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(テンプレート付き)労働条件通知書兼就業条件明示書とは?作成内容を詳しく解説!

人材派遣業を営む企業では、派遣労働者を派遣業務に従事させるにあたり、派遣労働者と雇用契約を結ばなければなりません。その際に必要となる書面が「就業条件明示書」と「労働条件通知書」です。

「就業条件明示書」は労働者派遣法で規定される書類で、「労働条件通知書」は労働基準法等によって規定されています。この2つの書類に記載する内容は同じ項目が多いため、それぞれを別々に作成せずに「就業条件明示書兼労働条件通知書」として作成することが可能です。

そこで今回は「労働条件通知書兼就業条件明示書」について、記載に必須となる項目や明示の仕方、保管の方法など、各法律に抵触しない運用方法をご紹介します。

労働条件通知書兼就業条件明示書とは

労働条件通知書兼就業条件明示書とは、人材派遣会社が、自社に登録する派遣労働者と雇用契約を結ぶ際に、労働条件や就業条件を記載して明示する書類のことを指します。

この労働条件通知書兼就業条件明示書は、「労働条件通知書」と「就業条件明示書」という本来別々の書類を1つにまとめたものです。

労働条件通知書は、労働者と労働契約を締結する際に交付する書類のことです。この労働条件通知書で明示する労働条件の内容は、労働基準法によって定められており、必要事項を記載した書類が労働条件通知書として扱われます。この必要事項を記載した労働条件通知書は、作成と労働者への交付が義務付けられています。ただし、必要事項が記載されている書類であれば「労働条件通知書」という名目である必要はありません。

一方、就業条件明示書は、登録している派遣労働者に対して派遣会社が発行する書類で「就業条件」を明示したものです。

労働条件通知書が労働基準法を基に作成するのに対し、就業条件明示書は労働社派遣法が基となる書類です。ただし、労働条件通知書と就業条件明示書に記載される内容は、同じか類似してるものが多いのが現実です。

そこで、労働条件通知書兼就業条件明示書という形式で、労働者派遣法26条に定める労働条件などを明示する書類を作成し、派遣労働者に明示して交付することがあります。

作成義務・通知

労働条件通知書は、法律によって定められた項目にそった作成が義務づけられており、労働者への通知や交付も行わなければなりません。これに違反した場合には、処罰の対象となるため注意が必要です。

労働条件通知書の記載事項

労働条件通知書は、人材派遣会社が派遣スタッフと雇用契約を結ぶ際に交付する書類のことです。この書類には、決まった書式はありません。

必須記載事項

労働条件通知書で必ず明示しなければならない事項は、以下のとおりです。

(1)労働契約の期間
(2)有期労働契約の更新基準
(3)就業場所等
(4)始業・終業時刻等
(5)賃金の決定・支払時期等
(6)退職(解雇含む)

(1)契約期間

正社員の場合「期間の定めなし」とします。しかし「期間の定めあり」として雇用期間を定める場合は、原則として契約期間の上限が3年です。

この契約期間には例外があり「一定の場合に上限は5年」となります。この例外にあてはまる条件は、以下の3つです。

①高度な専門的知識や技術、経験を有する労働者として認められるもの

・博士の学位を有するもの
・公認会計士
・医師
・歯科医師
・獣医師
・一級建築士
・税理士
・薬剤師
・社会保険労務士
・不動産鑑定士
・技術士
・弁理士
・システムアナリスト
・アクチュアリー などが該当します。

②満60歳以上の労働者

③一定の事業の完了までに必要な期間を定める労働契約(有期の建設工事等)

(2)有期労働契約の更新基準

有期契約労働者に対し、契約を結ぶ際にその契約の更新有無を明示しなければなりません。また、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、派遣労働者に対し、契約を更新する、またはしない場合の判断基準を明示することが義務付けられています。もしも、この契約の締結後に、更新基準を変更する場合には、人材派遣企業側が派遣労働者に対し、その内容を速やかに明示しなければなりません。

(3)就業場所等

入社直後に働く場所と業務内容を明記します。「本社」や「支社」だけでなく、住所もできるだけ詳細に記載します。

(4)始業・終業時刻等

始業と終業の時刻、休憩時間など、具体的な条件を明示します。また、変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制等の条件がある場合は、以下の点に注意してください。

・変形労働時間制の場合

業務に適用する、変形労働時間制の種類(1年単位、1か月単位等)を明示します。

変形労働時間制において、交替制でない場合は「・交替制」を横線(=)で抹消してください。

・フレックスタイム制の場合

コアタイムやフレキシブルタイムがある職場では、その時間帯の開始時刻と終了時刻を明示します。コアタイムやフレキシブルタイムがない場合は、変形労働時間制と同じく、括弧書きした文字を(=)で抹消します。

