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人材紹介事業の立ち上げ、その覚悟はあるか?明暗を分かつビジョンと事業設計とは

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株式会社AGENT SUCCESS代表取締役 野村真央氏 人材紹介の立ち上げ、その覚悟はあるか?

人材紹介ビジネスは、資本金とオフィスの要件を満たせれば免許が取得できるため、手軽に事業を始められると思われている一面があります。しかし、実際には志半ばで撤退する企業が後を絶たない、シビアな世界でもあります。

今回、DiSPA!編集部がお話を伺ったのは、人材紹介事業の立ち上げ支援に特化し、これまで30社以上の事業をゼロから立ち上げて成功に導いてきた株式会社AGENT SUCCESSの代表、野村真央氏です。

本記事では、野村氏自身のキャリアの挫折や、転職エージェント時代に抱いた葛藤、そして2025年以降の人材紹介市場の変化を踏まえながら、「これから参入する企業が取るべき勝ち筋」や「事業を軌道に乗せるための覚悟と投資判断」、さらには「次代の市場で生き残るための具体策」について深堀りします。

人材紹介事業の立ち上げを検討している企業や個人の皆様にとって、実践的なノウハウが満載のインタビューとなりました。新たな一歩を踏み出そうとしている方はぜひご一読ください。

人材紹介ビジネス特化型のコンサルティングとは

ーまずは野村様のこれまでの歩みと、現在の事業について教えてください
野村: 株式会社AGENT SUCCESS代表の野村真央です。私たちは、人材紹介業を新たにスタートさせる企業様に特化したコンサルティング事業を展開しており、間もなく3期目を終えようとしているところです。

これまでに支援させていただいた企業様は、累計で30社を超えました。業種や業態はバラバラですが、どのクライアント様も「人材紹介を自社の新しい柱として育てたい」という熱意を持たれているのが共通点です。

また最近、私が『人材紹介ビジネスの始め方』という本を出版したこともあり、事業の広がりを強く実感しています。これまでは東京のお客様が中心でしたが、出版を機に、大阪、名古屋、静岡、福岡など、全国各地からお声がけいただくようになりました。まさに今、日本全国へ事業を拡大していきたいと考えている、非常にエキサイティングなフェーズですね。

株式会社AGENT SUCCESS野村氏インタビュー

人材ビジネスに携わる上で重要な原体験とは?

ー野村様が「人材領域」に、深く向き合うようになった背景は何だったのでしょうか?

野村: 実を言うと、この業界に深く携わることになったのは偶然でして・・。新卒で入った不動産テックの会社で、たまたま新規事業である転職サイトの立ち上げメンバーに選ばれたのが始まりです。当時は人材ビジネスの知識はゼロでしたが、あの頃の経験が今のキャリアにつながっていますね。

大学の同級生が大手企業やメガバンクに就職する中、私は漠然といつか起業したいと思っていました。そんな感じで当時は「ベンチャーで一旗揚げてやる」と意気込んで入社したのですが、ほどなくしてカルチャーの壁にぶつかり、新卒1年目で転職活動を始めたのです。

ところが、いざ転職活動を始めると、現実は甘くありませんでした。学生時代ならノールックで書類通過していたのに、新卒1年未満での離職がこれほどまでにネガティブに映るのかと愕然としました。そうして書類すら通らない日々が半年ほど続きました。たった1年でこれほどまでに自分の市場価値が変わってしまうのかと、あの時感じたキャリアに対する底知れぬ危機感が、私の原体験になっています。

その後、苦戦しながらも、前職での転職サイトの立ち上げの経験を買われて、大手人材会社に入社することができました。あの時苦しんだ経験が、自分にとっては大きな転機というか、「キャリア」というものを考え続けるきっかけになりました。

大手人材会社では、2年半ほど就活生の支援や集客に没頭しました。自身の経験を糧に「自分のようにファーストキャリアで失敗する人をなくしたい」という一心で、就活生たちと向き合っていましたね。

その他にも、スカウトサイトの導入やデジタル集客の改善など、攻めの施策を提案しました。社内承認を得て予算を動かし、PDCAを回し続ける。この『0→1』や『1→10』に挑んだ日々が、起業家としてのベースを形作る大切な原体験になったと感じています。

