労働者派遣事業関係業務取扱要領とは、厚生労働省のホームページにて閲覧することができる資料です。
この資料には派遣事業にまつわる法律や手続きについての概要などが記載されているため、人材派遣の業務で課題や問題がある時に非常に参考となります。
ただし、労働者派遣事業関係業務取扱要領は約400ページにわたる量の多い資料であるため、その概要を把握していないと課題に対する項目を見つけるまでに時間がかかり過ぎる難点があります。
そこで今回は、労働者派遣事業関係業務取扱要領に関する各項目の概要を紹介し、業務に活用するためのポイントをまとめてみました。
人材派遣業に関わる業務を行う方は、ぜひ参考にしてください。
労働者派遣事業関係業務取扱要領とは
労働者派遣事業関係業務取扱要領とは、厚生労働省のホームページにて閲覧できる資料で、派遣事業の意義、許認可手続き、適用除外業務、派遣元事業主の講ずべき措置、派遣先の講ずべき措置などに関する厚生労働省の法解釈が記載されています。また、併せて派遣労働者を受け入れている派遣先企業が守らなければならない事項も記載されています。
労働者派遣事業関係業務取扱要領は、全15章から構成される約400ページに及ぶ量の多い資料で、掲載されている内容は「労働者派遣事業の意義等」「適用除外業務等」「労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置に係る手続」「派遣元事業主の講ずべき措置等」「違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表」など多岐にわたります。
現時点での最新版は令和4年10月に公開された資料で、各章で概要が紹介されています。
1.労働者派遣事業の意義等

第1章の労働者派遣事業の意義等では、労働者派遣とは「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まない」(派遣法2条1号)と定義されています。
以下で、それぞれの意義を紹介しています。
労働者派遣
労働者派遣の項では
- 労働者および雇用関係について
- 指揮命令(請負との違い)
- 出向
- 労働者供給
- ジョイントベンチャー
- 派遣店員
上記について、それぞれ労働者派遣との違いが記載されています。
派遣労働者
派遣労働者の項では
- 派遣労働者
- 事業主が雇用する労働者
- 労働者派遣の対象
- 有期雇用派遣労働者と無期雇用派遣者
について、それぞれ詳しく定義されています。
労働者派遣事業
労働者派遣事業の項では
- 労働者派遣事業
- 業として行う
- 適用除外業務
- 登録型派遣と常用型派遣
上記について、詳しく定義されています。
紹介予定派遣
紹介予定派遣の項では、紹介予定派遣についての詳しい定義が解説されています。
法の適用範囲
法の適用範囲の項では
- 公務員などに対する法の適用
- 船員に対する法の適用除外
上記の2つについて、詳しく定義されています。
2.適用除外業務等

第2章の適用除外業務等では、労働者派遣事業を行ってはならない「港湾運送業務」「建設業務」「警備業法2条1項に掲げる業務(事務所、住宅、興行場、駐車場、遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し、防止する業務)」「その他(医療関連業務などだが各種条件あるので詳細は割愛)」についての定義が記載されています。
<h2>3.労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置に係る手続
第3章の労働者派遣事業の適正な運営の確保に関する措置に係る手続では、労働者派遣事業者の各種必要な手続きについて、詳しく解説されています。
<h3>事業主が行う許可手続きについて
事業主が行う許可手続きについての項では
- 申請手続き
- 許可申請関係書類等の種類
- 許可要件(欠格事由含む)
上記などについて詳しく解説されています。
こちらの項目は特に注意すべき内容が多いため、こちらの「人材派遣事業の開業に必要な許可や始業までの流れを徹底解説」で詳しく解説しています。必ずご参照ください。
許可の有効期間の更新手続きについて
許可の有効期間の更新手続きについての項では
- 有効期間(はじめての許可の場合:許可の日から起算して3年、一度更新を受けた後の許可の場合:更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年)
- 更新の手続き
- 許可有効期間更新申請関係書類
などを記載しています。
事業主の行う変更の届出手続
事業主の行う変更の届出手続の項では
- 変更の届け出
- 変更届出関係書類
などを記載しています。
事業廃止届出手続き
事業廃止届出手続きの項では
- 廃止の届出
- 許可の効力
などを記載しています。
許可証の取扱い
許可証の取扱いの項では
- 許可証の備付け及び提示
- 許可証の再交付手続
などを記載しています。
労働者派遣事業台帳及び労働者派遣事業主台帳の整備等
労働者派遣事業台帳及び労働者派遣事業主台帳の整備等の項では
- 許可時の対応
- 更新時・変更時・廃止時の対応
- 事業所台帳の保管
などを記載しています。
4.事業報告等

