近年は、労働人口の減少や働き方改革などの影響により、国内のさまざまな業界における人材が不足しているのが現状です。
そこで国内企業では、即戦力となる優秀な人材を確保するために、人材紹介事業者を通じた人材採用を活発化させています。またこのような状況から、人材派遣会社をはじめとするさまざまな企業が、人材紹介事業への参入を進めています。
ただ、一般的な会社とは異なり、人材紹介事業を開業するには、立ち上げに必要な準備が必要です。
そこで今回は、人材紹介事業の立ち上げに必要な項目や必須要件、申請の仕方を詳しく解説します。
これから人材紹介事業へ参入をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
人材紹介事業とは?
人材紹介事業とは、人材を求める求人企業と転職を希望している求職者の双方から申し込みを受け、双方の希望に沿った雇用関係の成立を斡旋する事業のことです。
人材紹介事業者は、求職者と求人企業の間を取り持ち、面接などのステップを経て、適した人材を紹介します。
紹介した人材が採用された場合には、求人を出した企業から紹介料を受け取ることで、事業を運営しています。
有料職業紹介事業と無料職業紹介事業
人材紹介事業は「有料職業紹介事業」と「無料職業紹介事業」の2種類に分類できます。
有料職業紹介事業とは、職業紹介を行う際に、紹介した企業から手数料や報酬を受ける事業者のことです。
もう一方の無料職業紹介事業は、職業紹介を行う際に手数料や報酬が発生しない、公共性の高い事業者を指します。無料職業紹介事業者については、全国各地にあるハローワークや大学のキャリアセンター、再就職支援事業会社などが代表的です。
一般的な人材紹介事業者は有料職業紹介事業者となるため、本記事では、有料職業紹介事業について詳しく解説します。
事業を立ち上げるメリット
人材紹介事業を立ち上げるメリットとしては、次のようなものがあります。
- 需要が高い
- 利益率が高い
- 自由なスケジュール
- 業界の多様性
- エージェントとしての役割
それぞれ解説します。
1.需要が高い
人材紹介事業は、労働力不足が続く現代において需要が高い事業の1つであるため、今後の成長に期待ができます。
2.利益率が高い
また人材紹介事業では、収益率の高い紹介料を得ることができるのが特徴です。
3.自由なスケジュール
人材紹介事業は、コンサルタント自身で業務完結できることが多く、裁量権を持って働くことが可能です。また、インターネットなどのテクノロジーを活用することにより、オンラインによるリモートワークを取り入れやすい職種でもあります。
4.業界の多様性
人材紹介事業は、さまざまな業界に対応できるため、自分の興味やスキルに合った業界を選ぶことができます。
ご自身のキャリアや人脈を活かすことで、特定の分野に特化した人材紹介業を行うことも可能です。
5.エージェントとしての役割
人材紹介事業では、企業や候補者との調整役としての役割を担うことができるため、社会的にも貢献度の高い事業と言えるでしょう。
事業モデルの解説
人材紹介事業は、企業の人材ニーズに合った人材を紹介し、その紹介によって生じる成約手数料によって収益を上げる事業です。
人材紹介の事業内容には、次のようなものがあります。
- 人材の募集
- 選考・評価
- 人材紹介
- 契約の成立・フォローアップ
それぞれ解説します。
1.人材の募集
企業が求める人材像を把握し、オンラインやオフラインによる募集を効率的に行い、適切な人材を募集する。
2.面談・評価
募集した人材に対して、面談やスキルテストなどを実施します
3.人材の紹介
募集要件に会った人材を求人企業に紹介します。
4.契約の成立・フォローアップ
紹介した人材が雇用されるための契約の成立を支援し、紹介した人材が長期的に雇用されるようフォローアップします。
契約が成立したら、企業がその報酬として人材紹介事業者に紹介料を支払います。
収益について
人材紹介事業の収益については、紹介料として紹介先の企業から報酬を受け取るのが一般的です。
報酬額は契約によって異なりますが、雇用された人材の給与や理論年収の一定割合か、固定額が支払われるケースがほとんどです。また、報酬額や計算方法は業界や地域によって異なります。
人材紹介では、登録する人材が無料でサービスを活用できることや、採用が決まるまで企業側に費用が発生しないため、転職市場における需要は拡大しています。
事業開始に必要な要件
有料人材紹介事業の許可を得るには、次の4つの要件のすべてを満たす必要があります。
- 財産的基礎の要件
- 個人情報管理体制に関する要件
- 職業紹介責任者に関する要件
- 事業所に関する要件
それぞれの要件について、詳しく解説します。
1.財産的基礎の要件
職業紹介事業を開業するにあたっては、当該事業を健全に遂行するに足りる、以下のような財産的基礎を満たす必要があります。
・資産の総額から負債総額を控除した額が500万円以上あること(事業所が複数ある場合は、事業所ごとに500万円以上)。
・自己名義の現金・預貯金の額が150万円以上であること(事業所が複数あるときは、1事業所につき60万円が追加されます)。
2.個人情報管理体制に関する要件
職業紹介事業を遂行するにあたり、求職者の個人情報を適正に管理・遂行するための事業運営体制の構築と、個人情報適正管理規程を定めていることが求められます。
・個人情報の管理体制に関する要件
・個人情報の管理措置に関する要件
3.職業紹介責任者に関する要件
