お役立ちノート 法律解説

【2022年施行】職業安定法の改正ポイントや罰則、人材業界への影響を解説

2022年3月31日に職業安定法の一部改正を含む「雇用保険等の一部を改正する法律」が公布され、2022年10月1日から施行されています。今回の改正ポイントは、求職者が安心して求職活動をできるようにするための環境整備とマッチング機能の質の向上にあります。そこで人材業界に携わる方は、特に内容をしっかりと把握する必要があります。

もし職業安定法に違反してしまった場合には、厳しい罰則を課せられる可能性があるため、十分な注意が必要です。

そこで今回は、2022年10月に施行された職業安定法の改正ポイントや罰則、人材業界への影響などについて徹底解説します。

人材紹介事業を営む方はもちろん、実際の業務に携わる方も、ぜひ参考にしてください。

2022年の職業安定法の改正とは

職業安定法とは、人材(職業)紹介事業に関わる、労働市場におけるルールを定めた法律です。

職業安定法では、職業紹介・労働者募集・労働者供給という主な3つの観点から、労働施策における総合的な推進や、労働者に対する雇用の安定と、職業生活を充実させるための基本的なルールが記されています。

職業安定法により、人材紹介や人材募集が適正に行われることで、求職者が自らの能力に合わせた職業選択活動が自由にできるようになります。そして、人材を求めるさまざまな企業に必要な労働力が供給され、職業の安定とともに社会経済の発展に寄与することが目的です。

改正の背景と目的

現代社会においては、インターネットが急速に普及したことに伴って求人メディアが多様化し、SNSやサマリーサイトなどが普及しています。

また、労働人口の減少による人手不足が深刻化する中においては、公的な職業安定機関と、民間の人材紹介事業者が連携し、労働市場の需給調整機能を高めることが求められるようになりました。

このような状況を鑑み、人材紹介事業者が「労働市場においての需給調整機能の一端を担っている」ことを認識し、求職者が安心してサービスを利用できるようにすることが大切です。そこで、事業者のルールを明確化し、公正、かつ適正に、効率的なマッチングを実現することを目的として、今回の職業安定法の改正が施行されました。

今回の法改正については、厚生労働省が以下のように明記しています。

「求職活動におけるインターネットの利用が拡大する中、就職・転職の主要なツールとなっている求人メディア等の幅広い雇用仲介事業を法的に位置づけ、ハローワーク等との相互の協力を対象に含めるとともに、安心してサービスを利用できる環境とするため、求人メディア等が依拠すべきルールを明確にする」

これまで、人材紹介や人材派遣業の運営に関しては、国の許認可が必要でした。しかし、求人メディアに関しては誰でも自由に運営できる状態にあったこと、また求人メディア以外にも、職業安定法による規定がされていないさまざまなサービスが登場したことで「募集情報などの提供」に関する定義を拡大し、明確なルールを整備する必要性が高まりました。

このように、今回の職業安定法の改正によって求職者が安心し、積極的に求人サービスを利用できるようにすることが重要です。

改正内容とポイント

2022年10月1日施行の職業安定法改正のポイントには、主に次の6つがあります。

  1. 募集情報提供に該当するサービスの拡大
  2. 特定募集情報等提供事業者の届出制の創設
  3. 求人等に関する情報の的確な表示の義務付け
  4. 個人情報の取扱いに関するルールの改正
  5. 苦情に対する適切で迅速な対応の義務付け
  6. 利用者のための事業情報の公開

1.募集情報提供に該当するサービスの拡大

募集情報等提供事業者とは、求人や求職情報を提供する事業者のことを指します。

これまでは、一般的に「求人企業からの依頼を求人情報として提供するサービス(求人メディアや求人情報誌など)」や「求職者からの依頼を求職者情報として提供するサービス(人材データベースなど)」が、募集情報等提供事業者として認められてきました。

しかし、インターネットが普及した今では、さまざまなWebサイトを通じて求人や求職者情報を提供するサービスが登場しています。そこで今回の法改正により、他の求人メディアの求人情報を転載するサービスなども募集情報等提供事業者に含まれるようになります。

これにより、インターネット上のさまざまな求職サービスが募集情報等提供事業者の対象となり、法律の影響を受けることになりました。

2.特定募集情報等提供事業者の届出制の創設

特定募集情報等提供事業者とは、募集情報等提供のうち「求職者(労働者になろうとする者)」に関する情報を収集するものと規定されています。

この「求職者(労働者になろうとする者)に関する情報」とは、氏名などの個人を得定できる情報のほかにも、メールアドレスや職務経歴、求人情報サイトの閲覧履歴など、さまざまな情報を含むのが特徴です。

この特定募集情報等提供事業者に当てはまる事業者については、2022年10月1日~2022年12月31日までの間に、厚生労働省に届出を提出しなければならないとされています。ただし、経過措置が講じられているため、詳しくは※厚生労働省ホームページで確認することをおすすめします。

