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現場で培ったノウハウが拓く、障害者雇用の新しい可能性~障害者を企業の本業に貢献する戦力へ~ 

株式会社綜合キャリアトラスト CVT事業部 ゼネラルマネージャー 大野 伸太郎 氏ー現場で培ったノウハウが拓く、障害者雇用の新しい可能性

障害者雇用の歴史的転換期 — 「数合わせ」から「戦力化」へのシフト

――まず始めに、御社がグループ内で担われている役割と、近年の障害者雇用を取り巻く環境の変化についてお聞かせいただけますか?

大野 伸太郎 氏(以下、大野氏):弊社はキャムコムグループの特例子会社として、弊社を含むグループ内6社の障害者雇用を統括・推進しています。現在、約170名の障害のある社員が在籍しており、そのうちおよそ9割は精神障害や発達障害をお持ちの方々です。
ご質問の通り、障害者雇用は今まさに大きな転換期を迎えています。かつては法律で決められた法定雇用率を満たすための「人数の確保」という側面が非常に強く、どちらかといえばコンプライアンス対応としての雇用が主流でした。しかし、厚生労働省からも「雇用の質」を重視する明確な方針が示されたことで、流れは大きく変わっています。

――単に人数を揃えるだけでなく、どのように働いてもらうかという「質」が問われる時代になったわけですね。企業の現場では、具体的にどのような変化が見られるのでしょうか?

大野氏:一言で言えば、障害のある方を企業の「戦力」として捉え、活躍してもらう考え方が広がっています。障害のある方の業務を、単なる作業ではなく企業の事業活動に直接活かし、その成果や能力の発揮を適正に評価する。そして、本業にしっかり貢献する人材として雇用する企業が増えているのです。
弊社では設立当初より、障害の有無にかかわらずすべての社員を戦力化することを基本方針として掲げてきました。多様な障害のある社員が第一線で活躍している現場だからこそ、得られた知見やノウハウがあります。私たちはそのノウハウをもとに、障害のある方の能力発揮と本業への貢献を重視し、企業の障害者雇用を支援するコンサルティング事業も展開しています。

高い定着率を生み出す「体制」と「専門性」の融合

――精神障害や発達障害の方を多く雇用されているとのことですが、継続して長く働き続けられる環境づくりにはどのような工夫があるのでしょうか?

大野氏:最大の強みは、障害者雇用を支える現場の組織体制にあります。オフィス環境自体は一般的な企業と変わりませんが、弊社では約10名ごとに1名のチームリーダーを配置するチーム制を採用しています。
このチームリーダーは、単に業務の進行やスケジュールの管理を行うだけではありません。障害のある方の仕事上の悩みや体調面の変化に関する相談役となり、個々の障害特性を踏まえた適切なサポートをリアルタイムで行える体制を整えています。

――10名に1人という手厚いフォロー体制があるのですね。ハード面や制度面ではいかがですか?

大野氏:はい。静かなBGMを流してリラックスできるオフィス空間を作ったり、無理なく働き続けられるよう時短勤務制度などの柔軟な働き方を取り入れたりしています。
日頃から小さなことでも相談しやすい関係性を構築し、体調やメンタルの変化に早期に気づける仕組みを整えた結果、定着が難しくなりがちな精神障害や発達障害者を中心とした雇用において、入社から3年間の定着率が80%という非常に高い水準を維持できています。

仕組みを整え、定着率80%を維持していると語る大野氏

――定着率80%は素晴らしい実績ですね!それを支えるサポートスタッフの方々にはどのような特徴があるのでしょうか?

大野氏:ここが弊社の大きな特徴なのですが、現場を支える社員には、社会福祉士やジョブコーチといった福祉分野の専門知識を持つ人材だけでなく、一般企業での営業やバックオフィス経験を持つ人材も多数在籍しています。
これは、ビジネスの視点と障害配慮の視点の双方から重層的に組織を見たいと考えたからです。障害者雇用も企業活動の一部である以上、「事業として成果を出すこと」と「社員が安心して働けること」の両立が不可欠です。配慮だけに偏っても、ビジネスの合理性だけに偏ってもうまくいきません。双方をバランスよく理解したメンバーがサポートに携わることで、高い生産性と働きやすさを両立した組織づくりを実現しています。

現場伴走型コンサルティング — 企業の課題をトータルで解決

――自社で培った豊富なノウハウを活かして企業向けの支援も行われているとのことですが、具体的にどのようなサポートを提供されているのですか?

