人材業界トレンド挑戦する派遣・紹介会社たち

派遣スタッフ数7年で10倍増の秘訣。PEOモデルで実現する”あなた”にとって必要な会社

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NFA 大崎社長

人手不足により、人材獲得競争が激化する中、集客に悩む派遣会社も多いのではないでしょうか。そのような時代にも関わらず、株式会社エヌエフエー(以下、NFA)は7年で派遣スタッフ数を10倍以上に増やすという驚異的な成長を遂げました。その背景には、PEOモデルを活用した独自の経営戦略がありました。同社の大崎社長に、派遣業界の常識を覆す取り組みと、派遣スタッフの雇用を守る独自の方法について話を聞きました。

スタッフ数10倍の裏にあるのは「スタッフが働き続けられる仕組み」

2006年、大崎社長が創業した派遣会社NFA。当初は一般的な派遣会社として事業を開始しましたが、その成長の軌跡は業界の常識を覆すものとなりました。特に注目すべきは、2016年から2023年にかけての7年間で、派遣スタッフ数を10倍以上に増やすという驚異的な成長を遂げたことです。

「2006年から2016年までは、100人になるかならないか……という感じでした。しかし、その後の成長は目覚ましいものとなりました。今では、スタッフの数は1500人ほどとなっています」。

この急成長の源泉は同社独自の「PEOモデル」があります。PEOとは「Professional Employer Organization」の略で、「習熟人財雇用組織」あるいは「プロの雇用組織」と訳されています。クライアント企業と共同雇用主になる企業が労働契約を締結し、クライアント企業の人事関連業務を代行するサービスで、クライアント企業は単独で雇用責任を負うことなく、人材の活用ができます。アメリカなどでは普及している雇用モデルですが、日本では耳慣れない言葉です。

「アメリカのPEOモデルを倣ったというよりも、NFAを経営する中で、派遣ビジネスやスタッフと向き合っていった結果たどり着いたスタイルが、アメリカのPEOモデルに類似しているね、と言われました。そこでアメリカのPEOモデルの事例も研究しつつ、弊社ならではのPEOモデルを確立させていきました」と大崎社長は説明してくれました。

このPEOモデル実践により、NFAで働いたことのあるスタッフは他社に行かず、高い定着率となっています。このような成果を上げているNFA式PEOモデルとは、どのようなものなのでしょうか。

成功の秘訣は「NFA式PEOモデル」

NFAのPEOモデルは、日本国内の法令や雇用慣習などを踏まえた、独自の就労モデルです。

NFA式PEOのポイントは2点あります。

1点目は、地域密着の事業展開(ドミナント戦略)を取っている点です。

本社のある蒲田を中心に、勤務地は通勤圏内のみに地域を限定し、「地域の人材を、地域の企業に」を合言葉に、地域の人事部として、職住接近の働き方を大切にしています。

さらに2点目は「長期で雇用されたいと考える人の雇用を守る」ことを念頭に置き、“止まり木”としての研修センターを整備している点です。派遣先企業が決まるまでの間、この研修センターで働きながら、リスキリング(キャリアアップ)の機会を創っているのです。これにより、スタッフは継続した雇用と、それによるキャリアアップが可能となります。

「一般的には登録した後や、派遣期間終了後にすぐに希望する条件の派遣先企業がなかった場合、無収入で仕事の紹介を待つことになるかと思います。でも、当社は請負の仕事や当社の事務業務などをお願いすることで、派遣先がない期間も収入を途切らせないように仕事をご用意しています。請負の仕事がいわゆる「研修センター」となっています。希望者にはリスキリングの機会として、未経験業務をゼロから教え、新たな職務経験を積んでもらっています

派遣の仕事はある意味人数制限があります。5人必要だと言われた企業へ6人も7人も必要ありません。しかし、委託や請負であれば、人数の縛りがありません。5人でやるのが適切な仕事も、6、7人でやってもいいのです。逆もまた然り。この柔軟性を活かし、派遣x請負の仕事を用意することで、派遣スタッフの雇用を守りつつ、スキルアップの機会も提供しているのです」。

このビジネススタイルを考えたきっかけは、リーマンショック後に社会問題にもなった「派遣切り」でした。

「派遣切りと言われているけれど、切ったというよりも、更新しなかった企業が多かったんですよね。派遣会社も、どうにか仕事を用意しようとした結果、自宅からは到底通えないような派遣先しか用意できないという事態になりました。でも、仕事のために住むところを変えるのは、大変ですよね。結果、派遣で働けないとなった人たちが少なくありませんでした。

この現状を鑑みて『地域を限定しよう』と心に決めました。スタッフの人生を考えた勤務先や仕事を紹介することこそ、派遣会社の存在意義だと感じたのです。“人を右から左に流すだけの派遣会社であってはならない”と再確認しました。それで、NFAでは働き口の確保と、リスキリングのための請負現場を用意し、希望者には必ず働くことができる環境を整えたんです」。

大手通販会社や空港など大口優良顧客が次々依頼する理由

NFAの評判は、派遣先企業の間ではすこぶる高いのだそう。その理由として大崎社長は「仕事をもらったら、必ず希望の人数を用意できること、それからそのスタッフの質が高いこと」と説明します。

実はこれには理由があります。大崎社長が“止まり木”と説明する委託や請負の仕事は、リスキリングのための研修センターとしての機能以外に、スタッフのタレントプールであり、スクリーニング機能となっているのです。

「急な派遣要請でも、すぐに頭数を揃えられるのは、委託や請負で働いてくれているスタッフを派遣できるからです。それだけでなく、すでに私たちが研修し、働く態度などもお墨付きのスタッフを派遣できます。取り引きが初めての会社へ最初に派遣するスタッフは、ある意味我々の顔です。だからこそ、委託や請負で働いてくれているスタッフから、派遣するようにしています。自信をもって送り出せるので、安心です」。

そんな評判を聞き、2016年に大型の依頼が舞い込みます。大手通販会社の川崎物流センターからの求人依頼はなんと100名!

