ
このように、一気通貫型と分業型にはそれぞれのメリットとデメリットが存在し、自社の営業戦略の最適化を実現できる営業スタイルを選択することが必要です。
企業によっては、戦略的に一気通貫型と分業型を社内に混在させて運用しているケースも存在しており、自社が目指す姿を明確にしたうえで設定することが良いでしょう。
ブレイン・ラボでは事業の立ち上げ相談会の実施や、提携する社労士事務所の紹介も可能です。人材紹介業の立ち上げや、立ち上げ後の事業の進め方などに不安のある方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。