職業紹介責任者とは、人材紹介事業者において、職業トレーニングや就職支援を行う専門の人材のことです。人材紹介業を営む際は、社内に1人以上の職業紹介責任者を置く必要があります。
職業紹介責任者は、それぞれ全国の主要都市で定期的に行われる「職業紹介責任者講習」を受講すれば資格の取得が可能です。
この職業紹介責任者においては、次のいずれにも該当し、欠格事由に該当せず、また業務を適正に遂行する能力が必要とされています。
・労働関係法令に関する知識及び職業紹介事業に関連する経験を有する者であること。
・成年に達した後3年以上の職業経験を有する者であること。
・厚生労働省が指定する機関が主催する「職業紹介責任者講習会」を受講した者であること。
4.事業所に関する要件
職業紹介事業の許可基準については、求職者のプライバシー保護対策がなされている必要があります。そこで、以下の要件を満たすことが必要です。
・個室設置やパーティションなどで仕切ることができる部屋で、求職者に対応できること。
・他の求職者等と同室にならずに対応可能であること。
・適切な場所であること。
・上記条件が満たされない場合は、事業所の面積がおおむね 20 ㎡以上であること。
※オンライン面談を行う場合には、上記よりも要件が緩和されるケースもありますので、必ず管轄の労働局などに問い合わせて確認しましょう。
許認可申請の仕方
最後に、人材紹介事業の許可申請の流れや仕方について解説します。
手続きの流れ
人材紹介業の許認可申請から登録までの流れとしては、以下の8項目を参考にしてご確認ください。
- 自社(または個人)が許可基準を満たしているかチェックする
- 職業紹介責任者講習を受講する
- 必要書類を準備する
- 申請書類を作成する
- 労働局にて事前確認を行う
- 捺印後、申請手続きを行う
- 事務所の検査を受ける
- 許可証の交付をうけて営業開始
必要書類について
職業紹介事業の開業にあたっては、次のような書類の提出が必要となりますので、必ず事前に準備しておきましょう。
申請に必要となる書類(※書類部数は、正本と写しの合計部数)
・有料職業紹介事業許可申請書 3部
・有料職業紹介事業計画書 3部
・届出制手数料届出書(上限制手数料による場合には提出は不要)3部
下記の①から⑨の添付書類をそれぞれ 2部
①法人に関する書類
・定款又は寄附行為
・法人の登記事項証明書
②代表者、役員、職業紹介責任者に関する書類
・住民票の写し
・履歴書
・職業紹介責任者講習会受講証明書
③資産及び資金に関する書類
・最近の事業年度における貸借対照表及び損益計算書
・預貯金の残高証明書等所有している資産の額を証明する書類
・所有している資金の額を証明する預貯金の残高証明書
・最近の事業年度における確定申告書の写し
・最近の事業年度における法人税又は所得税の納税証明書
・最近の事業年度における株主資本等変動計算書
④個人情報の適正管理に関する書類
⑤業務の運営に関する書類
⑥事業所施設に関する書類
・建物の登記事項証明書(申請者が所有している場合のみ)
・建物の賃貸借又は使用貸借契約書(借りている場合のみ)
⑦手数料に関する書類
・手数料表(届出制手数料の届出をする場合のみ)
⑧相手先国に関する書類(国外にわたる職業紹介を行う場合のみ)
⑨取次機関に関する書類(国外にわたる職業紹介を行い、取次機関を利用する場合のみ)
取得までにかかる期間の目安
免許取得準備から手続きが完了するまでに必要な期間は、およそ3ヶ月が目安です。
ただし、許認可申請に不備があったり、要件を満たしていない場合には、手続きをやり直さなければならないケースがあります。
そこで人材紹介業を開業する際は、十分な時間的な余裕を持って取り組みましょう。また、開業をサポートしてくれる専門業者に委託するのも確実な方法としておすすめです。
有効期間について
人材紹介の事業許可証が交付されると、事業を開始できます。ただし、この人材紹介事業の許可には有効期間があります。
そこで、有効期間が経過する前に、更新申請を行う必要があります。有効期間を更新するまでの期間は、以下の通りです。
・新規許可を更新するまでの期間は、新規許可の日から起算して3年以内
・更新許可の場合は、更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年以内
上記の期間に注意して、余裕を持って更新手続きを行うことが重要です。
更新期間
人材紹介事業の許可更新については、有効期間が満了する30日前までに「職業紹介事業許可有効期間更新申請書(様式第1号)」及び「事業計画書(様式第2号)」を3部(正本1部、写し2部)と「所要の添付書類」を2部(正本1部、写し1部)作成し、事業主管轄労働局に提出します。
更新手数料について
許可手数料(更新)として申請書に収入印紙の添付が必要です。
許可更新手数料は、18,000円×事業所の数となっています。
取得にかかる手数料について
人材紹介業の免許取得・許認可申請時にかかる手数料は、登録免許税の90,000円と収入印紙の50,000円の合計14万円となります。
この費用には、消費税がかかりません(それぞれが税金であるため)。
まとめ
人材紹介事業を立ち上げる際の申請の仕方は地域によって異なりますが、通常は所轄の労働局に届け出を行うことになります。
また許可申請を行う際には、許認可申請費用や資産要件などを満たす必要がありますので、詳細を申請先に確認しておきましょう。
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