職務経歴書とは、応募先企業から提出をする、転職希望者の職務経歴をまとめた書類です。職務経歴書は、転職の際に提出が必要となるケースが多くあります。
これまでの職務経歴をまとめた書類とはいえ、初めて職務経歴書を書く方の中には、何をどのように書けば良いのかわからないという方も多いのが現実です。
そこで今回は、人材紹介会社のキャリアアドバイザー向けに、転職希望者へ職務経歴書の目的や使い方、書き方のコツなどを正しく伝えられるように、内容を詳しく解説します。
職務経歴書とは?
職務経歴書とは、人材紹介を行う際に、紹介先の企業に履歴書と共に提出をする、転職希望者の職務経歴をまとめた書類です。
職務経歴書は転職活動の合否に大きく影響する書類です。応募先の企業へ、転職希望者のPRポイントを最大限アピールできるように作成サポートをすることをおすすめします。
記載すべき項目と内容
氏名
氏名を記入する際に注意すべきことは、読みづらい名前や読み方が複数ある名前の場合に、読み仮名を書き添えておくことです。例えば「藤原」の姓では、「ふじわら」や「ふじはら」などの読みをわかりやすく記入しておくようにしましょう。
なお、職務経歴書の氏名欄には、押印する必要はありませんし履歴書のような住所の記入も不要です。
日付
日付を記入する際の年号に関しては、基本的に西暦でも和暦でも構いません。ただし、職務経歴書全体で統一して記入することが大切です。
職務経歴や資格取得の欄の年号は統一できていても、書類の作成日の年号が異なっているケースがよくありますので、注意しましょう。
職務の要約と概要
職務の要約と概要とは、これまでの仕事に関するキャリアを、短い文章でわかりやすくまとめた文章です。
職務の要約と概要は、一般的に職務経歴書の冒頭に書きます。なぜなら、採用担当者に自分の職務経歴書を読み、理解してもらうために欠かせない内容だからです。
転職希望者を中途採用する場合は、人事担当者や募集する職場の責任者が採用を担当します。そのため、忙しい業務の合間に、できるだけ端的に自分のキャリアや実績を分かりやすく伝えられるかが重要です。
そこで書類の冒頭に求人募集とマッチするキャリアと実績を記入しておくことが大切です。短い文章で求人内容と転職希望者のキャリアがマッチしていることが伝われば、採用担当者が職務経歴書を読み進めてくれる可能性が高くなるからです。
自社が推薦する転職希望者と他の転職希望者との差別化を図るためにも、職務の要約と概要の書き方には、十分に注意しましょう。
職務の要約と概要を書く際のポイント
職務の要約と概要を書く際のポイントとして、次の4つを押さえておきましょう。
- 転職希望者のキャリアを3~4行程度に分かりやすくまとめること
- 応募企業や応募ポストの業務と関連の深い内容を書くこと
- 複数の企業に勤めていた場合、直近もしくは在職期間の長い職歴をメインに書くこと
- 具体的な事実や数字を分かりやすく書くこと
勤務中の企業情報
転職希望者が勤務している企業の情報については、採用担当者が詳しく知らないことを前提として書くのが基本です。
そこで以下のような情報を書いておくことで、どのような会社でどのような仕事をしているかが伝わりやすくなります。
仮に同じような業界や職種の転職であったとしても、企業規模や事業内容によっては携わる業務も異なるため、できるだけ多くの情報を応募先に提供することが大切です。
勤務中の企業の情報
- 業界や業種
- 事業内容や扱う商材
- 企業規模や従業員数
- 上場・非上場
- 売上高・シェアといった業界内のポジション
- 転職希望者の雇用形態
- 現在の勤務地
また転職が複数ある場合には、職務経歴の合間にそれぞれ記入しておくと良いでしょう。
職歴
職歴欄には、転職希望者が社会人となってからの職務経歴をまとめて記入します。
職歴欄を記入するポイントは、いつ・どの部門で・誰に向けて・何をしたかを、分かりやすく書くことです。
職務経歴は自己PRを書く際の根拠となる客観的な証拠となるため、あくまでも事実に基づいて記入することが大切です。転職希望者の強みをどのように伝えるかを考え、矛盾のない職務経歴となるように注意しましょう。
