労働者派遣個別契約書とは、労働者派遣契約に関する書類の一つで、主に派遣労働者の労働環境や労働条件といった「労働者を保護する」ための内容を記載します。
人材派遣企業が作成する書類には、その他にも労働者派遣基本契約書や労働者派遣通知書など、似通った書類が複数あります。
今回ご紹介する労働者派遣個別契約書に関する法令は、2021年1月に改正されたばかりで、とくに注意すべき書類です。
以下では、派遣労働者個別契約書に関する特徴や記載事項、作成や保管に関する重要事項をまとめています。
人材派遣業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
労働者派遣個別契約書
労働者派遣の契約書類は、一般的には労働者派遣基本契約書と労働者派遣個別契約書の2種類に分けて作成し、締結後は一定期間保管が推奨されています。
労働者派遣基本契約書は、スタッフの派遣を行う前に派遣先と派遣元が締結する書類で、派遣先企業との派遣料金や秘密保持、損害賠償など、すべての派遣契約に共通する商取引上の重要項目を記載します。
一方、今回ご紹介する労働者派遣個別契約書は、労働者派遣法に定められた法定記載事項を中心とする内容を記載する書類です。
労働者派遣個別契約書は、労働者派遣基本契約書を作成した後に、派遣先の企業が派遣労働者を受け入れる前に派遣元の企業と締結する重要書類です。
労働者派遣個別契約書に記載する事項は、派遣労働者の就業条件などを具体的に記します。派遣労働者の人数や従事する業務内容などが明確になるため、書類の作成はもちろん、締結からその後の保管を推奨されている大切な書類です。
労働者派遣個別契約書の存在意義
労働者派遣個別契約書は、労働者派遣法26条で定められた労働者派遣契約の1つです。
作成は派遣元の企業が行い、派遣労働者が合意した後に、派遣先の企業と締結します。
労働者派遣個別契約書は、派遣労働者の保護を目的とした書類ですが、基本的に派遣労働者が閲覧するものではありません。派遣労働者が内容を確認したい時は、派遣元の企業と派遣労働者の間で締結する雇用契約書を見れば、同じ内容が記載されています。
記載事項
労働者派遣個別契約書の記載事項は、以下のような内容となっています。
詳しくは、ブレイン・ラボの労働者派遣個別契約書のテンプレートをダウンロードの上、ご確認ください。
●安全衛生について
派遣労働者が業務を遂行するに当たり、安全・衛生を確保するための必要事項を記載します。
●派遣社員からのクレーム処理について
苦情の申出を受ける者として、派遣先・元担当者の所属部署名、役職名、電話番号を記載します。
また、苦情の処理方法や連携体制として、苦情があった場合の派遣先・元担当の連携体制、処理方法を記載します。
●雇用安定措置について
労働者派遣契約の解除の事前の申入れとして、派遣元の合意を得ること。猶予期間をもって申入れをおこなうことを定めます。
そして、就業機会の確保として、新たな就業先を確保する旨を定めます。
損害賠償等に係る適切な措置として、休業手当、解雇予告手当に対する損害賠償を定めることが必要です。
最後に、労働者派遣契約の解除の理由の明示として、派遣労働者の派遣契約を解除した理由を派遣元事業主に明示する旨を定めます。
●派遣元責任者と派遣先責任者について
派遣元責任者、派遣元責任者それぞれの所属部署名、役職名、電話番号を記載します。
派遣先責任者は、その事業所毎に派遣社員1~100人の1単位につき1人以上、監査役以外の自社社員の中から選任する必要があります。
●時間外・休日労働について
時間外労働として、派遣先において残業がある場合は、1日、1ヶ月(3ヶ月)、年間分のそれぞれの残業時間を記載します。派遣元事業主で定めた36協定の範囲内の時間外労働時間となります。
また、就業日外労働として、派遣先において休日出勤がある場合は、1ヶ月の休日労働日数を記載します。派遣元事業主で定めた36協定の範囲内の休日労働日数になります。
●福祉について
派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与として、派遣先は、派遣労働者についても、派遣先で雇用する労働者が通常利用している設備、施設等の利用の便宜を図るよう配慮し、その旨を記載します。
