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(テンプレート付き)派遣元管理台帳とは?人材派遣事業で必要な記載事項や管理の仕方を徹底解説!

人材派遣会社では、派遣スタッフを管理するための派遣元管理台帳を作成しなければなりません。そこで、人材派遣会社の運営において、派遣元管理台帳の作成でお困りの方も多いのではないでしょうか?

派遣元管理台帳は、派遣スタッフを守るために、派遣法で規定されている重要書類です。派遣元管理台帳の作成を怠ると、罰金を科せられたり、最悪の場合では労働者派遣の許可を取消されたりする恐れもあります。

派遣元管理台帳に記載する事項は、決して難しいことではありません。この記事を読んでいただくことで、派遣元管理台帳の内容や作成方法が身に付くでしょう。

近年は労働者派遣法などの改正もあり、常に最新の情報を知ることが重要です。人材派遣業を運営されている方は、ぜひ下記の内容を参考にして適切な派遣元管理台帳の作成とその管理に努めて下さい。

派遣元管理台帳とは

派遣元管理台帳とは、派遣スタッフの雇用環境を守り、労働環境の適性な管理と確認を行うための資料です。実際に派遣事業を運営する際の実務で利用されることはありませんが、派遣スタッフや派遣先とトラブルが生じた時には、労働基準監督署への提示が求められることがあるため、作成と保管が義務付けられている大切な資料です。

派遣元管理台帳は、派遣元となる人材派遣会社が作成します。

派遣元管理台帳は、労働者派遣法で「作成」と「3年間の保管」が義務付けられており、もしもこの義務に違反した場合には「30万円以下の罰金」や「労働者派遣許可の取消し」といった重い罰則があります。

そこで人材派遣会社では、派遣元管理台帳を法律の規定どおり、確実に作成・保管しなければなりません。派遣元が行わなければならないことは、厚生労働省が発表した「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」に記載されていますので、こちらも確認しておきましょう。

派遣元管理台帳の記載事項

人材派遣会社は、派遣スタッフごとに所定の記載事項を満たした「派遣元管理台帳」を作成しなければなりません。

派遣元管理台帳に記載すべき事項は以下の通りです。

派遣元管理台帳を作成する際には、このフォーマットを参考にしてください。

  1. (1)派遣スタッフの氏名
  2. (2) ★協定対象派遣スタッフであるか否かの別
  3. (3) 無期雇用派遣スタッフか有期雇用派遣スタッフかの別、有期雇用派遣スタッフの場合は労働契約の期間
  4. (4)法第40条の2第1項第2号による60歳以上の者であるか否かの別
  5. (5) 派遣先の氏名又は名称
  6. (6) 派遣先の事業所の名称
  7. (7) 派遣先の事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位
  8. (8) 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
  9. (9) 始業及び終業の時刻
  10. (10) 従事する業務の種類
  11. (11) ★派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度
  12. (12) 派遣スタッフから申出を受けた苦情の処理に関する事項
  13. (13) 紹介予定派遣に係る派遣スタッフについては、その紹介予定派遣に関する事項
  14. (14) 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
  15. (15) 派遣先が⑻の派遣就業日以外の日に派遣就業をさせることができ、又は⑼ の始業時刻から終業時刻までの時間を延長できるとされている場合、当該派遣就業させることのできる日又は延長できる時間数
  16. (16) 派遣受入期間の制限を受けない業務について行う労働者派遣に関する事項
  17. (17) 派遣スタッフに係る社会保険・雇用保険の被保険者資格取得届の提出の有無
  18. (18) 段階的かつ体系的な教育訓練を行った日時とその内容に関する事項
  19. (19) キャリアコンサルティングを行った日とその内容に関する事項
  20. (20) ★雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容
  21. (21) 安定措置の内容

(項目頭に「★」のあるものは労働者派遣法改正により追加されたものです)

2020年、2021年の派遣法の改正で追加された記載内容

派遣元管理台帳の記載に関する事項は、法改正によって更新されることが度々あります。最近では、2020年と2021年に派遣法が改正されたことで、新たな3つの記載事項が追加されました。

