近年、深刻化する人手不足。人材派遣業界では今後の外国人労働者の採用増を見越し、特定技能人材の採用枠の拡充や受け入れ体制の構築、マッチングに向けた準備をすることが新トレンドとなりつつあります。尚、特定技能で派遣業務が許されている業種は「農業」と「漁業」のみとなっているため、それ以外の業種では人材紹介でのマッチングしかできません。
今回は、まず特定技能の14職種について詳しく解説し、特定技能人材の雇用形態などについて解説します。
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特定技能とは?
特定技能とは、日本国内で人材不足が懸念される14種の産業分野において、外国人の労働者を確保するためにできた在留資格(ビザ)のことです。これまで日本国内で外国人が就労する際には、技能実習生や外国人留学生が実質的な労働力となっていました。しかし技能実習生や留学生の本来の目的は、日本で学び習得した知識や経験を本国に持ち帰り活躍することです。そこで日本国内の特定産業の深刻な人手不足を解消するために、新しく制定されたのが特定技能です。特定技能は2018年12月8日に成立し、2019年4月1日より施行されています。
特定技能では業種によって従事できる職種が決まっており、同じ施設内であっても違う業務を兼務することができません。一例を挙げるとホテルの「外食業」で働く特定技能外国人労働者が、手が空いたからと言って「宿泊業」のフロントやその他の業務をしてはいけないというルールがあります。また、特定技能には単純労働が多く、在留期間の上限が通算で5年と定められています。ただし、一部の業種に関しては在留資格の更新制限がなくなる、いわゆる永住権取得に至るものもあります。
在留資格の特定技能1号と2号について
特定技能は、在留資格「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分けられています。2022年3月現在、日本国内に在留するほとんどの外国人労働者が特定技能1号であるため、一般的に特定技能が指す種別は特定技能1号の場合がほとんどです。
特定技能1号とは、特定の産業分野において「相当程度の知識と経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」となっており、ある程度のコミュニケーション能力と知識があれば取得できる内容となっています。
しかし特定技能2号については、特定産業分野において「熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格」であり、コミュニケーション能力や知識はもちろん、高度な技能が求められるのが特徴で、現在のところ建設業分野と造船舶用業分野でしか認められていないのが現状です。
これらの資格によって、それぞれ日本国内に在留できる期間も定められています。
特定技能1号の場合は、4か月・6ヶ月・1年毎の更新が必要で、通算の在留上限が5年です。特定技能2号の場合は、6ヶ月・1年・3年毎の更新で、更新を続けることで将来的に「永住ビザ」の申請も可能となります。また特定技能2号の場合は、家族の帯同も認められています。
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特定技能の14職種と雇用形態や業務内容について
ここでは、特定技能の14職種について、雇用形態と従事できる業務を解説します。
特定技能14業種(産業分野)と従事する業務の一覧
特定技能の14職種は以下のように分類されており、それぞれを所轄する行政機関や雇用形態、従事できる業務内容などが決められています。必ずこのルールを遵守するように、注意してください。
介護
所轄する行政機関:厚生労働省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴・食事・排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)
注意点:訪問系のサービスは対象外となっており、従事できません。
<ビルクリーニング
所轄する行政機関:厚生労働省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:建築物内部の清掃
素形材産業
所轄する行政機関:経済産業省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:鋳造・金属プレス加工・仕上げ・溶接・鍛造・工場板金・機械検査・ダイカスト・めっき・機械保全・機械加工・アルミニウム陽極酸化処理・塗装
産業機械製造業
所轄する行政機関:経済産業省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:鋳造・塗装・仕上げ・電気機器組立て・溶接・鍛造・鉄工・機械検査・プリント配線板製造・工業包装・ダイカスト・工場板金・機械保全・プラスチック成形・機械加工・めっき・電子機器組立て・金属プレス加工
電気・電子情報関連産業
所轄する行政機関:経済産業省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:機械加工・仕上げ・プリント配線板製造・工業包装・金属プレス加工・機械保全・プラスチック成形・工場板金・電子機器組立て・塗装・めっき・電気機器組立て・溶接
建設業
所轄する行政機関:国土交通省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:型枠施工・土工・内装仕上げ/表装・左官・屋根ふき・コンクリート圧送・電気通信・トンネル推進工・鉄筋施工・建設機械施工・鉄筋継手
造船・舶用業
所轄する行政機関:国土交通省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:溶接 ・仕上げ・塗装 ・機械加工・鉄工・電気機器組立て
自動車整備業
所轄する行政機関:国土交通省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:自動車の日常点検整備、定期点検整備、分解整備
航空業
所轄する行政機関:国土交通省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)
宿泊業
所轄する行政機関:国土交通省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:フロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供
農業
所轄する行政機関:農林水産省
雇用形態:直接雇用・派遣雇用
従事可能な業務の内容:耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)
漁業
所轄する行政機関:農林水産省
雇用形態:直接雇用・派遣雇用
従事可能な業務の内容:漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理・収獲(穫)・処理、安全 衛生の確保等)
飲食料品製造業
所轄する行政機関:農林水産省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生)
外食業
所轄する行政機関:農林水産省
雇用形態:直接雇用
従事可能な業務の内容:外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理)
特定技能の試験について
通常は技能試験と日本語能力試験に合格する必要がありますが、それぞれの業種で一定の要件を満たしていれば免除される場合があります。
詳しくは出入国在留管理庁の「試験関係のページ」でご確認ください。
特定技能のマッチングについて
特定技能制度では、監理団体や送出機関は設けられていません。そのため、受入れ機関が直接採用活動を行うか、または国内外の職業紹介機関を活用して採用活動を行うことになります。国内での募集であればハローワーク等を通じて採用することも可能となっています。
また、採用する特定技能外国人の国籍によっては、当該国の法律等によって所定の手続きが求められるケースがあるため、詳細については直接各国の駐日大使館に問い合わせると良いでしょう。また、特定技能で派遣業務が許されている業種は「農業」と「漁業」の2つとなっているため、それ以外の業種では人材紹介で仲介することとなります。
特定技能人材の支援計画と登録支援機関について
外国人労働者の受入機関(就労先の企業や事業者)は、1号特定技能外国人に対し「特定技能1号」に定められた活動を安定的かつ円滑に行えるように支援しなければなりません。この支援は、仕事だけではなく、プライベートにおいても日本の生活になじめるようにするためのものです。このような生活全般のサポートの計画を「支援計画」と呼び、自社で個別に対応できない場合は、外部へ委託することも可能です。この委託先を「登録支援機関」と呼びます。
尚、登録支援機関については、出入国在留管理庁「登録支援機関登録簿」からご確認ください。
協議会について
協議会とは、特定技能制度の適切な運用を図るために、特定産業分野ごとの所管省庁が設置するものです。協議会では、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるように、制度や法令順守を周知徹底し、地域ごとの人手不足に対し必要となる対応をしています。また特定技能外国人を受け入れるすべての機関は、これらの協議会の構成要員となる必要があります。
特定技能14職種の雇用形態と業務内容のまとめ
現代の日本では国内の少子高齢化にともない労働者不足が深刻化しているため、特定技能は今後ますます増加すると考えられます。しかし、現状では特定技能外国人の派遣契約は「農業」と「漁業」に限られているため、人材派遣会社が仲介できる範囲が限られています。
そこで、今後ますます人材不足が懸念される農業や漁業分野への人材派遣の進出と特定技能外国人の受け入れ拡大、また人材派遣と人材紹介業務を兼業するかについて、議論してみてはいかがでしょうか。