現代では、働き方改革やワークライフバランスを重視する考え方が浸透したことにより、より充実した働き方や職場を求める求職者が増えています。
そんな中で、人材紹介会社が優秀な人材をより多く確保するためには、求職者に魅力のある求人票を作成することが大切です。
ただ、求人票には職業安定法に定められた項目や基準があるため、何を書いてもよいというわけではありません。そこで決められた記載項目を網羅しつつ、求職者の興味や関心を惹きつける求人票を書くことが重要です。
そこで今回は、人材紹介会社の魅力ある求人票の書き方や注意点とテンプレートを紹介します。
人材紹介会社で求人票を担当されている方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
求人票とは
人材紹介会社における求人票とは、クライアントとなる求人企業に紹介するための求職者を募集する際に、自社のWebサイトなどに掲載する求人情報のことを指します。
求人票には、求人企業の情報や、募集している職種、仕事の詳細、給与や待遇といったさまざまな条件を記載します。
求人票の内容を閲覧することで、求職者が応募先となる企業を決めるため、しっかりと求人企業をPRできる内容でなければなりません。なぜなら、魅力的な求人票を作成できなければ、自社サイトへ登録してくれる求職者数や求人企業数が少なくなり、収益が上がらないからです。
人材紹介会社における求人票の重要性
人材紹介会社における求人票は、求職者と企業を繋ぐ、重要な役割を担います。
求人票の内容が不十分であったり、魅力が伝わりにくいと、求職者が自社サイトへ登録してくれない可能性が高くなります。
それは、いくらクライアントが好条件の求人を出していても、その魅力が求職者に伝わらなければ登録や応募に繋がらないからです。
人材紹介会社が求職者にとって魅力的な求人票を作成することで、応募数が増加し、ターゲット通りの人材を獲得できるようになるでしょう。
求人票に記載すべき項目
求人票に明記しなければならない項目としては、次の10項目があります。
- 業務内容
- 労働契約期間
- 試用期間の有無
- 就業場所
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間外勤務の有無、休憩時間及び休日
- 賃金額
- 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の適用に関する情報
- 募集者の氏名または名称
- 労働形態(正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パートなど)の記載
- 受動喫煙防止措置の状況
これらの項目については、職業安定法によって定められているため、必ず記載が必要です。
そこで、人材紹介会社が求人票を作成する際や、クライアント企業に求人票の提出を求める際にも、漏れなく記載するように注意しましょう。
また求人募集の過程において、募集内容と実際の労働条件が変更になった場合には、速やかに求人票の修正を行い、求職者に不利益が及ばないように配慮しなければなりません。
▲出典:厚生労働省「労働者を募集する企業の皆様へ」より
求職者に刺さる求人票の書き方
求職者に刺さる魅力的な求人票を作成するには、誰が見ても分かりやすい内容を記載することが大切です。
そこで、自社のキャリアアドバイザーの視点に立ち、キャリアアドバイザーが紹介したくなるような求人票を作成すると良いでしょう。
以下では、キャリアアドバイザーが紹介したくなる、魅力的な求人票を書くポイントを紹介します。
ポイント1:企業が希望するペルソナをイメージする
まずは、求人を出す企業の採用担当者から「どのような人材に・どのような仕事をして欲しいのか」を明確にイメージしてもらい、ターゲットを決めて求人票を作成するのがポイントです。
企業が採用したいペルソナ(人物像)を明確にすることで、そのターゲットとなる人材が知りたいと思う情報を、求人票で詳しくアピールします。
企業によって、求職者に資格や能力を求める場合もあれば、性格や人柄などを求めるケースもあります。
このように、企業ごとに求める人材はさまざまです。そこで、ターゲットとなる人物に刺さる内容を精査し、他社の求人サイトとの差別化を図ることが重要です。
ポイント2:求人情報を具体的に分かりやすく書く
求人票を作成する際に、最も注力すべきポイントは、求人情報を正確で具体的に記載することです。
特に仕事の内容を詳しく記載することで、実際に取り組む業務がイメージしやすくなり、求職者の応募意欲の向上につながるでしょう。
以下では、仕事の内容欄の事例として、良い例と悪い例を紹介します。
仕事内容の悪い例
ケースを洗浄する作業です。
洗浄機へ流す、ケース整理、ラベルはがし、コード読み取り作業などを行います。
上記は、ある求人募集サイトにあった仕事内容の実例です。
これだけでは、どのような会社で、どのような仕事をするのかが明確に分かりません。
できるだけ具体的に、分かりやすく書くことが、求職者に刺さる求人票となります。
仕事内容の良い例
光学製品の組立のお仕事です。
※クリーンルーム内でのお仕事となります。
※未経験の方でもお気軽にお問い合わせください。
【業務内容】
・ライフルスコープ、双眼鏡の組立検査を行うお仕事です。
指示書に従って、各ユニットを組み立てる作業となります。
製品に付随する各部品の検査も行います。
汚れがあった場合は、拭いていきます。
※未経験の方は、できるところから始めていただきます。
【おすすめポイント】
・無料駐車場完備
・食堂スペースあり
・休憩:午前、お昼、午後
・仕出し弁当あり
・更衣室あり
・ロッカーあり
・カップラーメンやパンなどの自販機あり
【オススメな方】
・未経験者歓迎
・もくもく作業が好きな方
・製造業でのご就業経験も活かせます
・残業不可などのご相談も可能です