当時私は25歳そこそこの若手でしたが、だんだん教える立場になってきていました。でも自分自身はまだまだもっと成長したいと思っていて、あえて背伸びをしてハイクラスのキャリアに関わりたいと思うようになりました。

それでその後、経営陣に特化した転職エージェントのスタートアップ企業へ転職しました。そこではCOOや管理部長などの人材紹介、新規事業の立ち上げや事業開発など、4年に渡ってさまざまな部署を経験しました。こうした新しい部署や事業の立ち上げに携わった後に、AGENT SUCCESSを起業することになりました。

なぜ転職エージェントから紹介事業の立ち上げ支援に転身したのか?

ーなぜ「紹介事業の立ち上げ支援」の道を選ばれたのですか?

野村:転職エージェントの現場での仕事は非常に刺激的でした。特に経営陣特化エージェントでは、20代半ばでありながら経営層やCOOといったハイクラス層の転職支援に携わり、背伸びをしながら必死に食らいついていきました。しかし、現場で実績を積むほど、モヤモヤした気持ちが大きくなっていったんです。

それは、転職エージェントという仕事が、どこまでいっても「仲介者」であって、「当事者」ではないという点でした。クライアントである経営者が語る事業の苦しみや喜びを、本当の意味で分かち合うには、自分自身がリスクを負って事業を創る側に行かなければならないと感じました。

それから、自分を「天才的なプレイヤー」だとは思わなかったことも大きいです。世の中には一人で億を稼ぐ凄腕のアドバイザーもいますが、自分はそっちのタイプではない。むしろ、どうすれば事業が再現性をもって回るのか戦略を立てたり、仕組みを構築したりすることに喜びを感じるタイプだったんです。自分の得意な「仕組み作り」と「人材領域の知見」を掛け合わせ、経営者のすぐ隣で共に事業を創りたいという気持ちで、「立ち上げ支援」をビジネスにしようと考えました。

2025年以降の人材紹介市場はどう変わるのか?

ー現在、人材紹介市場は非常に活況ですが、野村様はどう分析されていますか?

野村: 2025年は、まさに「異業種参入のピーク」でしたね。不動産やブライダル、物流といった既存の事業基盤を持つ大手企業が、自社のネットワークを武器に続々と人材領域に参入しました。年間3,000社の人材紹介会社が立ち上がる今のマーケットは、まさに人材紹介会社の戦国時代と言えます。

ただ、大手企業が参入したからといって、中小企業や個人事業主にチャンスがないわけではありません。むしろ逆です。大手が効率重視の大量生産モデルで動くなら、私たちは「徹底した特化」と「顔の見える発信」で勝負すればいいんです。ニッチな領域を掘り下げて、そこだけは誰にも負けない専門性を持つこと。そして、大手企業には組織の壁があり簡単には真似できない、SNSやYouTubeでの「個人のブランディング」を徹底することです。

今は大手スカウト媒体の料金改定などで業界全体に混乱もありますが、特定のプラットフォームに依存せず、自らの発信力で求職者を惹きつけられる会社は、これからの10年を生き抜いていけると確信しています。

【これからの人材紹介市場で勝つための3箇条】

  • 大手企業に対抗するなら、「領域特化」の独自路線が不可欠
  • SNS・YouTubeなど「個の発信力」が集客の鍵
  • 特定の媒体やプラットフォームに依存しすぎないリスク管理

成功に不可欠な「覚悟」と「投資」とは

ー成功する企業と、撤退に追い込まれる企業。その決定的な違いはどこにありますか?

野村:結局のところ、テクニック以前の「なぜこの事業をやるのか」というビジョンの明確さだと思います。人材紹介は極めてシンプルなモデルだからこそ、トップが明確な意志を持って「この領域の課題を解決するんだ」と本気で言い続けられる会社は、組織の熱量が落ちません。私の元に相談に来られる方の中でも「この業界の採用難を救いたい」と強い想いを持っている方は、やはり成長が早いです。

一方で、よくある失敗パターンは「人材紹介はお金がかからない」という誤解から始まっています。専任の担当者を置かず、既存業務の片手間でやらせてしまったり、集客のためのマーケティング予算を惜しんだりするケースです。