大野氏:弊社の支援は、まさにゼロからの立ち上げから運用までトータルでカバーしています。障害者雇用を担当する専門チームの立ち上げ支援をはじめ、業務の切り出し、採用支援、業務マニュアルの整備、現場担当者へのアドバイス、さらには採用後の運営サポートまで多岐にわたります。
特長的なところでは「現場への伴走」も行っています。弊社の支援スタッフが実際の現場に常駐し、企業側の担当者と障害のある社員の双方をトータルでサポートします。業務の進め方や指示の出し方、日々の面談や相談対応まで、現場に寄り添いながら伴走支援を行っています。

――常駐型の伴走支援まで行うのは心強いですね。支援を行う上で、最も重視されている考え方は何でしょうか?

大野氏:私たちが最も大切にしているのは、「数合わせのための雇用」ではなく、「障害のある社員が企業にどのような価値を生み出せるか」を徹底的に設計することです。
その企業の本業に貢献できる役割を明確に定義・設計することで、障害者雇用を単なる法令対応や義務感で行うものから、企業価値そのものを高める戦略的な取り組みへと引き上げていく。それが私たちのミッションです。
さらに、定着率を高めるための最新アプローチとして、LINE公式アカウントを活用した人材定着・離職防止ツール「マイリク」といった新しいサービスの導入・活用も推進しており、常に時代の変化に合わせた施策を取り入れています。

単純作業から高度スキルへ — 一人ひとりの「得意」が拓く未来

――業務内容の面でも、時代の変化とともに求められるスキルが変わってきているのでしょうか?

大野氏:まさにその通りです。社会全体の考え方もこの十数年で大きく様変わりしました。かつて障害者に割り当てられる業務といえば、簡単なピッキングや単純なデータ入力、清掃などが中心でした。しかし、現在は企業の業務効率化やデジタル化が急速に進み、単純作業自体が減少しています。
その代わり、ITスキルや専門性を活かせる高度な業務が増加傾向にあります。実際に弊社でも、精神障害や発達障害のある社員がデータ分析やシステム開発で高い成果を上げたり、未経験から研修を経てAIやアプリエンジニアとして育成され、現場で目覚ましい活躍を見せるケースも少なくありません。

――未経験からのエンジニア育成やデータ分析まで!障害のある方の可能性は私たちが思っている以上に広がっているのですね。そのような高いパフォーマンスを引き出すためのマネジメントのコツはあるのでしょうか?

大野氏:最も重要なのは、「何が苦手か」ではなく「何が得意か」に目を向けることです。
例えば、口頭での指示を正しく理解するのが苦手な方であれば、口頭ではなく要点を整理して伝えるなど、コミュニケーション方法を工夫します。一人ひとりの特性に合わせたコミュニケーションを行うだけで、その人が本来持っている能力を十分に発揮できる環境が整います。
適切な環境さえ整えば、依頼された業務をただこなすだけでなく、分析方法や資料の見せ方まで自ら主体的に提案してくれるようになります。企業にとって「なくてはならない不可欠な戦力」として成長していくのです。

――「苦手」のカバーではなく「得意」を活かす環境づくりが、社員と企業の双方に大きなシナジーを生むのですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。

大野氏:私たちは、自らが障害者雇用を実践し、現場で成果を生み出してきた実体験があるからこそ、机上の空論ではない「現場で成果を生む仕組み」をご支援できます。
障害のある方が自身の能力を十分に発揮して活き活きと働き、企業もまた新たな戦力を得る。この双方にとって真に価値のある障害者雇用を当たり前にしていくために、私たちが現場で培ってきた知見やノウハウを、これからも広く社会へ還元し続けていきたいと考えています。

プロフィール

株式会社綜合キャリアトラスト CVT事業部 ゼネラルマネージャー 大野 伸太郎 氏

大野 伸太郎

株式会社綜合キャリアトラスト

CVT事業部 ゼネラルマネージャー

2004年に株式会社綜合キャリアオプションへ入社、北陸ブロックマネージャーとして人材派遣事業に携わる。2015年から株式会社綜合キャリアトラストにて就労移行支援事業所の新規開設および事業所運営を担う。その後、福岡県・群馬県・香川県などの障害者雇用支援事業の統括を通じ、採用・職域開発から就労定着、テレワーク導入、企業コンサルティングまで、障害者雇用を一貫して支援する実践的なノウハウを培う。
現在は障害者雇用部門のゼネラルマネージャーとして、障害のある社員が事業を支える人材として活躍できる組織づくりを推進中。定型業務の切り出しや効率化にとどまらず、生成AIやノーコードツールを活用し、未経験から付加価値の高い業務を担える人材の育成に取り組んでいる。こうした取り組みを通じて、障害のある社員の職域創出と能力開発を企業の業務課題の解決につなげ、双方を両立させる持続可能な障害者雇用モデルの構築を進めている。