第4章の事業報告等では「派遣元事業主は、毎事業年度における労働者派遣事業を行う事業所ごとの当該事業に係る労働者派遣事業報告書(様式第11号)(以下「事業報告書」という。)及び労働者派遣事業収支決算書(様式第12号)(以下「収支決算書」という。)、関係派遣先割合報告書(様式第12号-2)を作成し、厚生労働大臣に提出しなければならない」(法第23条第1項及び第2項、則第17条、則第19条)についての詳しい内容が記載されています。
こちらに関する解説は「労働者派遣事業報告書の作成と注意点を解説!違反者には許可の取消しも?」の記事で詳しく紹介しています。ぜひご参照ください。
事業報告書、収支決算書
事業報告書、収支決算書の項では
- 事業報告書
- 収支決算書
についての記載方法などが記載されています。
関係派遣先に対する労働者派遣の制限等
関係派遣先に対する労働者派遣の制限等の項では
- 関係派遣先の範囲
- 派遣割合の算出方法
- 報告の方法等
などが記載されています。
海外派遣の届出
海外派遣の届出の項では
- 海外派遣の概要
- 届出の方法
などが記載されています。
事業所ごとの情報提供
事業所ごとの情報提供の項では
- 情報提供すべき事項
- 情報提供の方法等
などが記載されています。
労働争議に対する不介入
労働争議に対する不介入の項では、労働争議に対する不介入の趣旨などが記載されています。
個人情報の保護
個人情報の保護の項では
- 個人情報の収集、保管及び使用
- 個人情報の適正管理
などが記載されています。
5.労働者派遣契約

第5章の労働者派遣契約については、派遣法26条によって「労働者派遣契約は、契約の当事者の一方が、相手方に対し労働者派遣することを約する契約であり、当事者の一方が労働者派遣を行う旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすること又は当事者の一方が労働者派遣を受ける旨の意思表示を行いそれに対してもう一方の当事者が同意をすることにより成立する契約であり、その形式については、文書であるか否か、又有償であるか無償であるかを問うものではない」と定義されています。
ここでは、労働者派遣契約についての詳しい解説がされています。
契約の内容等
契約の内容等では
- 契約内容
- 派遣可能期間の制限に抵触する日の通知
- 比較対象労働者の待遇等に関する情報の提供
- 派遣料金の配慮
- 海外派遣の場合の労働者派遣契約
などが記載されています。
労働者派遣契約の解除の制限
労働者派遣契約の解除の制限では、労働者派遣契約の解除が禁止される事由などが記載されています。
派遣労働者の保護等のための労働者派遣契約の解除等
派遣労働者の保護等のための労働者派遣契約の解除等では、労働者派遣契約の解除等を行える具体的事由について記載されています。
労働者派遣契約の解除の非遡及
労働者派遣契約の解除の非遡及では、労働者派遣契約の解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる(法第29条)についての意義が記載されています。
派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置では
- 派遣先の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
- 派遣元事業主の講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置
などが記載されています。
6.派遣元事業主の講ずべき措置等

