人材派遣の仕事の特徴の1つには、派遣スタッフや派遣先企業との契約期間が比較的短いために、新規契約や更新手続きの作業が煩雑になりやすい事です。
とくにこれまでは、労働者派遣法や労働者派遣法施行規則の規定によって、労働者派遣個別契約書などを紙媒体で作成し、保管することが義務付けられていました。
しかし、2021年に施行された新しい法令により労働者派遣個別契約書の電子化が解禁され、契約に関する業務の効率化が可能となりました。
ただ法律が改正されたからと言って、すべての企業が電子化に対応しているわけではなく、これから導入すべきかどうかを思案している方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、人材派遣業の契約の電子化が解禁された前後の違いや、電子契約時のメリットや注意点を解説します。
人材派遣企業の経営者はもちろん、営業や契約担当者の方もぜひ参考にしてください。
契約書の電子化
人材派遣業における契約書の電子化では、2019年4月1日の法改正により、まずは労働基準法施行規則で「労働条件通知書」が電子化されました。しかしこの時、労働者派遣個別契約書についての電子化は認められませんでした。
2020年10月9日に、厚生労働省が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則及び厚生労働省の所管する法令の規定に基づく 民間事業者等がおこなう書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令の一部を改正する省令(厚生労働省令第170号)」を交付し、労働者派遣個別契約書の電子化が認められ、2021年1月1日から施行されることが決定しました。
この労働者派遣個別契約書は、元来紙媒体によって書面化することが義務付けられていましたが、派遣期間が最大で3年と定められているため、派遣期間の制限内で契約書の更新や修正があり、その作業が非常に煩雑となっていました。
この労働者派遣個別契約書の電子化が解禁された背景には、新型コロナウイルス感染拡大への対策として急速にリモートワークが導入される中、近々の課題として挙げられた「押印文化」の解消にあります。実際に、ただ書類に押印するためだけに会社へ出社するケースも多く、政府が「押印を必要としない」社会を率先して実現するための施策として、公的な契約書の電子化を解禁することとなりました。
電子化前後の違い

上記のように、電子化される前は派遣元と派遣先の企業間の契約書のやりとりは紙媒体で行われるのが一般的で、一部の自治体では電子化を認めていたものの、厚生労働省は認めていないというダブルスタンダードの元で混乱を招いていました。
そこで2019年4月に、派遣元の企業と派遣労働者、派遣先企業と派遣労働者の間で結ぶ派遣元管理台帳や派遣先管理台帳、また労働条件通知書について、労働基準法施行規則で電子化
を認める法案が施行されました。そして約2年遅れで、派遣元と派遣先の企業間で締結する労働者派遣個別契約書の電子化が認められたのです。
電子化メリット