上記のように、仕事内容やおすすめポイントなどを詳しく記入するだけで、求職者が職場や仕事に良いイメージを持ちやすくなります。
この内容を参考に、ぜひ具体的に内容を記載するように心がけましょう。
また、採用後のミスマッチを防ぐためにも、実際に採用する企業の担当者の方などに記載漏れや不備はないかを確認してもらうことをおすすめします。
ポイント3:企業のアピールポイントを具体的に書く
求人票の作成でPR欄を効果的に使うことは、求職者へのアピールだけでなく、他者との差別化にも有効です。
そこで、クライアント企業の強みや社風、労働条件など、入社すると得られるメリットをしっかりとアピールしましょう。
ここで注意すべきは、企業の採用担当がアピールしたいポイントと、求職者が魅力的に感じるポイントが違う場合です。
人材紹介の企業担当には、この点を敏感に察知する能力が必要です。そこで、常日頃からキャリアアドバイザーなどからの情報を基に、人材市場におけるトレンドを把握しておきましょう。
企業PRの良い例
- 弊社では、スタッフのパフォーマンス向上を目指すために通勤の負担を軽減する必要があると考え、テレワークの導入を実施しています。
- 「スタッフのワークライフバランスを尊重する社会」というビジョンを実現するため、弊社では、フレックスタイム制を導入しています。
- 「家族を大切にする会社」という企業理念から、社員の記念日や誕生日の特別休暇制度を導入しています。
上記のように、良いイメージを与える企業理念や社風をアピールするのもおすすめです。
求人票に書いてはいけない項目
求人票には、記載してはいけない禁止事項があります。もし知らずに記載してしまうと、求職者が集まりにくくなったり、法令に抵触するといった可能性があります。
この「禁止事項」は、主に次の2つです。
- 就職差別に繋がるような記載
- 求職者に誤解を与える可能性がある記載
それぞれ解説します。
就職差別に繋がるような記載
就職差別に繋がる可能性のある記載禁止項目には「性別」「年齢」「国籍」「出身・居住地域」「身体的健康」などがあります。
「性別」に関する記載
性別については、改正後の男女雇用機会均等法により、男女どちらかの性別を限定して募集するような記載や、性別によって給与や待遇などの条件を変えることも禁止しています。
禁止事例
・男性のみの採用です
・女性の方大歓迎 など
改善事例
・男性の方が活躍しています
・女性が働きやすい職場です など
「年齢」に関する記載
原則として、年齢を選考基準にすることも法律で禁じています。例外としては、若年層のキャリア形成を目的とする長期の雇用や、定年対象者を考慮した高齢シニアの募集を行う場合には記載が可能となります。
ただし、事前に例外に当たるかを確認しなければなりません。
禁止事例
・25歳以下の方歓迎
・重労働のため40歳未満の方が対象
・20~30代のみの採用となります など
改善事例
・25歳以下の方が活躍中です
・重いものを運ぶ仕事で40歳未満の男性が活躍しています
・20~30代の方を中心に活躍しています など
「国籍」などに関する記載
国籍や人種、肌の色なども採用条件には記載できません。また、語学力が必要な場合には、経験や能力欄に記載します。
なお、国籍不問などの記載も禁止されています。
禁止事例
・外国人歓迎
・国籍は問いません など
改善例
・外国籍の方が活躍中です など
「出身・居住地域」などに関する記載
出身地や居住地、または通勤時間を雇用条件にすることは禁止されています。
禁止事例
・通勤時間30分以内の方大歓迎
・自宅から通勤できる方の採用です
・東京都の出身者大歓迎 など
改善事事例
・公共交通機関での通勤をお願いします
・車での通勤可能 など
「身体的健康」に関する記載
身長や体重、容姿などを選考基準にはできません。身体的、精神的障がいについても禁止されています。
禁止事例
・心身ともに健康な方歓迎
・身長160㎝以上の方歓迎
・容姿の良い方大歓迎
改善事例として「雇用条件」ではなく「仕事の詳細」などに記載すると良いでしょう。
記載事例
・体力に自信のある方歓迎
・高い場所にある商品を取る作業です
求職者に誤解を与える可能性がある記載
求人票では、求職者に誤解を与える可能性のある表記を記載することも禁止しています。
特に多い事例としては、最低賃金を下回ることを隠すような、悪質な求人募集などがあります。
従業員の報酬は、最低賃金法によって各都道府県と職種別に、最低時給や最低日給などの最低賃金※が定められています。この金額を下回る報酬での募集、雇用は厳しく禁止されているので注意が必要です。
※最低賃金については厚生労働省HPからご確認ください
求人票におすすめのテンプレート
人材紹介会社で効果的な求人票を書きたい時は、ぜひ「人材紹介会社向けの求人票テンプレート」をお使いください。求人票以外にも、人材紹介会社に役立つ書類を、人材派遣と人材紹介を専門とする『DiSPA!』のWebサイトからダウンロードできます。
DiSPA!の帳票関係のテンプレートは、DiSPA!の「帳票テンプレート」のページ内「人材紹介会社様向けテンプレート」からダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
求職者に刺さる求人票のまとめ
このように、人材紹介会社における求人票は、自社の収益を左右する重要な書類の1つです。
求職者の中には、未経験の新しい職に就く方もおられるため、仕事の内容などをできるだけ具体的に分かりやすく記載することが重要です。
ただ記事内で紹介したように、禁止されている表記などもあるため、くれぐれも法令に違反するような内容を記載しないように注意してください。
もし求人票の作成に疑問や不安のある方は、いつでもブレイン・ラボにご相談ください。
ブレイン・ラボでは、求人票の作成はもちろん、事業の立ち上げ相談会の実施や提携する社労士事務所の紹介も可能です。人材紹介業の立ち上げや、立ち上げ後の事業の進め方などに不安のある方も、ぜひお気軽にお問い合わせください。