お役立ちノート 法律解説

派遣雇止めとは?法を理解し事前準備でトラブル回避する方法を解説!

。雇止めと聞くと、派遣労働者を不法に解雇するといったイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

しかしこの「雇止め」は、厳密に言うと違法ではありません。ただし、派遣元や派遣先の会社が派遣労働者の契約内容を把握せず、何の説明もないままで契約更新の拒否などを行った場合には、当該派遣労働者から「地位確認請求」や「損害賠償請求」などの訴訟を起こされる恐れがあります。

そこで今回は、派遣労働者の雇止めについての法を理解し、事前準備を行うことでトラブル回避するための方法を徹底解説致します。

人材派遣業に従事する方は、ぜひ参考にしてください。

雇止めとは

雇止めとは、派遣元や派遣先の会社が有期労働契約を結んでいる労働者に対し、契約期間の満了をもってそれ以降の更新を拒否することを言います。

本来、労働契約更新の決定権は使用者と労働者の双方にあり、契約期間に定めがある場合でも、契約の更新をするか否かを使用者が一方的に決定することはできません。そのため、労働者が契約更新されるものと思っている中で、雇用契約の更新を予告なく拒否した場合には、違法な雇止めとみなされる恐れがあります。

そこで、まずは派遣労働者における契約期間や雇止めの定義、ルールを詳しく解説します。

派遣の契約期間

派遣会社は2021年に改正された「改正労働者派遣法」に則って派遣事業を行う義務があります。ただし、この法律は年度によって改正されることがあるため、常に最新の改正法に従うよう、注意が必要です。

3年ルールとは

3年ルールとは「派遣会社を通して派遣された人材が原則として同じ職場で3年以上働くことができない」という規則です。

そこで派遣社員は、この「3年ルール」に従って働く必要があります。

なお、3年間同じ職場で働くことができないのは、以下の3つの理由があるからです。

  • 長期間に渡る派遣は派遣先の労働者の安定した雇用を侵害する恐れがあるため
  • 長期間の派遣契約では、派遣契約の範囲を超えた業務を任される恐れがあるため
  • 同一労働同一賃金のルールに侵害する恐れがあるため

上記の理由により、2015年の法改正以降は派遣社員として同じ派遣先の同じ部署について働けるのは最大で3年までとなりました。

ただし、3年ルールには例外があります。以下の項目を満たす場合に限り、3年以上派遣社員として雇用を続けることが可能となります。

  • 派遣元事業主(派遣会社)に無期雇用される派遣労働者を派遣する場合
  • 60 歳以上の派遣労働者を派遣する場合
  • 終期が明確な有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合
  • 日数限定業務(1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下かつ 10 日以下であるもの)に派遣労働者を派遣する場合
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務に派遣労働者を派遣する場合

上記に該当せずに3年以上同じ職場で派遣社員として働いている場合は、労働局から警告通知が届き、最悪の場合、派遣会社に行政指導や罰金が科される恐れがあります。

派遣の雇止め

派遣社員が派遣元と有期の雇用契約を結んでいる場合、派遣元から契約期間満了時に契約更新を拒絶されたり、有期契約期間中の解雇について「雇止め」とみなされる可能性があります。

派遣労働者の場合は、原則3年を越えて同じ派遣先で勤務ができません。3年を超えて働くには、派遣先の企業から直接雇用されるか、派遣元企業から無期雇用を受ける必要があります。

また派遣元の企業には、派遣労働者が契約期間満了後に他社で働けるよう、新たな派遣先を紹介したり、派遣先が見つからない場合に、給料や休業に対する補償義務が発生したりします。

尚、派遣労働者からの更新拒否は雇止めには該当しないことも確認しておきましょう。

雇止めは違法ではない?雇止めが問題視される理由

雇止めの問題となる「有期労働契約」については、あらかじめ雇用する期間を定め労働契約を結びます。従って、使用者が契約期間の満了を持って更新を拒否することに違法性はありません。

ここでは、違法ではない雇止めや派遣切りに対する非難や争いが、なぜ起きるかを解説します。

雇止めが問題化する理由は「労働契約法第19条」が原因?

雇止めが問題化する理由には、労働契約法第19条が大きく関係していると考えられます。それは労働契約法第19条において、労働者の地位を守る目的から、雇止め(契約更新の拒否)に対する制限をしているからです。

労働契約法第19条では「有期労働契約が反復継続的に行われたことによって、実質的に無期労働契約と同視できるとき」もしくは「有期労働契約者が契約の更新がなされると思う合理的な理由があるとき」に関し、契約更新の拒否を制限しています。

これは「有期労働契約を複数回更新した過去がある労働者」や「契約更新されると思い込んでいる労働者」に、契約更新をしない場合には、違法な雇止めと解釈される可能性があるということです。

実際に違法かどうかは、過去の判例によって判断されます。ただし、雇止めに違法性がないとは言え「労働者が契約を更新されるであろう」と勘違いしているケースでは、契約に関するトラブルが起きるリスクが高い可能性があります。

