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AI時代の人材紹介ビジネスはどう変わる?人材業界の動向と展望を聞く

カタリストエージェント代表取締役 勝田裕氏

人材ビジネスに携わり25年の経歴をお持ちで現在は人材紹介業界特化の転職エージェントである株式会社カタリストエージェントを経営する勝田 裕氏。これまでの10年で起きた人材ビジネスの出来事を振り返りながら、昨今のAI時代における人材紹介業界の動向と、未来への展望についてお話を伺いました。

人材業界25年以上のベテランが語る

まずは勝田様のご経歴をお願いします。

勝田氏: 私は人材業界で25年以上働いております。最初は人材派遣会社のアデコ株式会社での派遣営業からキャリアをスタートさせ、その後株式会社リクルートエイブリック(現・株式会社リクルート)にて多様な人材紹介ビジネスに従事してきました。直近は株式会社ジェイエイシーリクルートメントにて管理職やエグゼクティブクラスの人材紹介に携わるとともに、部門長として組織マネジメントなども経験しております。

2021年に株式会社カタリストエージェントを設立し、現在は人材紹介業界に特化した転職エージェントとして、人材紹介業界の方々のご支援を中心に事業を行っております。

お客様が人材紹介会社様で、求職者も人材紹介業界の方なのでしょうか

勝田氏: クライアントは人材紹介業界の企業がメインとなりますが、求職者の方は現在人材紹介業界で働いている方はもちろん、未経験でこの業界にチャレンジしたいという方ともお会いをしております。
これまでの人材紹介業界への知見を活かし、企業・個人双方のサポートをさせていただいています。

業界の動向:事業者数が急増し「過当競争」に

今の人材紹介業界の動向や実態をどう見ていらっしゃいますか?

勝田氏: ここ10年くらいを振り返ると人材紹介業界の事業者は急激に増えています。現在、有料職業紹介事業の許可をもつ会社は日本で約3万社もあります。10年前は約2万社でしたので、この10年で1万社ほど増えていることになり、かなり過当競争になっているという印象です。

なぜそんなに増えているのでしょうか?

勝田氏: 背景の一つとして、人材紹介ビジネスがある意味で簡単にできるようになったと捉えられている面が大きいと思います。具体的にはいくつかの大手スカウトサイトをうまく活用すればなんとかなるんじゃないか、という考えで進出する会社が増えています。実際に最近では異業種から人材紹介事業に進出するケースがとても増えています。

また、先行投資があまりかからない業種ということもあり、私のように小規模事業者として起業するケースも非常に多いのも特徴です。

このようなことが重なり、現在は人材紹介の事業者は過当競争に陥っていると言えます。
一方でこうした業界の構造には問題点もあると感じています。

ー どういった点が問題なのでしょうか?

一言で言えば今の多くの人材紹介会社はスカウトサイトに依存し過ぎているのです。スカウトサイトなどのプラットフォームができたことで人材紹介がやりやすくなったことは間違いないですが、一方でプラットフォームの利用料や決定した際の手数料などはスカウトサイト側が決めています。

先日、大手スカウトサイトがこの手数料を大幅に改定するということが話題となりましたが、多くの人材紹介会社はそうした動きに従わざるを得ないのが現状です。

人材紹介会社事業者の過当競争への問題提起

AIが代替する業務:マッチングから面接まで

過当競争が進む中、AIは人材紹介業界をどのように変えていくとお考えですか?

勝田氏: 実はもう既に、今まで人が介在すべきだと考えられていた業務のほとんどが、AIで代替できるようになってきています。例えば、マッチングや人材のスカウト業務などはこれまで人が介在することに価値がありましたが、今ではそのほとんどの部分がAIで実行可能です。

その他にも、求職者の職務経歴書作成を転職エージェントがアドバイスすることも一つの役割でしたが、これも今では簡単なキーワードを入力するだけでレジュメが出来上がるようなレジュメ自動作成サービスも登場しています。このように、AIが導入されることで、今まで人材紹介のコンサルタントが担っていた仕事の多くが、AIサービスに置き換わっていくという流れが起きていると考えています。

 AIの活用で「これは驚いた」という具体的な事例はありますか?