・事業場外みなし労働時間制の場合

所定の始業時刻と終業時刻を明示します。

・裁量労働制の場合

基準となる始業時刻や終業時刻がない場合、括弧書きの「始業··を基本とし、」の部分を(=)で抹消してください。

・交替制の場合

シフト毎の始業時刻と終業時刻を明示します。また、変形労働時間制でない場合は括弧書きの変形労働時間を(=)で抹消します。

・休日については、定休日の曜日や日を特定して記載します。

(5)賃金の決定・支払時期等

基本給等ついて、具体的な額を明記しなければなりません。その際に、就業規則で規定する「賃金等級等」によって賃金額を確定する場合は「等級等」を明示します。尚、基本給や労働時間は、法律を厳守しなければなりません。

また、派遣労働者本人の派遣料金額と、派遣労働者が所属する事業所における派遣料金の平均額について、派遣労働者に明示することも義務づけられています。さらに昇給、賞与、退職金の有無についても記載する必要があります。

(6)退職(解雇含む)

定年制を設ける場合は60歳を下回ることは認められません。また、65歳未満で定年を定める場合、65歳までの安定した雇用を確保するための策が必要となります。それを高年齢者雇用確保措置と呼び、「定年の引上げ」「継続雇用制度の導入」「定年の定めの廃止」のいずれかの策を講じなければなりません。

任意の記載事項

労働条件通知書では、任意の記載事項として「社会保険(健康保険や厚生年金保険)の加入状況や雇用保険の適用の有無」「労働者に負担させるべきものに関する事項」「安全及び衛生に関する事項」「職業訓練に関する事項」「災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項」「表彰及び制裁に関する事項」「休職に関する事項」などの制度がある場合は、書類に積極的に記載します。

就業条件明示書の記載事項

就業条件明示書は、人材派遣会社が派遣労働者に対して「就業条件を明示」し、交付する書類です。この書類についても、決まった書式はありません。

必須記載事項

(1)業務内容
(2)業務に伴う責任の程度
(3)仕事を行う事業所の名称及び所在地、組織単位
(4)就業中の指揮命令者に関する事項
(5)派遣の期間、就業日
(6)始業・終業時間、休憩時間
(7)派遣労働者からの苦情処理に関する事項
(8)派遣労働者の個人単位の期間制限に抵触する最初の日(雇用期限が切れた翌日)

上記のように、就業条件明示書では、それぞれの就業時の内容を明示するのが特徴です。そのため、派遣労働者が就業先に就いてからも、修正や記入をすることがあります。

労働条件通知書兼就業条件明示書の発行について

上記のように、労働条件通知書と就業条件明示書は、それぞれに重要な役割を持つ書類です。そこで、労働条件通知書兼就業条件明示書としてまとめて作成し、保管することをおすすめします。

書類の発行については、基本的に紙媒体で作成し、その内容を慎重に精査しましょう。そして、契約する派遣労働者に署名・捺印をしてもらい、確実に保管します。

通知に関しては、FAXやオンラインで行うことも可能です。ただし、できるだけ履歴が残る形で送信することをおすすめします。そこで、SNSやメールにPDFを添付するのが良いでしょう。何かのトラブルが起こったときに、労働者に明示していないなどの不備がないようにしておきましょう。

労働条件通知書兼就業条件明示書の保管について

労働条件通知書と就業条件明示書の保管義務については、労働条件通知書だけに保管義務があります。そのため、労働条件通知書兼就業条件明示書として作成する場合には、作成と保管の両方の義務が生じます。

労働条件通知書兼就業条件明示書の保管期限は、労働者が退職あるいは死亡した3年後までとなります。このような重要書類は、他の書類と共に、派遣労働者ごとにファイリングして保管しましょう。

罰則

労働条件通知書兼就業条件明示書として作成した場合、労働条件通知書として記載すべき内容を網羅してください。

労働条件の最低限明示しなければならない事項の明示を怠った場合、企業側に30万円以下の罰金が科せられます。(労働基準法第120条1号)

まとめ

このように、人材派遣会社が労働条件通知書兼就業条件明示書を作成・保管し、派遣労働者に対して明示することは、重要な役割を果たします。この書類を作成することで、派遣労働者が安心して派遣先で働けることはもちろん、何かのトラブルが起きても、この労働条件通知書兼就業条件明示書を基に、早期解決が図れるでしょう。また、労働条件通知書の関しては、作成と発行通知を怠ると罰則適用される危険があるため、対応漏れのないように注意してください。

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