人材派遣事業では、取り扱う書類の種類が非常に多くなります。
どの書類がどのタイミングで必要なのか、各書類に何を記載すべきかなど、詳細な内容を整理するのに困っているという方も多いのではないでしょうか?
今回は、派遣元の企業が、派遣先の事業者に提出する「派遣労働者通知書」について解説します。
派遣労働者通知書とは
派遣労働者通知書とは、労働者の派遣契約において、その契約内容を適切に履行するために作成する書類です。この書類は、派遣元となる事業者が作成し、派遣先に通知します。
派遣労働者通知書と派遣元管理台帳
この派遣労働者通知書と似た書類に、派遣元管理台帳があります。
派遣労働者通知書と派遣元管理台帳の大きな違いは書類の作成と保管に義務があるかどうか」と「作成した書類を派遣先や派遣労働者に提出するかどうかという点です。
派遣労働者通知書は、作成と保管の義務がなく、任意に作成する書類です。しかし、作成した書類を派遣先の企業に提出することで、派遣労働者の労働環境や雇用の管理に役立てることができます。
一方、派遣元管理台帳は、派遣法によって作成を義務付けられた書類の1つです。
派遣元管理台帳と派遣労働者通知書の大きな違いは、作成した派遣元管理台帳が、原則として保管することが目的であるという点です。
派遣労働者通知書は、派遣先の企業に書類を提出することにより、派遣労働者の労働環境や雇用の管理に役立てる資料です。しかし派遣元管理台帳は、派遣労働者の雇用環境を守るため、労働環境が適性に管理されているかを確認するための資料なのです。
派遣労働者通知書の記載事項
派遣労働者通知書に記載する内容は、派遣する労働者の氏名や性別のほか、無期雇用もしくは有期雇用かなどの就業条件や雇用形態などです。これらを記載し、派遣先の企業と共有することにより、派遣労働者の適正な雇用管理を確保します。
派遣労働者通知書の記載事項は、労働派遣法35条1項の規定に基づいており、下記の事項を派遣先に通知しなければなりません。
派遣労働者通知書の主な記載事項
- 1.派遣労働者の氏名・性別
- 2.無期雇用派遣労働者か有期雇用派遣労働者であるかの別
- 3.60歳以上の者であるか否かの別
- 4.健康保険・厚生年金保険・雇用保険の資格取得届の提出の有無
- 5.当該派遣労働者の派遣就業の就業条件の内容が当該労働者派遣に係る労働者派遣契約の就業条件の内容と異なる場合における当該派遣労働者の就業条件の内容
- 6.協定対象派遣労働者であるか否かの別
派遣労働者通知書の記載事項については、上記の項目のほか、特別に指定されているフォーマットなどはありません。そこで、各派遣元の企業が独自に作成することとなります。
そこで、以下では、マッチングッドで提供している派遣労働者通知書の各事項を紹介します。
マッチングッドで提供している派遣労働者通知書の項目
まずは、基本情報の5項目を記載します。
- 1.派遣労働者の氏名
- 2.性別
- 3.年齢
- 4.派遣労働者が60歳以上であるか否か
- 5.協定対象労働者であるか否か
派遣労働者が60歳以上であるか否か
派遣労働者が60歳以上であるか否かについては、派遣労働者の年齢が60歳以上の場合、基本的に「無期雇用派遣労働者」の記載がなくても同じ人を同じ職場に無期限で就労させることが可能です。
もしも「無期雇用の派遣労働者」と「60歳以上の者」ではない派遣労働者の場合は、同じ人を同じ事業所の同じ部署で就労させることができる期間を3年までと定めています。
上記のように、契約内容や年齢によって派遣可能期間に違いが生じることから、無期雇用派遣労働者又は60歳以上の者に限定して派遣する内容の派遣契約にするか否かを記載しなければならないことを確認しておきましょう。
労使協定対象労働者について
この制度は、派遣元の企業と派遣労働者が労使協定を締結することにより、同一労働同一賃金に対応する方法です。この協定を結んだ場合、国が定める「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準※1」以上の賃金で契約します。
※1同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準は厚生労働省が職種ごとに定めます。
この契約により、派遣元が支払う給与には、派遣先の給与水準が影響することがなくなります。派遣労働者にとっては、派遣先の企業が変わっても賃金が下がることがないため、派遣先を選びやすくなるメリットがあります。
