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(テンプレート付き)人材紹介の成功報酬とは?相場や理論年収、返金規定について詳しく解説

人材紹介事業者は、人材紹介会社がクライアントである求人企業と転職希望者をマッチングすることにより、報酬(手数料)を得ています。

人材紹介事業者の報酬形態には、成功報酬や固定報酬などがありますが、成功報酬型の形態を採用するのが一般的です。そのため、もしマッチングが成功しなければ、クライアントから手数料(成功報酬)を受け取ることができないケースもあります。

ただし、人材紹介事業者が受け取る報酬には法律による規制があるため、いくらに設定しても良いというわけではありません。この報酬の設定は、基本的に「職業安定法」に基づく必要があるものの、市場の相場に従うのが一般的です。

そこで今回は、人材紹介の成功報酬について、相場や理論年収、返金規定などを詳しく解説

します。これから人材紹介会社を開業しようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

人材紹介の成功報酬とは?

人材紹介の成功報酬とは、人材紹介会社が紹介した求職者を求人企業が採用した場合、人材紹介会社が受け取る報酬のことを指します。この報酬は、採用された人材の理論年収を基準に算出されるのが一般的です。

そのため、成功報酬は、紹介した人材のスキルや経験、年収、職種によって異なります。一般的には、紹介した人材の理論年収の30%〜35%程度が相場です。

人材紹介の成功報酬の仕組み

人材紹介事業者が、クライアントである求人企業から成功報酬を受け取る仕組みについては、次の章で紹介する理論年収に基づく割合によって決まるのが一般的です。そのため、報酬額や報酬率については、それぞれの契約内容によって異なります。

また報酬額や計算方法は業界や地域によって異なるケースが多いため、人材紹介会社においては、適正な料金となるように相場を調べる必要があります。

人材紹介は、登録する求職者がサービスを無料で利用できることや、採用が決まるまで求人企業側に費用が発生しないといった特徴から、転職市場における需要が急速に拡大しています。そのため人材紹介事業者は、適正な価格設定で、できるだけマッチング精度の高いサービスを提供することが大切です。

人材紹介の成功報酬に関する法律

人材紹介に関する成功報酬については、職業安定法によってルールが決められています。

原則として、求職者から成功報酬を受け取ることが禁止されています。つまり人材紹介事業者は、基本的にクライアントである求人企業から成功報酬を徴収し、求人者からは手数料を徴収できないという仕組みです。このルールは「職業安定法32条の3第2項」に定められています。

ただ例外として、芸能家、家政婦(夫)、配ぜん人、調理師、モデル、マネキンなど、特定の6職種では、求職者からも受付手数料の徴収が可能です。これらの職種では、求職者からの求職申し込みを受理するごとに上限710円(免税事業者は660円)の受付手数料を徴収できます。なお、受付手数料は1ヶ月に徴収できる件数が3件までと決まっています。

届出制手数料と上限制手数料

人材紹介事業においては、主に「届出制手数料」か「上限制手数料」のどちらかが採用されています。

届出制手数料

届出制手数料では、紹介した求職者の理論年収をもとにして、紹介手数料を算出します。

理論年収については下記で詳しく解説しますが、交通費を除く諸手当(所定外労働手当、役職手当、住宅手当、家族手当など)を含んだ年収を指します。

例えば、クライアントに紹介した理論年収600万円の人材が、あらかじめ人材紹介基本契約書で定めておいた30%の紹介手数料で採用された場合、成功報酬として受け取ることができる紹介手数料は180万円です。

この紹介手数料には上限があり、その割合は50%と決まっています。もし手数料率が50%を超える場合は、開業許可がおりないため注意が必要です。ただ、一般的な成功報酬の相場は30%~35%程度となっているため、相場に従うのがおすすめです。

上限手数料

上限制手数料とは、紹介した人材に支払われる賃金6カ月分の11.0%(免税事業者は10.3%)を上限とする手数料の算出方法です。

例えば、上記と同じ理論年収600万円の人材を雇用した場合、理論年収の半年分(300万円)の11.0%となる33万円が紹介手数料となります。

このように、上限手数料は、利益が少なく人材紹介事業者にメリットが少ないため、ほとんど採用されていません。

人材紹介の成功報酬相場

前述したように、人材紹介における成功報酬の相場は、理論年収の30%〜35%となっています。また、一部の特殊な技能を必要とする職種などの場合には、40%を超える手数料率を採用しているケースもあります。

