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野村真央の<深化する人材紹介論> 2026年の人材紹介業界トレンド:AI共生時代の勝ち筋と業界再編の深層

株式会社AGENT SUCCESS 代表取締役野村真央氏

DiSPA!編集部です。今回より株式会社AGENT SUCCESS代表の野村真央氏によるコラムが始まります。野村氏は人材紹介事業の立ち上げに特化した支援会社として活躍されています。その野村氏の第1回目のコラムは「2026年の人材紹介のトレンドについて」。非常に興味深い内容となっておりますので、最後までお楽しみください。


初めまして。AGENT SUCCESS代表の野村真央です。私は人材紹介会社の支援という、業界内でも少し珍しい立ち位置で多くの転職エージェント様を支援しています。今回からDiSPA!で人材紹介業界の皆様のお役に立つコラムを不定期で連載して参ります。

まずは今後の人材紹介業界のトレンドについて、触れたいと思います。私は多くの転職エージェント様と接する機会がありますが、振り返れば2025年は「量的拡大」から「質的変革」への移行を感じる1年でした。

2026年はその変化がさらに加速し、人材紹介というビジネスモデルそのものが「再定義」されるフェーズに入ると私は考えています。これまでのような「スカウトを打って、面談して、マッチングする」というモデルは、AIの台頭によって大きな転換を迫られるでしょう。

今回は、2025年の振り返りを踏まえつつ、2026年に人材紹介会社が直面するトレンドと、生き残るための戦略についてお話しします。

2025年総括―AI実装とスキルベース採用による「二極化」

2025年は、長らく続く「人手不足による売り手市場」という追い風を受けつつも、紹介会社の「真の実力」がはっきりと可視化された1年でした。特に大きなトピックは、生成AIの「市場実験」が終わり、「実務への実装」へと一段階進んだことです。

求人票の生成や履歴書・職務経歴書の要約、パーソナライズされたスカウト文面の作成や自動送信は人材紹介事業の標準装備になりました。AIが標準装備になることで明確な二極化が進行しました。AIを使いこなし、浮いた時間を「候補者との深い対話」や「企業の本質的な課題抽出」に充てたエージェントが成約率を伸ばす一方で、単にスカウトの送付量を増やすなど浅い接点を増やしただけの転職エージェントは、候補者の「スカウト疲れ」という壁にぶつかり、返信率の低下に苦しむことになったのです。

また、「スキルベース採用」も進行しました。ジョブ型雇用の浸透により、企業からの採用 オーダーは「営業経験5年」といった曖昧なものから、例えば 「Hubspotを用いたインサイドセールスの経験」など、かなり具体的なものへと変化しました。これにより、紹介会社には候補者の経験を「スキル」として言語化し、企業と候補者双方にいかにマッチしているかを提案するコンサルティング力が求められるようになりました。

2026年の業界再編は「人材紹介×異業種」による新経済圏

2026年、人材紹介業は特有のビジネスという立ち位置から、大手企業を含む他業界の企業が「自社の採用およびサービスを展開するためのエコシステムを強化するための装置」へと変貌を遂げます。ここで注目すべきは、これまで人材を「買う側」だった大手事業会社の市場参入です。

大手企業による「内製化」と「外販化」の波

特定分野の専門スキルを確保するため、自社でエージェント機能を持ち、タレントプールを直接囲い込む「人材紹介事業の戦略的内製化」が進んでいます。さらに注目したいのは、製造業や金融業の大手が、自社の業界知見を武器に、同業他社やクライアント向けに人材紹介を開始する「外販化」の動きです。業界を熟知した「プロ」がエージェントとして参入してくることは、既存の総合型エージェントにとって相当な脅威となります。

M&Aの加速と「時間を買う」戦略

2026年のM&Aは、単なる規模拡大も目的ではありますが「アクハイアリング(人材獲得型買収)」が主目的となるのではないかと考えています。優秀なコンサルタント集団を丸ごと獲得し、そこに自社もしくは外注したマッチングなどを始めとするテクノロジーを融合させる。この「人×テック」の統合をスピーディーに行える資本力のあるプレイヤーが、市場のシェアを一気に塗り替えていく風潮が強まるのではないかと考えています。

AIエージェントの自律と「人間特有の価値」の再定義

2026年、テクノロジーによる効率化は落ち着き、次のフェーズに進むと私は考えています。これまでの「人間がAIを使う」段階から、AIが自ら思考し行動する「AIエージェント」が実務の基盤となる時代となります。

データベースからの候補者抽出、初期アプローチ、さらには面接の日程調整まで、事務的な「マッチング作業」の価値は大きく下がります。ここでキャリアアドバイザーに問われるのは、AIが導き出したデータや候補者との時間に、いかに「感情」や「動機形成」という人間ならではのスパイスを加えられるかです。

「データ上はA社が最適ですが、あなたのキャリア観と現在のライフステージを考えると、あえてB社に挑戦する面白さがあると思いませんか?」という、論理を超えた提案。あるいは、候補者の不安に寄り添い、意思決定する際の背中を優しく、かつ力強く押すこと。こうしたAIにはできない「感情の機微」に触れる領域こそが、紹介会社の主戦場となります。

データを駆使してマッチングしているイメージ

ミドル・ハイクラス市場の激変―「年齢の限界」を超え「スキル」を売る

若手層の絶対的な人口不足は、全ての企業にとって避けて通れない課題です。2026年、35歳以上のミドル層・シニア層への求人ニーズは過去最高水準に達します。しかし、これは単なる「人手不足の穴埋め」ではありません。

これまでは「転職回数」や「年齢」で選外とされやすかった層が、経験してきた職務内容によっては「即戦力」として再評価されます。ここで紹介会社が果たすべき役割は、企業に対して「年齢や転職回数ではなくスキルやコンピテンシーで評価すべきだ」と強く進言する、リクルーティング・アドバイザリー能力です。40代以降のキャリアの立て直しや異業種からの転職はもっと当たり前になります。求職者自身も気づいていない自分の「武器」を見出し、その市場価値を再定義してあげること、そしてそれを持って採用企業に提案することこそが、これからの転職エージェントの真価と言えるでしょう。

転職が成功して転職エージェントと求職者が握手しているイメージ

まとめ:「誠実さ」が最大の武器になる

最後に、最も重要なトレンドをお伝えします。それは「透明性と誠実さ」のブランド化です。大量のスカウトメール、求人しか紹介しないヒアリング面談などで、求職者は疲弊しています。彼らが求めているのは「AIが選んだ精度の高い求人」よりも、「求職者の人生を深く理解し、叱咤激励してくれる信頼できる人間」だと思います。

今や転職活動は人々の日常に溶け込み、いくらでも情報にアクセスできるようになったため、情報の非対称性を利用して、無理に成約に繋げる旧来型の人材紹介ビジネスは崩壊しています。求職者に対し、人材紹介をしてるからこそ得られる有益な情報を提供できないようでは、信頼関係を築くことは難しいでしょう。また、これからは、SNSやオウンドメディアを通じてコンサルタント個人の専門性や「人となり」、そして仕事に対するスタンスを発信し続ける「パーソナルブランディング」が、最大の武器になります。

「誰から紹介されるか」が問われる時代。私たち転職エージェント支援の立場からも、個々のコンサルタントが「信頼できるプロフェッショナル」として輝けるよう、全力でバックアップしていきたいと考えています。変化を恐れず、人間ならではの価値を磨き続けていきましょう。


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