「ちゃんと100人揃えましたよ。もちろん、さすがに全員すぐにとはいかない数でしたけれど、それは先方もわかっていたので。少数精鋭の仕事ができるスタッフにこのときも初陣として行ってもらったので、良好な関係構築ができました」。

最近では、インバウンドで沸く地元の空港からも派遣依頼が来ています。

「オリンピックのときも依頼いただきました。オリンピックの選手を迎える空港スタッフの仕事は人気で、求人に惹かれて登録してくれた人が多くいました。その後もコロナ禍が落ち着いていく中、空港の仕事も増えています」。

良い人を派遣する、そしてそれが評判と信頼になり、良い求人がくる。NFAには、良い循環ができているのです。

NFAが目指す、これからの人材派遣の新しい形

「NFAは、経営理念から始まった会社なんです」と大崎社長は語ります。大学を卒業後、経営コンサルティング会社に就職した大崎社長は20代でフリーランスとして独立しました。「青雲の志って言うとこそばゆいけれど、いい国を作りたい、貢献したいと、心から思っていたんですよ」。独立当初はクライアントも取れず、派遣で仕事をしたこともあったという。しかし、努力と工夫を重ね、フリーランスのコンサルタントとしては、食べていけるようになっていったのだそう。しかし、それを事業化して大きく広げていくことは難しいと感じたそうです。

「私一人が食べていくだけでは、国を良くするほどのインパクトは出せないですよね。だから、大きな事業をやりたかった。何の仕事なら、スケールしやすいかを考えていたんです。NFAを作った動機は、派遣事業をやりたいとか、人材やキャリアに関わりたいという動機ではなくて、多くの人を幸せにしたい、良い国にしたい、そのためにどんな事業をすればいいんだろう。そういう思考回路でした」。

そこで最初にやったことは、経営理念の決定でした。

「経営理念は大切です。結局、何を目指すかによって、パフォーマンスの天井が決まってしまう。だから、最初に経営理念を決めようと思ったんですね」。

NFAの経営理念は“This company is needs for you! あなたにとって必要な会社”。「“みんな”の役に立つという表現だと、マスマーケティングみたいですよね。そうじゃないんです。一人ひとり大切な“あなた”の役にたちたい。それで、Needs For Anataの頭文字をとって、NFAにしました。普通ならNFYなのでしょうけれど、日本語で“あなた”のほうが『自分のことを言ってくれている』って思ってもらえるでしょう」。

経営理念を考えていく中で、自ずと「何よりも大切なのは、人材だ」と気付いた大崎社長は、派遣事業で起業します。このような過程で立ち上げられたNFAはその志を中心に経営戦略を展開し、今の地位を築きました。

今後の展望を聞いてみたところ、「これからは、雇用を守ってほしいと思わない人が一定数いるでしょう。だからこそ、そんな人たちにとっても必要な会社になりたい」という回答が。

終身雇用が終焉を迎え、人材不足が深刻化する中で、雇用に対する考え方が変わってきています。フリーランスとして、プロジェクト単位で仕事をすることが珍しくない時代に、「雇用を守ります」と言っても、それを必要だと感じない人も登場しつつあるというのが、大崎社長の考えです。

「若い世代の考え方に合致した、新しいPEOの形、PEO2.0を今後は考えていきたいと思っています。派遣という働き方を、ネガティブに捉える人もいるけれど、それは違う。自分らしく生きたい人、やりたいことを仕事にしたい人にとって、良い選択肢なんですよ。それを証明できる会社でいたい」と力強く語ってくれました。

大崎社長プロフィール

大崎 玄長(おおさき もとなが)氏

株式会社エヌエフエー代表取締役


 1973年大阪府生まれ。中央大学卒業後、大手経営コンサルティング会社勤務、独立コンサルタントを経て、2006年東京都大田区にて地域密着型派遣会社株式会社エヌエフエーを設立。設立以来、500社を超える取引企業と累計3万人を超える応募者や派遣社員のサポートに従事する中、派遣の魅力と無限の可能性に気づき、派遣社員こそ安定した働きかたでこれからの勝ち組であることを確信する。近年は「失業ゼロ社会の実現」を目指して「地元のお仕事紹介サイト『ハロ!わくおさん』」を運営しつつ、「雇用不安なき成長社会の実現」を目指した新しい働きかたの仕組み「日本版PEO(習熟人材雇用組織)」の確立に努めている。

株式会社エヌエフエー:https://www.nfa-g.com/

新たなワークスタイルを作るためのメディア「ハロわくスタイル」:https://style.860903.jp/

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