なお、特定募集情報等提供事業者には、年に1度の事業概況報告書の提出が義務付けられていますので、申請時に確認するようにしてください。

また、この特定募集情報等提供事業者にあてはまらない事業者においても、以下の改正内容を遵守する必要があるため、注意が必要です。

3.求人等に関する情報の的確な表示の義務付け

今回の職業安定法の改正においては、求人等に関する情報の的確な表示を義務付けています。

求人等に関する情報とは、主に以下のような情報が該当します。

  • 求人情報
  • 求職者情報
  • 求人企業に関する情報
  • 自社に関する情報
  • 事業の実績に関する情報

上記の情報に関しては、以下のようなルールが適用されています。

対象となる広告や連絡手段

求人等に関する情報を的確に表示すべき広告や連絡手段としては、ウェブサイトやメールだけでなく、アプリやテレビ放送、雑誌など、幅広く情報が提供される媒体が対象となります。

虚偽や誤解を生じさせる表示の禁止

求人等に関する情報の的確な表示義務として、虚偽や誤解を生じさせる表示を禁止しています。

正確かつ最新の内容に保つ措置の義務化

正確かつ最新の内容に保つ措置を義務化したことにより、すべての事業者が求人情報や求職者情報の提供中止や訂正を求められた場合には、遅滞することなく、迅速に対応することが求められます。

もし情報が正確かつ最新でないと気づいた場合には、速やかに求人情報の提供依頼者に確認を行い、修正しなければなりません。

また、求人情報や求職者情報を自ら収集・提供している事業者に関しては、情報更新を定期的に行い、更新頻度を明らかにする。もしくは求人情報や求職者情報を収集した期日を記載する必要があります。

4.個人情報の取扱いに関するルールの改正

募集情報等提供事業者は、職業安定法の個人情報に関する規定の対象となります。

そこで募集情報等提供事業者においては、次の項目を遵守しなければなりません。

  • 業務の目的の達成に必要な範囲において、求職者の個人情報を収集・使用・保管しなくてはならない
  • 求職者の個人情報を収集する際は、業務の目的を明らかにしなくてはならない
  • 業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない
  • 求職者の個人情報を、むやみに第三者に提供してはならない

個人情報を収集・使用・保管する際は、その目的を求職者が想定できる程度で、具体的に明記する必要があります。

また、収集した個人情報を募集情報等提供のために利用する場合は、必要の範囲内に留める必要があります。もし、業務の目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を収集・使用・保管する場合は、本人の同意が必要です。本人の同意を得る際は、次の内容を遵守することが求められます。

  • 同意を求める事項を具体的かつ詳細に明示すること
  • 本人の自由な意思に基づいており、本人が明確に表示した同意であること
  • 業務の目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を収集・使用・保管することに同意することを、募集情報等提供の条件にしないこと

もし上記に違反した場合には、法律違反の罰則を受ける可能性があります。

5.苦情に対する適切で迅速な対応の義務付け

求人企業や求職者からの苦情に対しては、適切かつ迅速に処理する必要があります。また、上記の苦情に迅速な対応ができるように、必要な体制を整備することが義務付けられています。

ここで求められる体制とは、募集情報等提供事業者の電話番号やメールアドレス、問い合わせフォームなど、苦情に関する連絡先や相談窓口を明記することです。そこで、これらの連絡先を利用者に分かりやすいように明示しておくことが大切です。

6.利用者のための事業情報の公開

以下の項目については努力義務とされているため、公開しない場合でも法律違反には該当しません。ただし、利用者のためを考え、インターネットを通じた情報の公開が望まれています。

  • 求人等に関する情報の的確な表示に関する事項
  • 個人情報の保護に関する事項
  • 苦情の処理に関する事項
  • 求人情報・求職者情報の検索結果の表示順の決定にあたり考慮している事項

最後の「求人情報・求職者情報の検索結果の表示順の決定にあたり考慮している事項」については、広告宣伝の費用などにおける金銭の支払が、検索順位の決定に影響を及ぼす可能性がある場合には、その旨を含めて記載します。

違反した場合の罰則規定

改正職業安定法に違反した場合の罰則には「特定募集情報等提供事業の届出を行わなかった場合」「虚偽の届出をした場合」「特定募集情報等提供事業の停止命令に違反した場合」における罰則があります。

もし職業安定法に違反していることが分かった場合には、まず是正指導が行われるのが一般的です。そして、是正指導に従わなかった場合には「改善命令」や「事業停止命令」といった行政処分が行われる可能性があるため、注意が必要です。

違反の内容については、職業安定法第63条~67条に記載されています。

まとめ

このように、改正職業安定法においては、人材紹介事業者のサービス提供に関わる新しい法律が明記されています。人材紹介事業においては、これ以外にもさまざまなルールが示されており、事業の立ち上げに際しては、細心の注意を払う必要があります。

そこで、もし人材紹介事業を立ち上げる際に、疑問や質問のある方は、いつでもブレイン・ラボにご相談ください。

ブレイン・ラボでは事業の立ち上げ相談会の実施や、提携する社労士事務所の紹介も可能です。人材紹介業の立ち上げや、立ち上げ後の事業の進め方などに不安のある方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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