他の新規事業であれば、プロダクト開発やマーケティングに数千万円かけるのが当たり前なのに、人材紹介になった途端「お金をかけずにできるはずだ」と思ってしまう。しかし、今は求職者を獲得するのにも相応のコストがかかります。最初から大所帯にする必要はありませんが、まずは決めた領域にリソースを全投下し、掘り切る。その「やりきる覚悟」が、0から1を作るフェーズでは何よりも重要です。

【人材紹介ビジネス立ち上げで失敗する企業の共通点】

  • 明確なビジョンがない
  • 専任担当を置かず片手間でやる
  • マーケティング投資を渋る

人材業界の未来と支援の理想形

ーこれから、どのような支援を広げていきたいですか?

野村: 私たちが目指すのは、型にはまったマニュアルの提供ではなく、一社一社のクライアントに合わせた「フルカスタマイズ」の支援です。
最近では、本業の採用難を自ら解決するために紹介業を始める建設会社様など、新しい形の支援も増えています。そこでは、単なる人材紹介業のノウハウだけでなく、会社全体のブランディングや経営戦略にまで踏み込んだ深いパートナーシップを築いています。

大手コンサルティング会社が提供するようなパッケージ型の支援は効率的ですが、クライアントの「本当の想い」とズレが生じることもあります。私は、クライアントが持つ背景や強みを丁寧に紐解き、最も輝ける場所を一緒に見つけたいと考えています。

また、私はクライアントには「ハイクラス領域」の人材紹介の挑戦を推奨しています。難易度は高いですが、その分、介在価値を発揮しやすいからです。未経験層の紹介に留まらず、より専門性の高い、社会的なインパクトの大きいマッチングを生み出せるエージェントを増やしていきたいと考えています。

人材業界は今、情報のオープン化が進んでいます。かつてのように自社のノウハウを隠し持つのではなく、エージェント同士の繋がりを強め、切磋琢磨し、みんなで市場全体を大きくしていく。私は、そんなオープンなコミュニティを創っていきたいと思っています。その中心にAGENT SUCCESSがいられたら、これほど嬉しいことはありません。

株式会社AGENT SUCCESS野村氏と著作「人材紹介ビジネスの始め方」

まとめ:その「覚悟」が、誰かの未来を変える一歩になる

人材紹介ビジネスの立ち上げを成功に導く鍵は、次の3点に集約されます。

  • 「なぜやるのか」という揺るぎないビジョン
  • 大手に負けないポジショニング=特定領域に集中する戦略
  • 集客と仕組み化に向けた、適切な初期投資


現在、人材紹介市場は大きな期待を集める一方で、かつてない厳しさにも直面しています。参入障壁の低さの裏には、労働人口の急減や競合他社との熾烈な戦いが待ち構えています。

もしあなたが今、人材紹介事業の立ち上げを検討しながらも、一歩踏み出せずに迷っているのなら、野村氏が説く「覚悟」を、改めて自分自身に問いかけてみてはいかがでしょうか。

「なぜ自分はこの仕事がしたいのか」その問いの先に「誰かの人生を後押ししたい」「この業界の課題を解決したい」という純粋で明確なビジョンがあるのなら、市場がどれほど変わっても、あなたの介在価値が揺らぐことはないでしょう。

まずは情報を集め、先人の知恵に触れることから始めてください。野村氏の著書も、その一助になるはずです。一人で抱え込まず、プロの視点を取り入れることで、きっと進むべき道が開けてくるでしょう

あなたの挑戦が、誰かの新しいキャリアを切り拓く光となることを、心から応援しています。

プロフィール

株式会社AGENT SUCCESS 代表取締役 野村真央氏プロフィール写真

野村 真央 氏

株式会社AGENT SUCCESS

代表取締役

慶應義塾大学卒業後、スタートアップ×ハイクラス転職エージェントの株式会社WARC及び外資系人材会社・アデコ株式会社にて人材紹介部門の立ち上げに貢献。人材業界歴は10年目となり、学生〜ベンチャー企業の経営層まで幅広く支援。

2023年株式会社AGENT SUCCESSを創業し、人材紹介事業の免許取得〜事業計画や戦略策定、エージェントの教育など各社の課題に合わせた人材紹介事業部の立ち上げ支援サービスをハンズオンで展開中。

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