追加された項目を確実に把握していない場合、記入漏れや、古いフォーマットを使ってしまうなどのトラブルを招く可能性がありますので、最新の項目を把握しておきましょう。

2020年には「協定対象派遣スタッフであるか否かの別」「派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度」、2021年には「雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容」の3つの記載事項が新たに追加されました。

以下では、新たに追加された3つの記載事項について詳細に解説します。

協定対象派遣スタッフであるか否かの別

「協定対象派遣スタッフであるか否かの別」の事項では、労使協定方式を採用する派遣スタッフに限定するか、またはしないかを記載しなければなりません。基本的には「限定する」と記載しましょう。

この労使協定方式とは、派遣スタッフの賃金を、派遣元企業と派遣スタッフの間で協議して決める方法です。そもそも労働者の賃金水準は、厚生労働省が定めた統計によって職種ごとに定められています。そして派遣スタッフの賃金は、一般労働者の賃金よりも高い水準で支給するのが一般的です。ただし注意したいのは、この考えが派遣先企業の正社員の賃金と派遣スタッフの賃金を同じ水準にするというものではないことです。あくまで一般の労働者を水準とするわけですから、派遣先企業の賃金とは関係ありません。

人材派遣会社は、労使協定を締結するにあたり、労働基準監督署への届出や派遣社員への説明をしなければなりません。そして派遣先企業の社員と、賃金以外の部分で同じ待遇を確保することが求められます。

その待遇とは主に福利厚生施設のことです。派遣先企業に求めることは主に情報の提供で、休憩室や更衣室、給食施設について、また教育訓練の待遇などの情報を派遣元の人材派遣会社に提供します。

もしも「派遣スタッフを協定対象労働者に限定しない」か「記載がない」場合は、派遣先の比較対象労働者の待遇などの情報収集が必要となり、社内での事務手続きが煩雑になります。そのため、派遣スタッフ全員が全員労使協定方式を採用している場合は、必ず「派遣スタッフを協定対象労働者に限定する」と記載するようにしてください。

派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度

「派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度」とは、派遣スタッフが従事する業務において、その従業員に付与されている権限の範囲や程度といった役職を意味しています。

派遣先の業務において、派遣スタッフが「チームリーダー」や「副リーダー」といった役職を担う場合は、その具体的な役職を記載しなければなりません。また役職がない派遣スタッフの場合も、その旨を記載します。ここでは派遣元である人材派遣会社と派遣先企業との間で、派遣スタッフが従事する業務に伴う責任の程度(役職)について、共通の認識を持つことが重要です。そこで、派遣元管理台帳には、できるだけ具体的な内容を記載することが求められています。

これらの責任の有無に関しては、派遣元と派遣先、派遣スタッフの3者が同じ認識を持つことが大切です。派遣元である人材派遣会社は、派遣先企業や派遣スタッフとの面談の際に、派遣スタッフの役職をしっかりと把握しなければなりません。

雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容

「雇用安定措置を講ずるに当たって聴取した希望の内容」とは、雇用の安定措置をより適切なものにするために、人材派遣会社が派遣スタッフの意見を取り入れ、その聴取した内容を派遣元管理台帳に記載しなければならないというものです。

そもそも雇用安定措置とは、派遣スタッフが現行の法律で上限とされている3年間を超えて派遣先で働くことを希望する場合に、派遣元の会社が対処しなければならない措置のことを指します。(無期雇用契約で働いている派遣スタッフの場合は対象外となります)

派遣スタッフが3年間働き、今後も同じ職場で働きたいという希望を持っていたとしても、現在の法律では派遣契約は終了となります。その際、派遣元の企業は、その後も継続して勤務ができるように派遣契約期間終了後の雇用について何らかの措置をとる努力義務があるのです。

例えば、以下のような対応が必要になります。

  • 派遣先で直接雇用してもらえるように交渉する
  • 新しい派遣先を見つける(※就業中の職場と同等、もしくはそれ以上の環境にある職場)
  • 派遣元企業で無期雇用する(※派遣スタッフ以外の雇用形態に限る)
  • キャリアアップのために教育訓練を実施する。または紹介予定派遣を行う 