この各契約書の電子化により、企業にはさまざまなメリットがあります。
例えば、契約書の印刷費用や郵送費用などのコスト削減をはじめ、契約書の締結や来訪に伴う工程や交通費の削減と効率化、契約書類の保管や管理の簡便化などがあります。
派遣先のメリット
派遣先のメリットとして、オンライン上で「いつでも・どこでも」契約書に署名捺印ができることにより「押印のための出社」が必要なくなります。
新型コロナウィルス蔓延の問題だけでなく、このリモートワークでの契約締結は、オフィス賃貸料や交通費といったコストの削減に役立つでしょう。
派遣元のメリット
派遣元のメリットとしては、営業担当者が契約書を持って派遣先の企業を訪問し、契約書を渡して後日押印された契約書を回収するという効率の悪い業務を無くすことができます。
また、電子化により契約の手続きを迅速にできるだけでなく、作成コストの削減や書類の管理が容易になるといったメリットもあるでしょう。
以下では、人材派遣業における契約書面の電子化のメリットを更に詳しく解説します。
労働者派遣個別契約書の電子化による6つのメリット
労働者派遣個別契約書について、紙媒体での書面契約からオンラインを使った電子契約に切り替えた場合のメリットは、主に以下の6つが考えられます。
- 事務作業の簡略化
- 書類作成コストの削減
- 契約締結に至るリードタイムの短縮
- 保管と管理の効率化
- リモートワーク対応が容易
- 契約更新の確認漏れ防止 など
以下では、この6つについて詳しく解説します。
事務作業の簡略化
紙媒体で契約書を作成する場合、手書きかPCで記入した内容を印刷して製本し、その後に相手先の企業に送付したり、持参したりするなど、多くの工程を経ることになります。
しかし、契約書を電子化することにより、記入する内容をPCで入力後、相手先の担当者へメールなどで送信するだけで完了します。
このように、事務作業にかかる手間を大幅に簡略化できるでしょう。
書類作成コストの削減
紙媒体から電子媒体に変えることで、事務効率がアップすることを先に説明しました。しかし、電子化することで得られるメリットは書類作成に関するコスト削減にも波及します。
書類を作成する紙代やインク代、郵送費など、一見すると少額な費用に感じますが、人材派遣企業では多くの契約書を作成するため、年間のコストに換算すると相当な金額となります。それが電子化されることで、ソフトとセキュリティ対策の費用のみとなるため、予算管理も容易になるでしょう。
契約締結に至るリードタイムの短縮
労働者派遣個別契約書を紙媒体の契約書類として作成する場合、契約書を印刷して製本し、押印して送付します。そして取引先が押印したら、取りに伺うか返送してもらうなどして契約締結となります。ただし、このような契約の方法では、最低でも1週間はかかるでしょう。また、どちらかの担当者が不在となれば、契約書1つ交すだけで1ヶ月近くかかることも少なくありません。
しかし、オンラインで契約を締結できれば、最短で数分。遅くとも1両日中に完結できるでしょう。契約の締結はできるだけ早く済ませることが重要となるため、契約書面の電子化は大きなメリットと言えます。
保管と管理の効率化
労働者派遣個別契約書などの人材派遣業の契約書は、さまざまな法律により一定期間の保存が義務付けられています。そこで紙媒体の契約書の場合は、契約書を分類してファイリングし、鍵付きの棚に保管する必要があります。その際に起こりがちなのが「保管スペースがない」ことや「保管した場所が分からなくなる」ことです。
しかし、契約書を電子化することでクラウド上に保管するため、紛失やスペースに困ることが無く、また情報が漏洩するリスクも回避できるのです。また、電子化される前の書類をデータ化して保存することも可能です。
リモートワーク対応が容易
コロナウィルスの蔓延をきっかけに急速に進んでいるリモートワークですが、契約書の作成や押印のために出社を余儀なくされる会社員が多く、それが社会問題となっています。
しかし、この電子化により印刷や押印を自宅などでも容易にできるようになり、将来的な完全リモート化に向けた取り組みができるようになっています。
契約更新の確認漏れ防止
これまでの紙媒体での契約書の場合、派遣先と派遣元企業間の契約についての管理に手間がかかり、更新期限などを見落とすといったミスを起こすリスクがありました。
しかし、電子契約であれば契約の更新期限が近い企業ごとにアラート機能を設定することができ、契約更新や期限を見落とすといったリスクを回避できるでしょう。
人材派遣業における電子契約導入の注意点

上記のように、人材派遣企業において、契約書の電子化が大きなメリットをもたらすことが分かりました。一方で、電子化に際し、いくつかの注意点に留意する必要があります。
1つは、すべての契約が電子契約に対応しているわけではなく、出社や押印が必要となる場合があることです。それにより、電子媒体と紙媒体の両方の管理が必要となり、作成や保管方法を社内で統一化する必要が生じます。
そしてもう1つは、取引先の企業が電子化に対応しているかどうかの問題です。自社がオンライン化を進めても、取引先が対応していなければ契約書を紙媒体で作成しなければならなくなり、結果として従来通りの手間と時間、コストがかかることになります。そのような場合には取引先に協力を仰ぐ必要があり、不可能であれば、従来通り対応することになります。
労働者派遣個別契約書の電子化導入のまとめ

いかがでしたでしょうか?このように、人材派遣業では多くの契約書類が電子化に対応できるようになっています。このような変化の中で少しでも早くオンライン化を進めることは、自社の社員はもとより、派遣労働者、派遣先の企業にとってもメリットの大きな取り組みとなります。
もしもあなたの会社でまだ労働者派遣個別契約書の電子化を導入していない場合は、ぜひマッチングッドの労働者派遣個別契約書をお試しください。
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契約書や契約手続きを電子化することにより、人材派遣会社の業務スピードが加速し効率化されます。そして、その加速はオンラインシステムを導入しているか否かによって、さらに大きく差が開くことでしょう。競合他社にスピードで劣り、それが原因でせっかくの受注機会を逃さないためにも、マッチングッドの導入を検討してみてはいかがでしょうか?