「スキルシート」とは、エンジニアなどのIT系職種といった特殊なスキルや資格が必要となる業種で、派遣先企業の要望に応じて提出する書類です。
スキルシートは、基本的に派遣会社の営業担当者の方が作成します。スキルシートの書き方によって、派遣先の採用担当者の目に留まりやすくなり、自社の派遣スタッフが採用される可能性を高めることが可能です。
ただし、スキルシートの書き方にはいくつかの決まりや注意点があり、ルールを知らずに記入すると、法律に違反してしまうケースもあります。
そこで今回は、ITエンジニアのスキルシートの効果的な書き方と注意点について徹底解説します。人材派遣会社の営業担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
スキルシートとは
スキルシートとは、求職者(派遣スタッフ)のこれまでの職務経歴や保有するスキルや資格などをA4用紙1枚程度にまとめた書類です。
スキルシートは、人材派遣会社の営業担当者の方が派遣先の企業からの要望に応じて、派遣スタッフを紹介する際に作成します。派遣先の採用担当者は、提供されたスキルシートの情報を元に、職場見学で来社した派遣スタッフにスキルなどを確認します。
スキルシートには決まったフォーマットがないため、人材派遣会社や派遣先の職種によって適切なテンプレートを選び、記載するのが一般的です。
スキルシートに記載する内容
スキルシートの記載内容は、派遣先の職種などによって異なります。
そこで以下では、基本的な記載内容を紹介します。
- これまでの経歴や職歴など(学歴や過去の勤務先の企業名は詳しく記載しない)
- 保有する資格など
- 派遣先の業務に合うスキル
- 人材派遣会社での登録番号(スタッフ番号) など
ここで注意しなければならないのが、派遣スタッフの氏名や住所、性別といった個人情報は、スキルシートに記載してはならないルールです。
なぜなら、人材派遣をする際は、派遣先の企業に派遣スタッフの個人情報を無断で提供することが法律で禁じられているからです。
しかし人材派遣会社によっては、スキルシートに派遣スタッフの氏名を記載したり、性別や年齢を記載しているケースも少なくありません。
また、派遣先から派遣スタッフの個人情報の提供を依頼されても、派遣スタッフの許可なしに開示することも法律違反となります。
もしこのルール違反が労働基準監督署などに報告された場合には、人材派遣会社に大きなペナルティが課せられる可能性があります。
派遣スタッフの個人情報については、厳重に取り扱うようにしましょう。
スキルシートを提出するタイミング
スキルシートは、派遣スタッフが派遣先の企業への紹介を承諾してから職場見学を実施するまでの間のタイミングで提出します。
職場見学は、派遣先の企業がスキルシートに書いた経歴を理解したうえで行うことになるため、しっかりと作成することで派遣先の企業と派遣スタッフの両方から信頼を得ることができるでしょう。
もし派遣先の企業が求める人材と、スキルシートに記載されたスキルに相違がある場合には、派遣先の採用担当者が派遣スタッフの変更を申し出る可能性があります。
そこで、派遣先の企業が求める人材をしっかりと精査して、マッチングの制度を高めることが重要です。
職場見学で派遣スタッフがスキルシートの内容を説明
スキルシートを派遣先の企業に提出した後に、派遣先の企業から採用を検討する連絡があれば、営業担当者が派遣スタッフとともに職場見学に伺います。
職場見学の際は、スキルシートに記載した内容について、派遣スタッフ自ら派遣先の企業に説明します。
スキルシートの内容を説明する際は、過去に勤務した企業名や、卒業した学校名などを詳しく話す必要はありません。
この時に派遣先の企業が、派遣スタッフに過去の会社名や学校名などの情報開示を強要することも法律違反です。
もし法律に違反するような質問等が派遣先の企業からあった場合には、人材派遣会社の担当者として毅然とした対応を心がけましょう。
ITエンジニアの採用に有利なスキルシートとは?