いずれの場合も、業種や職種よりも、同業他社の手数料相場に準ずるのが一般的です。なぜなら、手数料率が相場よりも高いと、クライアントからの求人が集まりにくく、売上や収益に影響するからです。

人材紹介の報酬の成功計算方法

人材紹介における成功報酬の計算方法は、上記の「届出制手数料」と「上限制手数料」で異なります。

届出制手数料の計算方法

理論年収✖️人材紹介基本契約書に定めた料率=成功報酬額

上限制手数料の計算方法

理論年収✖️1/2(0.5)✖️11%=成功報酬額

人材紹介の成功報酬を受け取るタイミング

成功報酬型の紹介手数料を受け取れるのは、採用された人材が実際に入社してからになります。ただし、人材紹介の手数料が発生するタイミングは、契約内容によって異なります。

そこで人材紹介基本契約書に、成功報酬を受け取るタイミングを明記するのがおすすめです。一般的には、入社日を手数料発生日とするケースがほとんどになっています。

理論年収とは?

理論年収とは、採用内定者が1年間就業した場合に想定される年収のことを指します。求人票に記載されている想定年収もほぼ同じ意味であり、該当の職種で採用された場合に想定される年収を表記しています。

理論年収の計算方法

理論年収の計算方法は、一般的に「通勤交通費と残業手当を除いたすべての手当てを含む月給×12ヶ月分+賞与」の合計金額になります。また、企業によってはインセンティブ(成果報酬)が別途加算されるなど、実際の計算式は各企業の賃金規定によって変わってきます。

ただし、予め理論年収の計算方法を企業と取り交わしておかないと求人企業とのトラブルにつながるため、人材を紹介する前に求人企業と請求する理論年収の計算方法について人材紹介基本契約書で取り交わすことをおすすめします。

理論年収の計算事例

理論年収の計算事例として、以下のような例があります。

例1. 月給制で賞与が業績変動の場合

ある企業の理論年収が、月給×12か月+賞与年間2回だったとします。しかしながら、賞与の算定が「業績によって変動する」という理由で、実際に支払う賞与が確定できないため、有料職業紹介事業者から求人企業への請求対象から除外して欲しいと企業から打診されるケースもあります。このような場合でも特別な理由が無い限りは、賞与分も請求対象に含めるように一度交渉をすることをお勧めします。

例えば、「最低限支給される〇ヶ月分を固定で含めてもらう」「管理職は変動が大きいので賞与は請求の対象から外し、一般職は請求対象に含める」など先方との妥協点を探します。

交渉しづらい部分かも知れませんが、後々の自社の利益や業務のモチベーションにもつながるため、適正に交渉をして自社が損をしないような立ち回りも必要です。

例2.成果報酬の比重が大きい場合

営業職においては、固定年収+成果報酬という給与体系を取る企業も増えており、成果報酬の比率が固定年収よりも多くなっている企業もあります。この場合、先ほどの業績変動賞与のケースと同様に実際に支払う成果報酬分が確定できないため、成果報酬分を有料職業紹介事業者から求人企業への請求対象から除外して欲しいと企業から打診されるケースもあります。こちらのケースでも、先ほどと同様に特別な理由が無い限りは、成果報酬分も請求対象に含めるように一度交渉をすることをお勧めします。

例えば、「入社〇年以内の中途入社社員の平均の成果報酬額」を請求するなど、1〜3年以内の中途入社社員をモデルケースとして、理論年収の計算対象に含めるように交渉をします。