以下では、職歴を書く際に注意すべきポイントを整理しておきます。
在籍企業を記載する順番
転職経験が複数ある場合は、現職の会社から遡って記載するケースが多いですが、時系列になっていればどちらでも問題ありません。
応募先の企業が欲しい情報を記入する
転職希望者の職歴については、ただすべてを列挙すれば良いというわけではありません。
転職先の企業で役立つ経歴やスキルを分かりやすく書くことが重要です。
応募先へのPRにならないスキル・経験は簡単に記すか、情報が多くなる場合は適度に整理・削除しても良いでしょう。
具体的な数値で示す
転職希望者の経歴や実績を記入する際は、客観的に判断できる数値で示すことが大切です。
例えば「営業の売上が前職でトップクラスであった」と記入しても、営業スタッフが何人いるのかや、扱う商品の単価や売上数が業界でどの程度のレベルにあるのかが分からなければ、優秀な人材かどうかの判断ができません。
そこで「営業成績が前職の営業スタッフ50名の中で1位となり、営業一人当たりの年間売上が平均5,000万円のところ1億円を売り上げた実績がある」など、具体的な数値で示すようにしましょう。
プロジェクトは具体的に説明する
エンジニアなどの職種の場合は、プロジェクト単位で業務を行うケースもあります。このような職歴を書く際は、プロジェクトの人数構成や開発期間、開発テーマ、予算といった、プロジェクトの規模や難易度をイメージできるように書くことが重要です。また、転職希望者がプロジェクト内でどのような役割を担っていたかも分かりやすく記入しましょう。
業務内容を具体的に書く
転職希望者が関わった業務内容については、できるだけ具体的に書きましょう。なぜなら「営業」や「プログラム作成」「システムメンテナンス」といった表記では、応募先の採用担当者に具体的な職歴や保有スキルが伝わらないからです。
業界用語や社内用語なども含め「誰が見ても分かりやすい内容」となっているかを確認しましょう。
活かせるスキルや知識
職務経歴書には、原則として決まったフォーマットはありません。ただ、職務経歴書の「職務経歴」のあとに「活かせるスキルや知識」をまとめて記入するのが一般的です。
職務経歴書に記入すべきスキルや知識としては、社会経験の中で習得した「テクニカルスキル」「ビジネススキル」「ヒューマンスキル」に分けて記入するのがおすすめです。
テクニカルスキルとは
テクニカルスキルとは、職種や業種ごとに求められる専門的なスキルや知識を指します。
テクニカルスキルには、次のようなものがあります。
- 各種の資格
- 専門的なツールやソフトウェアの使用経験や習熟レベル
- 専門分野における業務経験
- 業界知識や市場理解 など
ビジネススキルとは
ビジネススキルとは、企業や業種などに関係なく活かすことのできる、仕事上のスキルをさします。
ビジネススキルには、次のようなものがあります。
- 語学力
- PCスキル
- マネジメント力
- 課題解決力 など
ヒューマンスキルとは
ヒューマンスキルとは、その人の性格や仕事へのスタンスなどを指します。ヒューマンスキルに関しては、主観性が高くなるため、できるだけ具体例などを挙げながら記入すると良いでしょう。
ヒューマンスキルには、次のようなものがあります。
- 職場における協調性
- 仕事に対する責任感
- 人や仕事への柔軟性
- 仕事に対する忍耐力 など
とくに日本の職場においては、転職をネガティブに捉える方も少なくないため、できるだけヒューマンスキルを具体的に示すようにしましょう。
取得免許や資格
職務経歴書に記載する取得免許や資格については、仕事に関係のあるものを、取得年月と等級をセットにして書くのが一般的です。
免許や資格については、できるだけ多く書くのが良いと考える方もいますが、必要のない資格を書く必要はありません。それは、これまでの職歴や応募する業務に関係のない免許や資格を書くと、単なる資格コレクターで計画性のない人物という印象を与えてしまうリスクがあるからです。
また、これまでに取得した資格をどう活用し役立てたか。これから取得しようと勉強中の資格などは積極的に記載しても良いでしょう。ただ、あくまでも仕事に関するものを書き、趣味などに関連する資格は書かないように注意しましょう。