ITエンジニアの派遣においては、他の職種とは異なったスキルや資格があるため、派遣先の企業の特色を理解してスキルシートを作成することが大切です。
そこで以下では、ITエンジニアの採用に有利なスキルシートの書き方を紹介します。
これまで職務経験や保有資格がわかる
まずはこれまでの職務経験や、保有する資格を全て記載しましょう。
ITエンジニアの場合は、企業によって必要となるスキルや資格が異なるケースも多いため、事前に対象企業に必要なスキルなどを調べ、できるだけ具体的に記載することが大切です。
派遣先の企業に活かせる知識や経験が記載されている
ITエンジニアに限らず、人材派遣では、派遣先の企業に活かせる知識や経験のある派遣スタッフをマッチングすることが重要です。
そこで派遣先企業の採用担当者から、職場の現状や課題を聞き出し、自社の派遣スタッフによって課題を解決できるようなマッチングをすることが理想です。
そこで、派遣スタッフが持つ専門的な知識や経験を聞き出して、明確に記載しましょう。
習得しているスキルや資格がわかる
もし派遣先の企業に、具体的なスキルや資格の有無を問われた場合は、まずその回答を優先します。
その上で、それ以外のスキルや資格がある場合には、それもしっかりと記載します。
ただし、業務に全く関連しない趣味などの資格は記載しても意味がありませんので控えましょう。
経験してきたプロジェクトや役割が明記されている
派遣スタッフが保有するスキルや資格以外にも、これまで経験してきたプロジェクトの内容や役割、期間なども明記しましょう。
ITエンジニアの仕事は、スキルや資格だけではなく、経験値も重要な指標となります。
そこで派遣スタッフと相談しながら、できるだけ具体的に、派遣先に合わせた内容を記載することが大切です。
提出先の企業に合わせた自己PRが書かれている
スキルシートは、各派遣先の企業ごとに作成するのが基本です。そこで、営業担当者の方は、提出先の企業をしっかりと調査した上でスキルシートを作成しなければなりません。
派遣先の企業によって、採用したい人材のスキルや任せたい仕事の役割が異なるため、求められる人材をマッチングすることが大切です。
そして、派遣先の企業に合わせた的確な自己PRをすることで、採用が有利になるようなスキルシートを書くことを心がけましょう。
採用確率が上がるスキルシートの書き方
次に、自社の派遣スタッフの採用確率が上がるスキルシートの書き方を解説します。
採用企業が求める人材を理解する
人材派遣会社の営業担当の方は、派遣先の企業の業務内容を詳しく調べ、自社の派遣スタッフの中からピッタリ合いそうな人材を選んで紹介しなければなりません。
そこで、まずは派遣先の求人内容や業務を詳しく調査して、紹介する自社の派遣スタッフが断わられないようなスキルシートを作成した上でマッチングを行いましょう。
派遣先が求めるIT人材を理解した上で書く
派遣先の求人内容を調べる際は、ただ求人情報を見るだけではなく、その企業に必要な人材を見極めて派遣スタッフを選ぶようにしましょう。
特にIT企業では、それぞれの会社で扱う言語や必要なスキルが異なります。そこで、派遣先に営業する際は、できるだけ多くの情報を得られるように努めましょう。
そして、派遣先が求めるIT人材を理解したうえで、自社スタッフの適性をスキルシートに記載することが重要です。
派遣先の企業が採用したくなるように書く
スキルシートを書く際は、過去の経験や実績について、具体的な数値を交えて具体的に記載することが大切です。
そうすることで、派遣先の企業が採用したくなるスキルシートを作成できるでしょう。
良いスキルシートの例文
・前職では、インフラエンジニアのプロジェクトリーダーとして◯◯名のチームをまとめてきました。そのプロジェクト成功により、約△△△万円の収益をあげた実績があります。
上記のように、過去に大きな案件を任された経験がある場合は、スキルシートに具体的な実績と数値を明記することで派遣先の採用担当者に強いアピールが可能です。
そこで、明記できる実績はすべて記載しましょう。
ITエンジニアのスキルシートに記載すべき項目
それでは最後に、ITエンジニアのスキルシートに記載すべき項目について解説します。
経験してきた業務の内容
業務内容として、これまでに従事してきた業務の内容や取得したスキル、プロジェクトへの貢献度などを詳しく記載しましょう。
業務内容の記載については、新しく経験した業務から順に記載します。
開発環境
ITエンジニアの場合は、開発環境などの記載も必要です。
これまでに携わってきたデータベースやOS、言語やフレームワーク、ツールなどがあれば、その環境についてできるだけ詳しく記入します。
またプログラミング言語については、バージョンまで記載するのも大切です。
スキルシートを書く営業担当者の方が開発環境に詳しくない場合は、事前に派遣スタッフに詳細を確認してから作成しましょう。
役割
役割の項目では、過去に携わったプロジェクトの規模やチームの人数、担当した役割などを明記します。
スキルシートを提出することの多いSEやインフラ系エンジニアの場合は、携わった業務内容をできるだけ詳しく明記することが重要です。
期間
期間の項目には、企業に勤務した期間と共に、過去に従事したプロジェクトの開始年月日と終了年月日も記載します。
企業に勤めていた期間とは別に、プロジェクトのみの期間も記載するのがポイントです。
またスキルシートでは、履歴書とは異なり、新しい経歴から記載しましょう。
保有資格
資格の項目では、これまでに取得した全ての資格名を書きます。
どのような資格を保持しているかを、ひと目で分かるように正式名称で記載することが大切です。
また、現在取得を目指して勉強中の資格がある場合には「(資格名)の勉強中」と記載すると良いでしょう。経験が浅い方や取得資格が少ない方が応募する際に、採用担当者に積極性を訴える効果があります。
ただし業務に全く関係の無い、趣味で取得した資格(スポーツライセンス)などの記載は不要です。
得意分野・技術・業務
得意分野・技術・業務の項目では、これまでに経験した仕事の中で「得意な分野や技術」があった場合に記載しましょう。
記載する時は、どのような分野が得意で、経験やスキル、知識がどの程度あるのかも分かりやすく明記するのがポイントです。
自己PR
自己PRの項目では、上記で記載できなかった経験やスキル、これからの目標などを記入します。
自己PRでは、求職者の積極性や向上心などをポジティブにアピールすることが大切です。自社の派遣スタッフのやる気や情熱など、スキルや経験値以外のメリットを積極的に記載しましょう。
ITエンジニアのスキルシートの書き方のまとめ
このように、ITエンジニアのスキルシートを書く際は、一般的な業務よりも専門的な知識が必要となる場合がありまし、ITエンジニアに必要なスキルや資格については、IT関連の専門的な知識がないと間違った記載をする恐れがあります。
そこでITエンジニアのスキルシートを作成する時は、IT関連の専門的な知識のある方に確認しながら書くことが重要です。また、派遣スタッフ本人にも必ず確認が必要です。
スキルシートの書き方によって、派遣スタッフの採用確率が大きく変わるため、上記のポイントを押さえたうえで作成にあたりましょう。