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特定技能における介護とは?受入れ方法や試験内容、注意点を詳しく解説!

日本国内で労働人口が減少し人手不足が深刻化する中、外国人労働者の受入れを推進するため、2019年4月に「特定技能」という在留資格が設立されました。

この在留資格は、とくに人手不足が深刻で、なおかつ即戦力として外国人が活躍できる14の産業分野において実施されています。

今回ご紹介する「介護分野」もその14分野の1つとなっていますが、この特定技能を有する外国人の受入れにはクリアすべき要件があるため、受け入れるための知識や経験が必要です。

また特定技能で派遣業務が許されている業種は「農業」と「漁業」のみとなっているため、それ以外の業種では人材紹介でのマッチングとなります。

この記事では、人材派遣会社が介護分野の特定技能外国人を紹介するための要件や注意点について徹底解説いたします。

これから外国人の受け入れを積極的に実施する人材派遣会社の経営や営業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

特定技能における「介護」とは?

特定技能とは、日本国内でとくに人手不足が問題となっている産業分野において、一定の知識や技能を有する外国人労働者を受け入れるために設立された在留資格です。2022年3月現在、特定技能は14の産業分野において導入されています。

また、特定技能には1号と2号の2種類があります。1号と2号の違いは、原則として1号よりも2号の方が高度な技術や経験が必要となる職種によって区別されています。

特定技能2号は、現在のところ建設業分野と造船舶用業分野でしか認められていないのが現状です。今回解説する「介護分野」では「特定技能1号」の1種類のみとなっています。

「介護」における特定技能は、1年、6ヶ月または4ヶ月ごとに更新を行いながら、通算5年まで日本に留まって就労が可能となります。

各事業所の特定技能外国人の受け入れ上限

「介護」に従事する特定技能外国人は、各事業所において、日本人の常勤職員数よりも多く受け入れることはできません。介護施設を運営する際は、特定技能外国人よりも日本人スタッフが多いことを前提としています。

介護職で対応できる特定技能業務は制限が少ない

「介護」に従事する特定技能外国人は、対応可能な業務の幅が広く、また制限も少ないのが特徴です。具体的には、入浴、食事、排せつ、整容・衣服着脱、移動などの身体介護のほか、通常日本人スタッフが行う、レクリエーションの実施や機能訓練の補助、掲示物の管理などもできます。さらに、技能実習生には許可されていない一人での夜勤も可能です。

ただ、訪問系のサービスには従事できないため注意しましょう。

特定技能における介護職の試験とは?

特定技能の「介護」に従事するためには、介護業務に関する「介護技能評価試験」と「日本語能力試験(2種類)」に合格する必要があります。「介護技能評価試験」と「日本語能力試験」はともに筆記試験で行われ、実技試験はありません。

日本語能力試験の2種類については「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することに加え「介護日本語評価試験」に合格することが必須となります。またこれらの試験は、CBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)で行われ、指示文がそれぞれの現地語、問題文は日本語で出題されます。試験の水準は、介護の声掛けや文書、介護業務に従事するにあたって支障のないレベルの日本語となっています。

また介護分野の技能実習を3年間良好に修了した者や、介護福祉士養成施設を修了している者については、試験が免除されます。

介護ができる他の在留資格とその違い

外国人を介護職員として雇用したい場合には、特定技能「介護」以外に3つの在留資格があります。以下では、特定技能「介護」以外の3つの在留資格について解説します。

在留資格における介護

2017年9月にスタートした在留資格における「介護」では、介護福祉士養成学校を卒業し「介護福祉士」の国家試験に合格することが条件となっています。在留期間の上限は設定されておらず、更新を行うことで、原則として永続的に日本で就労できる資格です。

在留資格における「介護」では、業務内容に制限がなく、訪問系のサービスにも従事できます。

ただ「介護福祉士」の国家試験に合格するためには、日本語能力が高くなければ国家試験に合格できないため、受験者数、合格者数ともに少ないのが現状で、採用も難しいでしょう。また介護福祉士養成学校に外国人を就学させる場合は、採用する企業が費用を出すことが多く、人材派遣会社で雇用するケースも多くはありません。

特定活動EPA

特定活動EPAとは、EPA(経済連携協定)に基づく在留資格のことです。人材を送り出す国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3国に限定され、人数も多くはありません。

この制度については、上記3国との国家間の経済的な連携強化と「介護福祉士」の国家資格取得を目的とした制度となっています。そのため、一定の期間内に資格を取得できない場合は帰国しなければなりません。ただ、資格取得後は制限なく更新可能で、日本国内で永続的に就労可能となります。

特定活動EPAとして従事できる業務には「介護保険3施設、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイ」があります。また「介護福祉士」の国家資格取得後は、一定の条件を満たした事業所の訪問系サービスも可能となります。

特定活動EPAでは「介護福祉士」の資格を取得後も、特定技能の場合と同じく訪問系サービスに制限がかかります。

技能実習における介護

技能実習「介護」は、日本から相手国への技能移転(国際貢献)を目的とした在留資格で、他の在留資格と異なります。そのため、技能実習「介護」では学歴や資格などの要件は基本的にありません。