上記のような雇用継続ができるように、できるだけの措置をとらなければなりません。

労働者本人に対し、上記の措置の中に希望する項目がないか、直接確認する機会をもつことが必要です。そしてどの措置を選ぶかの決定権は、派遣スタッフにあります。

そこで、今回の法改正では「雇用安定措置がより適切なものになるように、派遣スタッフの意見も取り入れる」ということがポイントとなります。

これまでは、派遣スタッフの就業期間が終了した後に、派遣元である人材派遣会社が派遣先の企業に対し派遣スタッフを直接雇用してもらえるように依頼するのが一般的でした。

しかし、その交渉には派遣スタッフの意見は反映されておらず、人材派遣会社と派遣先の企業間だけで話し合いが持たれていたのです。

今回の改正によって、派遣期間が終了する際に派遣スタッフの今後の希望や意見を聞き、その内容を優先することが義務化されました。

よって、派遣スタッフが派遣先で直接雇用されるか、または別の派遣先を希望するかなど、雇用の継続に対してどの様な措置を希望するかを派遣元管理台帳に具体的に記載しなければならないのです。

台帳の運用(派遣元)

この派遣元管理台帳の作成は「労働者派遣法37条」に記載されている通り、派遣元の義務となっています。

派遣元管理台帳は、派遣元である人材派遣会社が派遣スタッフの就業に関しての紛争が起きた場合、その解決を目指すための行政指示を受ける際にも用いられる書類です。

派遣元管理台帳は、派遣スタッフを守ることはもちろんのことですが、実際には人材派遣会社自身の運営を守ることにも重要な役割を果たします。

情報の保管

派遣元管理台帳は、派遣契約の終了日から3年間の保管が義務付けられています。派遣元管理台帳の作成日からではなく、派遣契約の終了日から3年間という点に注意してください。

また、これまでの派遣労働契約などに関する資料は、基本的に紙媒体での作成と保管が義務付けられていましたが、この法改正によって電子媒体での作成と保管も認められるようになりました。

これにより、資料の作成と保管が容易になっただけでなく、どこからでもオンラインで資料を閲覧したり、作成したりすることが可能です。現在では様々なクラウドサービスによって、派遣元管理台帳のフォーマットが用意されています。このようなクラウドサービスを利用することで、より確実に資料を作成・保管でき、セキュリティ対策も万全となるでしょう。

罰則(派遣元)

派遣元管理台帳を所定の方法により作成、記載又は保存しなかった場合は、派遣法第61条第3号に該当し、30万円以下の罰金に処せられる場合があります。また、その他にも労働者派遣許可の取消し、事業停止命令、改善命令の対象となります。実際に罰金等の司法処分を受けた場合には、許可の取消しや事業廃止命令の対象となる可能性もあるので、厳重に注意しなければなりません。人材派遣会社には様々なリスク管理が必要ですが、派遣元管理台帳を法律の規定どおりに作成し、保管することも重要なリスク管理なのです。

派遣元管理台帳と派遣会社

派遣元管理台帳は、ただ法律に定められた通りに作成し、保管すれば良いという資料ではありません。人材派遣会社が、派遣元管理台帳を派遣スタッフのケアに活用することで、派遣会社としてのサービスの向上や、派遣スタッフおよび企業の満足度向上に役立てることも可能です。だからこそ、この派遣元管理台帳を「義務」という観点でなく、もっと前向きに活用していただきたいのです。

マッチングッドでは、派遣先管理台帳のフォーマットをダウンロードいただけますので、ぜひ有効にご活用ください!

まとめ

いかがでしたか?人材派遣会社における、派遣元管理台帳の重要性がおわかりいただけましたか。

派遣元管理台帳とは、派遣スタッフの労働に関する様々な情報を記載して保存する書類です。この派遣元管理台帳と、派遣先が保有する派遣先管理台帳により、派遣スタッフと人材派遣会社、派遣先企業の関係が円滑になるだけでなく、双方の立場を安全に保つことができます。また何かのトラブルが起きた際にも、これらの台帳を活用することで速やかな対処が可能となるでしょう。

皆さんもこの記事を参考にして、トラブルなく派遣事業を運営してください。

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