労働者派遣法第40条第3項により、派遣労働者に対しても利用の機会を与えなければならないこととなっている給食施設、休憩室及び更衣室以外について記載することが必要です。
●派遣社員の種類(無期雇用派遣労働者や60歳以上の者に限定するか否か)について
派遣労働者を無期雇用派遣労働者または60歳以上の者に限定するか否かの別について、それぞれに限定する場合はその旨、限定しない場合は「限定しない」と記載します。
●派遣終了後の直接雇用の場合に当事者間の紛争を予防するための措置について
派遣先が派遣労働者を雇用する場合の紛争防止措置として、派遣先が、労働者派遣終了後にその派遣労働者を雇用する場合には、派遣先が事前に派遣元に通知すること、派遣元が職業紹介を行うことが可能な場合に職業紹介により紹介し、手数料を支払うこと等の措置を記載します。
●直接雇用をする旨の事前通知や、手数料の支払いの規定など
派遣先が派遣元に手数料を支払うのは、派遣元事業主が職業紹介の許可を受けるか、または届出をしている場合で、派遣先がその職業紹介により当該派遣労働者を雇用した時に限られます。
●(紹介予定派遣の場合は)紹介予定派遣について
紹介予定派遣に関する事項として、紹介予定派遣の場合のみ、以下の事項等※を記載します。
※契約期間・就業場所・就業開始時間と終了時間・休憩時間・所定外労働規定・休日・休暇・賃金・各種保険の加入の有無 など
作成方式・受け渡し
それでは次に、2021年1月に改正された労働者派遣法のポイントである、労働者派遣個別契約書の詳細を解説し、派遣法改正に伴う人材派遣企業が注意すべきポイントを紹介します。
作成方式
今回の改正の大きなポイントとして、紙媒体による書類での契約が義務付けられていた労働者派遣契約について、電子締結が認められたことです。
【施行規則第 21 条第3項に基づき、書面により作成することとされている労働者派遣契約について、電磁的記録により作成することも認めることとする】
上記のように、電子媒体による契約書の作成が認められた背景には、新型コロナウイルス感染拡大への対策として、各企業でテレワークが急速に導入されたことによります。
そして、このテレワークを行う際に課題として挙げられたのが、日本特有のハンコ文化でした。日本では、長くこのハンコの押印のためだけに出社するケースもあったため、まずは公的な書類での電子化を認めた形です。
受け渡し
この契約書類の電子化に伴い、派遣スタッフへの契約書の受け渡しなどもメールへの添付で可能になりました。
今回の労働者派遣個別契約書の受け渡しでは、派遣先と派遣元での契約締結となりますが、こちらにおいても電子媒体による契約締結と受け渡しが可能です。
これにより業務の効率化が大幅に進み、コロナウィルスの感染のリスクもなく企業同士の種類の受け渡しがスムーズになっています。
契約書の保管など
これまで紙媒体で作成、保管してきた契約書類を電子化することにより、企業での書類の保管・管理業務が大いに簡便化されています。
またそれ以外にも、派遣契約書を電子化することで複数のメリットを享受できるでしょう。
具体的なメリットには、印刷費用や郵送費用などのコストを削減できることが挙げられます。また、契約書の受け渡しに伴う工程の削減や効率化が大幅に進んだこと、契約書類の保管と管理が容易になったことなども大きなメリットです。
しかしその一方で、派遣企業が電子契約サービスを導入しなければならないことがデメリットと言えます。重要な資料や書類を電子化するには、セキュリティ対策や法令、デジタルに関する一定の知識が必要となるからです。
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派遣先や派遣元、そして何よりも派遣労働者の方が安心して長期にわたって働ける環境を提供するためにも、労働者派遣契約書の締結は所定の内容を漏れることなく取り交わすことが重要です。
しかし、労働者派遣契約書の基本契約書や個別契約書にすべてを漏れなく記載するには、専門家のアドバイスが必須となるでしょう。
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