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人材派遣業界の今後|展望と課題、事業拡大と多角化が必要な理由を解説

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人材派遣業界の今後については、業界を分析する視点の違いから「まだまだ伸びる」という意見がある一方で、「衰退する」という真逆の見解もあります。

「まだまだ伸びる」と考えられている理由は、人材不足が今後ますます顕著になる可能性が高いからです。一方「衰退する」と考えられる理由は、人材派遣業界の利益率が低いことが原因となっています。

今回は、人材派遣業界の今後について、コロナ禍や法律関係の改正による影響から、課題や展望を考察します。現在人材派遣業に従事している方はもちろん、これから参入をお考えの方も、ぜひ参考にしてください。

人材派遣業界の歴史や現状と動向

日本における人材派遣業は、約60年ほど前からスタートし、以下のような変遷を辿っています。

1960年代日本国内で、米国のマンパワーグループが最初に人材派遣会社を設立する
1986年労働者派遣法が施行され、派遣できる業務種類を13種類に限定
1999年人材派遣業務が原則自由化される
2012年労働者派遣法が改正され、日雇い労働が原則として禁止される
2013年労働契約法が改正され、5年以上勤務すると原則無期雇用に転換しなければならないことが規定される
2015年労働者派遣法が改正され、同一の派遣先への派遣期間が3年に制限される
2020年改正労働者派遣法が施行され、同一労働同一賃金が義務化される

2021年の人材業界全体の市場規模は約7兆128億円となっており、この9割近くが人材派遣業の売上です。この人材業界の市場規模は、国内の広告業界の売上高に匹敵するところまで増加しています。

派遣労働者の人口も2020年までは右肩上がりに増えて140万人に迫る勢いでしたが、2021年には新型コロナウイルスの感染拡大の影響で若干減少し、130万人ほどとなりました。

コロナ禍による影響

2020年頃から、世界経済に深刻なダメージを与えた新型コロナウイルスの感染拡大ですが、人材派遣業への影響も少なくありません。

ただ新型コロナウイルスの感染拡大による一時的なマイナス要因があったとしても、今後の景気の回復に伴い、人材派遣業の市場規模が回復すると予測できます。その理由は、今後の日本国内において、人手不足がより深刻化することが明らかとなっているからです。

人手不足による人材派遣業の拡大

日本国内では少子高齢化による労働人口の現象が懸念されており、政府が主導する働き方改革も相まって、企業の人手不足に歯止めがかかりません。そこで、同一労働同一賃金などの制度をまとめ、派遣労働者でも雇用条件が悪くなるリスクを減らしながら働けるようになりました。

そのため今後の労働者不足に対応するために、日本人だけでなく、外国人労働者の派遣雇用も増加すると考えられています。

労働法改正による派遣会社の課題

人材派遣の年表でも示した通り、2015年の改正法により有期雇用の派遣期間が最長3年に制限されました。これにより、2019年9月以降に3年以上継続して同じ派遣先で就労する社員は、期間制限のない無期雇用への切換えが派遣会社に課せられるようになりました。

大手派遣会社にとっては、この雇用期間の無期化は大きなチャンスとなります。なぜなら、雇用先が決まるまでの待機期間中にも労働費等が発生するものの、多くの人材が必要となる派遣会社では、優秀な人材を確保し続けるほうが重要だからです。

ただ中小の派遣会社では、このようなケースに余剰人員を雇用し続ける余裕がない企業も少なくありません。そこで、中小の派遣会社であぶれた優秀な人材を、大手派遣会社が確保するチャンスとなっているのです。

また、2020年4月の改正法においては「同一労働同一賃金」の制度が義務化されました。これにより不安定な雇用状況にある派遣社員が派遣先の正社員と同じ待遇を受けられるようになり、雇用待遇が均質化されます。

外国人労働者と派遣会社の役割

国内の労働人口の減少により、外国人労働者の受け入れ条件が緩和されていることも、人材派遣業界の需要が高まっている要因の1つと言えます。

2019年4月には、外国人労働者の受け入れ緩和を目的とした「特定技能」が施行されました。これにより、禁止されていた一部の職種において、外国人労働者の受け入れと派遣が可能となりました。

今後は、更なる受け入れの緩和措置による外国人派遣労働者の拡大が見込まれています。そこで人材派遣企業は、日本国内で就業先を探す外国人を積極的に雇用・教育し、外国人労働者を雇用したい企業へ労働力を提供することが求められています。

近年は、国内の企業でも、人材が慢性的に不足している状況です。飲食業界や建設業界、小売業など多くの業界で人手不足が深刻化しているため、一部の人材派遣会社ではAIを活用したマッチングを行うなどの自動化も進んでいます。