第6章の派遣元事業主の講ずべき措置等については、以下の19項にわたる措置項目により、派遣元事業主の雇用管理を解説しています。
派遣元事業主が講ずべき措置項目は、以下の19項目です。
- ① 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等のための措置(派遣法第30条)
- ② 段階的かつ体系的な教育訓練等(派遣法第30条の2)
- ③ 派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の確保のための措置(派遣法第30条の3)
- ④ 一定の要件を満たす労使協定に基づく待遇の確保のための措置(派遣法第30条の4)
- ⑤ 職務の内容等を勘案した賃金の決定(派遣法第30条の5)
- ⑥ 就業規則の作成等における派遣労働者の過半数を代表する者への意見聴取(派遣法第30条の6)
- ⑦ 派遣労働者等の福祉の増進のための措置(派遣法第30条の7)
- ⑧ 適正な派遣就業の確保のための措置(派遣法第31条)
- ⑨ 待遇に関する事項等の説明(派遣法第31条の2)
- ⑩ 派遣労働者であることの明示等(派遣法第32条)
- ⑪ 派遣労働者に係る雇用制限の禁止(派遣法第33条)
- ⑫ 就業条件等の明示(派遣法第34条)
- ⑬ 労働者派遣に関する料金の額の明示(派遣法第34条の2)
- ⑭ 派遣先への通知(派遣法第35条)
- ⑮ 派遣可能期間の適切な運用(派遣法第35条の2、派遣法第35条の3)
- ⑮ 日雇労働者についての労働者派遣の原則禁止(派遣法第35条の4)
- ⑰ 離職した労働者についての労働者派遣の禁止(派遣法第35条の5)
- ⑱ 派遣元責任者の選任(派遣法第36条)
- ⑲ 派遣元管理台帳の作成、記載及び保存(派遣法第37条)
7.派遣先の講ずべき措置等
第7章の派遣先の講ずべき措置等については、以下の10項にわたる措置項目により、派遣先の就業についての管理内容を解説しています。
派遣元事業主が講ずべき措置項目は、以下の10項目です。
- ① 労働者派遣契約に関する措置(派遣法第 39 条)
- ② 適正な派遣就業の確保等のための措置(派遣法第 40 条第1項)
- ③ 派遣先による均衡待遇の確保(派遣法第 40 条第2項〜第5項)
- ④ 派遣先の事業所単位の派遣期間の制限の適切な運用(派遣法第 40 条の2)
- ⑤ 派遣労働者個人単位の期間制限の適切な運用(派遣法第 40 条の3)
- ⑥ 派遣労働者の雇用の努力義務(派遣法第 40 条の4)
- ⑦ 派遣先での常用労働者(いわゆる「正社員」)化の推進(派遣法第 40 条の5)
- ⑧ 離職した労働者についての労働者派遣の役務の提供の受入れの禁止(派遣法第 40 条の9)
- ⑨ 派遣先責任者の選任(派遣法第 41 条)
- ⑩ 派遣先管理台帳の作成、記載、保存及び記載事項の通知(派遣法第 42 条)
<h2>8.労働基準法等の適用に関する特例等

第8章の労働基準法等の適用に関する特例等では「労働基準法、労働安全衛生法、じん肺法、作業環境測定法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び労働施策総合法につき適用の特例等に関する規定を設けている」ことから、派遣元と派遣先に適用される法令についての解説がされています。
9.紛争の解決
第9章の紛争の解決では
- 苦情の自主的解決
- 紛争の解決の促進に関する特例
- 紛争の解決の援助
- 調停
上記について記載されています。
10.個人情報保護法の遵守等
第10章の個人情報保護法の遵守等では、個人情報保護法等の規定並びに派遣元事業主が講ずべき措置及びその主な留意点等を記載しています。
また「個人情報取扱事業者に該当する派遣元事業主」と「個人情報取扱事業者に該当しない派遣元事業主」についても詳しく解説されています。
11.違法行為の防止、摘発
第11章の違法行為の防止、摘発では
- 労働者等の相談への対応
- 派遣元事業主、派遣先への周知徹底
- 指導及び助言
- 報告
- 立入検査
- 違反の場合の効果
などが記載されています。
12.違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表

第12章の違法行為による罰則、行政処分及び勧告・公表では、違法行為による罰則として「罰則適用条項 | 違反の内容 | 参考箇所 | 罰則規定 | 刑罰の内容」の表式にて記載し、行政処分及び勧告・公表については詳しく解説がされています。
13.行政処分を行った派遣元事業主及び無許可で労働者派遣事業を行った事業主の公表
第13章の行政処分を行った派遣元事業主及び無許可で労働者派遣事業を行った事業主の公表では
- 行政処分を行った派遣元事業主への対応
- 無許可派遣事業主への対応
についての記載がされています。
14.その他
第14章のその他では
- 行政機関の連携体制の確立
- 派遣元責任者講習
- 派遣先責任者講習
などが記載されています。
15.様式集
第15章の様式集では
- 労働者派遣事業許可申請書
- 労働者派遣事業計画書
などの各種申請様式が掲載されているため、必要に応じてこちらからプリントアウトするとよいでしょう。
まとめ

このように労働者派遣事業関係業務取扱要領は、約400ページという膨大な量があるため、全てを記憶することは無理と言えます。
ただしその存在を念頭に置き、業務で課題が見つかった場合には適宜参照するという使い方をすることで、非常に強い見方となるでしょう。そこで、目次だけでも手元に置き、困ったときは目次から適切な対応方法を検索し対策を講じることでトラブルの回避につながるので、ぜひ活用してみてください。