厚生労働省発表の「令和2年有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)」※によると、調査対象となった事業所のうちの10.7%が雇止めを行ったことがあると回答しています。

ただし雇止めの理由はさまざまで、派遣労働者の勤務態度の不良も理由の1つとなっています。雇止めが違法と判断されないためにも、次に解説する「雇止め法理」についても理解が必要です。

※調査対象数 11,473件 有効回答数5,662件

※令和2年4月1日現在(一部の項目については、調査時点から過去3年間までの実績)について、令和2年7月1日から7月29日の期間に調査

雇止め法理

現在は、雇止めが認められるケースに対し、過去の判例を基準にした「一定のルール」が設けられています。このルールを「雇止め法理」と呼び、労働契約法の改正によって法定化されました。

この法定化されたものが、先ほど解説した「労働契約法第19条」です。この法令により、雇止めが無効と判断されるかどうかの基準が明確となりました。

労働契約法19条では、下記の2つの条件にあてはまる場合に「雇止め法理」が適用され、雇止めを無効とします。

  • 過去に反復更新された有期雇用契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
  • 労働者において、有期雇用契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

上記のいずれかにあてはまる場合は、雇止めが認められないケースがあるため注意が必要です。

この2つの条件において、雇止めが認められるためには、労働者に対し「職務怠慢や素行不良、能力不足(厳格な審査の上で判断できる能力不足)、経営不振」などを説明できる根拠が必要です。また、複数回の契約更新があった労働者に対しての雇止めも無効となるケースが多く見られます。

もしも雇止めが無効となる可能性があり、労働者が「地位確認請求」や「損害賠償請求」を派遣元企業に求めた場合、企業のブランドイメージに悪影響がある可能性があるため注意しなければなりません。

雇止めに際して派遣会社が行うこと

もし派遣元企業において雇止めを行うのであれば、事前に準備することで派遣労働者や派遣先とのトラブル回避に備えることができます。

以下では、派遣会社が雇止めに際して準備すべき3つのポイントを紹介します。

スタッフへの説明

派遣会社が、派遣労働者との雇止めによるトラブルを回避するためには、まず労働者の理解を得ることが前提となります。それは、派遣会社に合理的な理由があって雇止めを実施しても、派遣労働者が納得できなければトラブルとなる可能性があるからです。

仮に訴訟問題となり、判決で雇止めが有効となった場合でも、裁判にかかった労力や傷ついたブランドイメージが元に戻るとは限りません。このようなトラブルが起きないように、派遣会社が雇止めを行う際には、事前の準備が必要なのです。

そこで派遣労働者へ雇止めを実施する前には、以下の3点について確認しておくと良いでしょう。

  • できるだけ早く、最低でも1ヶ月以上前に契約更新をしない旨を伝える
  • 派遣労働者と、必要に応じて示談交渉を行う
  • 雇止めの理由を説明し、理解してもらうように努める

また、派遣先の企業が30日を切った状況で雇止めを通達してきた場合は、派遣元は毅然とした態度で受付けできないことを伝えましょう。

不要なトラブルを招かないためにも、上記の準備を徹底することが重要です。

雇用契約内容の確認

雇止めを行う前に、まずは派遣労働者の雇用内容を確認しましょう。

原則として、派遣労働者の契約期間内に契約解除ができないのはもちろん、契約期間が満了しても、契約内容によっては雇止めが認められないことがあります。

特に日常的な業務のために派遣労働者を雇用し、過去に雇止めをした前例がない場合は、雇止めが無効と判断をされる可能性が高くなります。雇用契約を十分に確認した上で、雇止めを行うようにしましょう。

雇止めの理由と経緯の合理性

雇止めをする場合は、その理由が「雇止め法理」に則しているかを十分に確認してから行います。そして、雇止めをする合理的な理由(職務怠慢・素行不良、能力不足、経営不振)がある場合は、その理由を労働者に伝え、理解を得た上で雇止めを行いましょう。

また、本来であれば雇止めをしなくてもよい派遣労働者(勤務不良や能力不足でない)の場合は、契約を更新する方法がないかを探すことも重要です。

まとめ

このように、雇止めそのものは違法でないものの、派遣労働者の期待に反した雇止めの場合は、トラブルに発展する可能性があります。派遣会社としては、派遣先の企業と派遣労働者の間に立つ難しい立場に立たされるため、客観的かつ毅然とした対応を行うことで、可能な限りトラブルの回避に努めなければなりません。トラブルにより双方の信頼を損なうことで、事業に悪影響を及ぼす可能性があるため、派遣労働者の契約終了時期などを踏まえ、適切なタイミングでアクションを起こすようにしましょう。

マッチングッドでは、派遣労働者の契約更新に際してのアラート機能が備えられており、トラブルの原因となる各派遣労働者への対応もれを防ぐことができます。ご関心がある方は、ぜひお問い合わせください。

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