上記のように、理論年収の算出方法は場合によって異なっており、自社が不利になりすぎないような交渉の実施もする必要があります。

理論年収と実際の年収が違う理由

入社後の求職者から内定承諾書に記載の理論年収と実際の年収が異なるという問い合わせを受ける場合があるかもしれません。理由は、以下のような要因が考えられます。

業績や成果の差

理論年収の変動要素がある部分(時間外手当・賞与・成果報酬)については、入社後の企業の業績や個人の成果によって上下することがあります。

勤務地など入社後の条件変更

地域によって、同じ職種でも年収に違いがある場合があります。入社1年以内に異動などで転居を伴う配置転換が発生した場合地域手当などが変更となり、入社前に提示された理論年収と差が生じるケースがあります。

以上のように、理論年収と実際の年収は、さまざまな要因によって異なることがあります。

早期退職した場合の返金について

人材紹介会社が紹介した人材が、求人企業に無事入社した後、一定期間内に退職した場合には手数料の一部または全額を返金するといった内容の条項を、人材紹介基本契約書に定めておくのが一般的です。

なぜなら、人材紹介に対する手数料は高額で、入社後の離職をきっかけにトラブルとなるケースが多いためです。もし手数料を支払ったにもかかわらず、採用した人材が早期に退職すると、採用企業に大きな経済損失を与える可能性があります。

そのため、一定期間内に退職した場合などの報酬返金規定については、人材紹介を行う企業として必ず人材紹介基本契約書に定めておきましょう。

返金の対象となる期間や、返金する報酬額の割合は、人材紹介会社によって異なります。そのため契約時に、人材紹介会社と求人企業の双方で、しっかりと確認しておくことが大切です。

一般的な保証期間と料率

人材紹介基本契約書では、紹介手数料の発生と同時に、返金規定についても決めておかなくてはなりません。そこで、下記のような規定を設けるのが一般的です。

返金規定の事例

  • 入社後1か月未満で離職した場合…80%返金
  • 入社後1か月以上3か月未満で離職した場合…50%返金

上記のように、日数と返金率を段階的に設定するのが一般的です。

また、事前に返金規定について合意を得ておくことで、トラブルを防ぐことが可能です。

人材紹介の手数料管理簿について

手数料管理簿とは、人材紹介手数料に関する項目を記載、管理するものです。

手数料管理簿に記載する内容

手数料管理簿に記載すべき内容は、以下の5項目となっています。

  1. 手数料を支払う者の氏名または名称
  2. 徴収年月日
  3. 手数料の種類
  4. 手数料の額
  5. 手数料の算出根拠

それぞれの記載方法は、次の通りです。

手数料を支払う者の氏名または名称

手数料を支払う個人、もしくは法人名を記載します。求人者、または関係雇用主が複数の事業所を有している場合は、申込の主体となっている人の名前を記入します。

徴収年月日

手数料の支払いが行われた年月日を記入します。

手数料の種類

求人受付手数料、求職受付手数料、求職者手数料、紹介手数料等の種類を記入します。

手数料の額

徴収した手数料の金額を記入します。なお、第二種特別加入保険料を徴収している場合には、その額も記入します。

労災保険に係る一人親方等の特別加入者に係る保険料をいい、その額は保険料算定基礎額の総額に第二種特別加入保険料率を乗じて計算します。

手数料の算出根拠

手数料の算出根拠となった賃金、割合等がわかるように記入します。

手数料管理簿のテンプレートDiSPAがおすすめ

人材紹介事業においては、管理すべき帳簿や提出書類が多岐にわたります。そのため、事業に関わるクライアントや求職者の数が増えるほど、手作業でのデータ管理や保存が煩雑化しやすくなります。

そこで、監査がいつ入っても、手数料管理簿などの必要資料を取り出せるように、システム管理することをおすすめします。

手数料管理簿のテンプレートについては、DiSPA!の「人材紹介会社様向けテンプレート」からダウンロードできますので、ぜひご活用ください。

人材紹介の成功報酬のまとめ

このように、人材紹介の成功報酬に関しては、職業安定法の規定に基づいてしっかりと申請・管理する必要があります。また成功報酬の手数料に関しては、上限や相場によって適正な手数料率にすることが大切です。

ブレイン・ラボでは、事業の立ち上げ相談会の実施や、提携する社労士事務所の紹介も可能です。人材紹介業の立ち上げや、立ち上げ後の事業の進め方などに不安のある方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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