自己PR
自己PRとは、応募先の企業に対して転職希望者自身を売り込むための大切な要素です。「応募者を採用すべき理由」や「応募者が入社することで会社に貢献できること」を積極的に提示して、採用を後押しするための材料が自己PRと考えて良いでしょう。
そこで自己PR欄には、応募先の企業で活かせるスキルや、応募する仕事と関連性の強い資質を書くのがおすすめです。
近年はどの企業も人手不足に悩まされているケースが多く、中途採用を行う企業では、即戦力となる人材の確保を目的として募集をかけています。そこで、応募先の企業で即戦力として活躍できる理由を強みとして転職希望者のキャリアの棚卸しを行い、アピールポイントを整理すると良いでしょう。
退職や転職の理由
前職を退職した理由や転職理由については、転職希望者から情報提供する必要はありません。なぜなら、これらの理由はネガティブな要素が強いからです。もし応募先の企業から退職や転職理由を問われた時のみ、正直に答えると良いでしょう。
前職の企業が倒産した場合、ブラックな就業条件であった場合などは、具体的な内容を明記すれば良いでしょう。また、転職希望者自身がキャリアアップしたいといった理由であれば、ポジティブなイメージを持たれるかもしれませんので、積極的にアピールするのもおすすめです。
書いてはいけないこと
職務履歴書に記載する内容は、上記のような項目となります。下記のような内容は、職務履歴に書いてはいけない(必要のない)項目ですので、作成時に注意しましょう。
・仕事に関連しない趣味や特技
・アルバイト経験やボランティア活動など
・連絡先(住所や電話番号、メールアドレスなど)
転職希望者の魅力を引き出す作成方法
転職希望者が提出する職務経歴書は、できるだけわかりやすく、簡潔に記載することが大切です。
それは、転職希望者が過去の経歴を強くアピールしたいからといって長い文章で必要のないことまで書いてしまい、逆に書類選考でマイナス要素となるケースがあるからです。そこで以下では、職務経歴書の書き方のコツを紹介します。
書き方のコツを理解することで、簡潔な文章でも、アピールしたい実績やスキルをしっかりと伝えることができるでしょう。
5W1Hで書く
わかりやすい文章を書くための手法として活用されるのが「5W1H」で書く方法です。
いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのようにを意識することで、必要なことを漏れなく記載することが可能です。
数値化して具体的に書く
転職希望者の実績をアピールしたいときは、先に解説したように、できるだけ数値(数字)を用いることで実績を具体化して記載しましょう。
そのほかにも、文字を丁寧に書くことや卒業した学校や学部名、取得した資格を正式名称で書くなど、細かな部分にも注意して書くことが大切です。
提出前の確認事項
職務経歴書を作成したら、提出する前に、下記の事項に間違いや誤字などがないかを確認しておきましょう。
・年号や文体は統一されているか
・誤字脱字がないか(変換ミスに注意)
・数値を使って具体的に表現できているか
・客観的な視点で書かれているか
・長すぎる文章はないか(一段落につき最大4行程度が目安)
・箇条書きや表で分かりやすく整理されているか
・見出しを付けて分かりやすく整理されているか
・読みやすいように適切に改行や余白を設けているか
・余白のサイズは統一されているか
・募集案件に必要な経験やスキルが書かれているか
・専門用語が多用されていないか など
上記については、できるだけ複数の人でチェックを行うのがおすすめです。
まとめ
職務経歴書は、求職者のキャリアを明確にするためだけでなく、これからのキャリア形成の指標としても活用できる書類です。
そこで転職先の企業から職務経歴書の提出を求められたときだけでなく、求職者自身が今後のキャリア形成にお悩みの場合にも、作成してみると良いでしょう。
ぜひこの記事を参考に、応募先の採用担当者に刺さる職務経歴書を作成してください。
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