この労使協定対象の労働者を受け入れる派遣先では、仕事に必要となる教育訓練や福利厚生を受ける権利を、自社の正社員と同等以上にしなければなりません。そのために、派遣先の企業は、派遣元の企業に対し、自社の教育訓練や福利厚生などの情報を提供することが義務付けられます。
もしも、職業訓練や福利厚生などの情報を提供しない場合は、派遣元の企業と労働者の派遣契約ができません。この情報提供は、紙媒体か電子媒体による書面で示さなければなりません。また、対象となる内容は、労働者の派遣終了日から3年間の保存が必要となります。
社会保険・雇用保険の被保険者資格取得届の提出有無
次に、社会保険や雇用保険などの被保険者の資格取得届提出の有無を記載します。
記載する内容は以下の通りです。
- 1.被保険者の氏名
- 2.健康保険の有無
- 3.厚生年金保険の有無
- 4.雇用保険の有無
- 5.雇用期間
尚、派遣労働者が健康保険や厚生年金保険について無保険の場合は、なぜ無保険かについて、その理由を記載しなければなりません。それは、派遣労働者の雇用主となる派遣元の企業では、派遣労働者の社会保険や労働保険の適正加入が必須となっているからです。
社会保険については、有期雇用者であっても、その期間が2ヶ月を超える場合は加入しなければなりません。雇用契約書に記載する雇用期間が2ヶ月以上である場合、雇用する時点で社会保険への加入義務が発生します。また、仮に2ヶ月未満の契約のケースでも、以下の場合には社会保険の加入が必須です。
- 契約期間満了後に契約を更新する場合
- 別の派遣先へ勤務する場合
ただし、社会保険の加入条件には労働時間と日数の要件があるため、労働時間が少ない派遣労働者の場合は被保険者の対象とはなりません。
派遣労働者が社会保険の被保険者(保険に加入する者)となるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 1日もしくは1週間の労働時間が、正社員の概ね3/4以上であること
- 1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること
社会保険の加入条件は、上記の労働時間が基準となります。
この条件を満たす派遣労働者に対し、派遣元の企業は健康保険と厚生年金保険に加入させなければなりません。正社員の労働時間が1日8時間と定められているため、派遣労働者が1日あたり6時間以上勤務し、正社員の出勤日数の3/4以上出勤すると原則被保険者となります。
労働保険(雇用保険)については、1週あたりの労働時間が20時間以となる労働者に対し加入義務が生じます。ただし、31日以上の雇用見込みがあることが前提です。
尚、雇用契約を更新する旨の記載があり31日未満での雇止めの明示がない場合、もしくは労働者の雇用契約に更新の記載がないものの労働者が31日以上雇用された場合は、31日以上の雇用見込があるものと判断され労働保険の加入対象者となります。
上記の項目の他にも、派遣労働者の労働環境を管理するため、下記の内容を記載することをおすすめします。
派遣元の情報として、以下の内容を記載
- 派遣元名称
- 派遣元事業所 部門
- 派遣元事業所 住所・TEL
- 就業の場所 現場名
- 就業の場所 住所・TEL
派遣先や業務等の内容について、以下を記載
- 業務内容
- 派遣先責任者
- 派遣元責任者
- 派遣期間
- 就業日
- 雇用期間の定めについて など
派遣労働者通知書の運用について
この労働者派遣通知書は、派遣元の企業が作成し、派遣先に提示する書類です。また、原則として官公庁への届け出は不要となっています。さらに、法定保存期間も指定されていません。
しかし、派遣労働者通知書を適切に運用することにより、派遣元と派遣先の双方で派遣労働者が安心して長期間就労できる環境を実現できます。そのため、派遣元の企業は、派遣労働者の詳しい契約内容や労働条件を派遣先に通知することが重要なのです。
派遣労働者通知書のまとめ
このように、派遣労働者通知書は派遣先への提出が必要であるものの、管理義務などが定められていない書類です。
ただし、この書類に記載される内容は、派遣労働者の労使協定や保険といった長期に関わる事項です。そのためにも、記載する内容に誤りがあってはなりません。
そこで、必要な情報を正しく記入するために、マッチングッドのテンプレートをぜひご利用ください。
マッチングッドでは、派遣労働者通知書のテンプレートを無料でダウンロードが可能です。