1年目は「技能実習1号」、2~3年目は「技能実習2号」、4~5年目は「技能実習3号」と区分され、最長5年の滞在が可能となります。技能実習「介護」においても、訪問系サービスはできません。

技能実習「介護」における外国人は人数が多く、制度としてもかなり成熟しているため、最も採用しやすい在留資格と言えます。ただ育成を開始する時点では全く介護経験がないため、業務に慣れるまでに時間を要するでしょう。

期限付きの特定技能から無期限の在留資格へ移行する方法

特定技能「介護」では在留期間の上限が5年しかないため、期間終了後に帰国するケースを除き、多くの外国人が更新制限のない在留資格「介護」への移行するのが通例となっています。

特定技能から在留資格へ移行する方法

特定技能「介護」から在留資格「介護」へ移行するには、特定技能で働ける5年の間に「介護福祉士資格」を取得する方法があります。

介護福祉士試験の受験資格は「実務経験3年」のため、3年間の実務経験及び試験までの日数や登録にかかる日数などを含め、在留資格「介護」に移行するまでは4~5年程度の期間が必要となるでしょう。

技能実習から特定技能を経て在留資格へ移行する方法

また、技能実習から特定技能を経て在留資格へ移行する方法もあります。技能実習2号を良好に修了(3年間)して、特定技能に移行後、介護福祉士資格を取得することで在留資格「介護」に移行できます。

技能実習2号(3年間)を良好に修了し、特定技能に移行後、介護福祉士資格を取得することで在留資格「介護」に移行できます。ただこのケースでは特定技能「介護」の在留期間の上限である5年のうち3年間を技能自習で使い、残り2年しか期間がないため、移行後できるだけ早く介護福祉士資格を取得しなければなりません。

特定技能における「介護」の現状

ここでは、特定技能「介護」における国内外での試験の実施状況や、とくに来日する労働者が多いフィリピン独自のルールについて解説します。

国内の特定技能における「介護」の試験について

特定技能における「介護」の試験については、日本国内でも試験が実施されています。試験会場は、日本の各都道府県にあるプロメトリック試験会場で、CTB形式でほぼ毎日試験日程が設定されています。ただ地域によっては土日祝日に試験が組まれていないケースや、平日でも受験できないことがあります。特定技能試験の実施回数については「介護」が国内最多です。

海外の特定技能における「介護」の試験について

特定技能における「介護」の試験は、日本国内だけでなく海外でも実施されています。

2021年7月時点では、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、フィリピン、タイで開催されています。

また他の海外試験地と比較してフィリピンでは受験の機会、合格者数ともに群を抜いて多くなっているのが特徴です。

これは、フィリピンに独自の受け入れルールがあるためで、試験の実施回数、受験者数も日本国内よりも多く、人材が常に安定供給されています。ただ独自ルールが多く、人材を募集する際は、対応可能なエージェントに依頼するのが賢明です。

フィリピンの独自ルールについて

フィリピンの独自ルールには、雇用契約書の事前チェックとガイドラインがあります。

フィリピンには、海外で働く人の権利を守るための海外雇用庁(POEA)があります。その海外出先機関がPOLOと呼ばれる海外出先機関です。

フィリピン人が特定技能外国人として日本で働く場合、POEAが日本での雇用契約などを事前にチェックします。

また日本政府とフィリピン政府の間には、二国間協定を締結しており、この二国間協定に基づいてフィリピン労働雇用省(DOLE)が「特定技能の在留資格における日本への労働者の送出しに関するガイドライン」を制定しています。

この「特定技能の在留資格における日本への労働者の送出しに関するガイドライン」では以下の内容を記しています。

  • 送出機関名の公表と海外雇用証明書(OEC)の発行条件及び手続きについて
  • 労働者からの費用徴収等について(日本への送り出しに関して手数料を徴収してはならない)
  • 所定の手続きを経れば送出機関を介さずに受入機関が直接労働者を雇用可能(日本の受入機関が、5人以下の労働者を雇用する場合に限る)
  • 受入機関と送り出し機関との契約数に制限を設ける

以上を踏まえ、フィリピンの特定技能外国人を受け入れる際は、上記の独自のルールがあることを確認する必要があります。

特定技能「介護」のまとめ

このように特定技能という在留資格は創設されて間もないため、今後増々人数が増えていくことでしょう。それは、現在の在留資格である「介護」や「EPA」については、学歴や資格取得などのハードルが高いからです。

実際には、特定技能の「介護」以外でも介護職に就くことは可能ですが、受け入れる企業側としては採用から管理、教育コストなどを考慮すると、特定技能における「介護」が最も外国人労働者を受け入れやすいと言えるでしょう。

他の在留資格と比較しても、特定技能は人材を確保しやすく、制度的に利用しやすい特徴があります。しかも業務範囲が広く、特定技能における「介護」は国内でも需要の多い職種として期待されています。人材派遣会社としても、今後は特定技能における外国人労働者の受け入れや紹介業の立ち上げを検討してはいかがでしょうか。

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