今後の日本国内では、少子高齢化による労働者人口の減少に伴い、若年層の労働者が圧倒的に足りなくなり、さまざまなマーケットの規模が縮小する可能性があります。そこで、人材派遣会社が積極的に外国人労働者を獲得し、国内の労働力不足を解消することも重要な役割の1つとなるでしょう。

人材派遣業界の展望

近年の人材市場では、人手が不足している企業と、余剰人員のいる企業がはっきりと分かれている特徴があります。そのため人材派遣業界では、人員過多となっている業界から、人手不足の業界へ、できるだけスムーズに労働力を移動させることが重要です。

ただ、新しい職場でのスキルや知識がない状態で、就労する業界を変えることは容易ではありません。そこで重要となるのが、労働力の移行を少しでもスムーズにするための職業訓練や教育制度です。

人材派遣会社は、派遣スタッフが人手不足となっている業界でスムーズに働けるように、最低限必要となるスキルや専門知識を事前に身につけられるカリキュラムを用意しましょう。そうすることで、より質の高い人材の育成を、効果的に行うことができます。

人材派遣業界の課題

それでは最後に、人材派遣業界の課題と解決法を解説します。

利益率が高くない

人材派遣業界には「利益率が低い」という大きな課題があります。そこで人材派遣業界では、企業の業績を分析する際に、売上だけでなく「利益率」もしっかりと確認しなければなりません。

一般的な人材派遣業界では、マージン率が派遣労働者の給与の約30%程度が相場です。しかし人材派遣会社では、マージンとして徴収した売上の中から、派遣スタッフの社会保険や福利厚生費用を支払い、自社の社員の給与や施設の管理費などの諸経費も支払わなければなりません。

特にコロナ禍や世界的な不安定がみられる2022年現在では、人件費や販売管理費などのさまざまなコストが上昇していることもあり、人材派遣会社の収益性が低下傾向にあります。

正社員との待遇差を埋める同一労働同一賃金

同一労働同一賃金とは、労働者の雇用形態に関わらず「同じ職場で同じ業務をしている労働者に対しては、不合理な待遇差を設けることを禁止する」という法律です。この禁止される待遇差には、賃金はもちろん、福利厚生なども含まれます。

同一労働同一賃金については、2020年に働き方改革関連法の一環として、大企業を対象に制度がスタートし、順次中小企業でも対応が進められています。

ただ、同一労働同一賃金については、派遣労働者の待遇改善に繋がる一方で、派遣先の企業にとっては人件費が上昇するのみでメリットがありません。このことから、一部の業界では派遣社員を採用せず、正社員を増やす企業も見られます。

事業拡大と多角化と効率化

人材派遣会社が、今後も継続して事業を展開するためには、事業の多角化や構造を見直すといった抜本的な改革が必要です。人材派遣会社はもともと利益率の高い業種ではなく、ほとんどの企業が利益率が1桁の状況で運営しています。

そこで、事務所を狭くしたり、賃料の安いエリアに移転するなどの工夫も大切になります。

また持続的な経営を行うためには、事業を多角化することも重要です。最近では「特定技能」人材の紹介を行うことができるように、紹介業も同時に運営する企業も増えています。人材紹介では、人材管理のコスト等を大幅に削減できるため、利益率が高い傾向にあります。このように、人材派遣業界だけでなく、積極的に他の事業に展開の幅を広げることで、営業利益の改善を目指すことも大切です。

事業のM&A

近年様々な業界で増加しているのがM&A(企業の合併や買収)です。M&Aによる企業の合併や買収は、人材派遣業界でも活発に行われており、今後更に増加すると見込まれています。

なぜならM&Aを行うことで、人材派遣業界における事業の拡大や効率化を図ることができるからです。実際に、M&Aを積極的に行おうとする人材派遣会社の経営者も増えています。

近年は、人材派遣業でもスタッフ教育やスキル向上のためのカリキュラムを用意することが求められています。このような投資においては、M&Aによる企業規模の拡大が、経費の削減に効果的です。また、自社にないリソースを獲得するために、ITスキルの高い企業や人材のいる企業にM&Aを仕掛けるケースもあります。

人材派遣業界の今後の展望のまとめ

以上のように、人材派遣会社の今後の展望として、人材の需要はまだまだ伸びると考えられます。しかし、需要が伸びたからと言って、必ずしも利益が確保できるとは限らないのも事実です。さまざまな法律や制度の施行により、人材派遣会社には大きな経費の負担が強いられています。

そこで、本記事で示したように、事業の多角化や効率化、さらにM&Aなど、大きな改革が必要となるケースもあります。自社の状況をしっかりと把握し、現状に合わせた施策を行うことが重要となるでしょう。

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