勝田氏:驚いたサービスで言えば「AI面接官」というものがあります。人が介在せず、AIが面接を行うサービスです。これは24時間365日対応できるという点で非常に画期的だと思います。AIが候補者の話す内容や表情を読み取ってスクリーニングを行うサービスだと認識していますが、こういったことまでAIでできるようになったことには、少し驚いています。

AI面接官の登場に驚いた

AIに代替されないコンサルタントの「人間力」

ー 今後、人材紹介業界はAIに代替されていくと思われますか?

勝田氏: マッチングやスカウトといった部分は、今後はほぼAIに代替されていくでしょう。単にオペレーショナルな業務を行っているだけでは、その多くがAIに取って代わられると思います。

だからこそ、重要になるのは「AIに代替されない存在」になることだと考えています。つまり、AIではできない部分を人間がしっかりと支援していく必要があると考えています。

ー AIではできないこと、とは具体的にどのようなことでしょうか?

勝田氏: まず、企業や求職者から「第一想起」される、つまり「この人に相談しよう」と企業や求職者から一番に思い出される、信頼される存在になることが非常に大事だと考えています。例えば、独自のネットワークで求人を獲得できる力や、求職者からの紹介が多いといったコンサルタントであることです。

次に、AIがマッチングを行ったとしても、その情報が求職者にとってどれだけ重要かまでは判断が難しい部分があります。そういった情報に優先順位をつけたり、求職者一人ひとりの考えに沿った情報提供をしたりすることも、人間のコンサルタントとして大事な役割です。

そして、AIにとって最も難しいと感じるのは、人の心を理解し、その人の背中を押してあげられる存在になることだと思います。人材紹介の仕事は、企業にとっても求職者にとっても、最後は「人」が決断するビジネスです。この決断をしっかりと支え、後押しするようなアドバイスをしていくことこそ、AIには代替できない、私たちが大事にすべき点だと思います。

人の心を理解し、その人の背中を押すのはAIではなく人間の役割

企業側のAI活用状況:進む「二極化」

ー 企業側のAI活用は進んでいるのでしょうか?

勝田氏: 人材紹介会社のAIの活用については、非常に積極的に活用している会社と、そうでない会社に二極化している印象です。業務の効率化や生産性向上にAIを活用している会社がある一方で、旧態依然としたやり方で、すべてアナログで業務を行っている会社も少なくありません。

「業務効率化のためにAIを使いたいが、会社が許可してくれない」というケースはよく聞きます。会社側としては個人情報の観点やリスク管理から制限している部分もあると思いますが、これからはAIを業務効率化に活用した上で、人がやるべきことに集中していく、という姿勢が大切になるのではないでしょうか。

ー 積極的にAIを活用している人材紹介会社の具体例を教えていただけますか?

勝田氏:AI活用が進んでいる企業ですと、過去の成約事例を生成AIに学習させ、自社の「勝ちパターン」をAIに学習させるといった取り組みがあります。そして、類似の求人が出た際に、AIが自動的に自社のCRMやデータベースから最適な候補者をリストアップする、そんな仕組みを構築している企業も出てきてます。

また、面談や商談の場面でAIを活用している事例もあります。会話が自動で文字起こしされ、その内容をAIがリアルタイムで分析し、商談の流れに合わせてAIが適切な求人をレコメンドする、といった新しい仕組みを構築している企業も出てきています。

最後に:AI時代を生き抜く人材紹介会社へ

ー 最後に、人材紹介会社や人材紹介業界へのメッセージをお願いします。

勝田氏:AIの進化が進む中で、人材紹介会社として大事なのは、「AIでできること」と「人が介在してやるべきこと」を明確に分けて取り組むことだと考えています。今まで人がやるべきことだったものがAI に代替されていくという流れの中であっても、やはり私は「人間力」が一番大事だと思っています。

弊社のミッションは「心をつなぎ、人と企業の未来をつくる」としているのですが、最終的に人材ビジネスの仕事というのは、どんなにAI化が進んだとしても、相手の心をしっかりと理解し、企業と求職者の方の未来を創っていくことだと考えています。

この点を大切にして、AIを最大限活用しつつ、人間でしかできない価値提供を追求していくことが重要だと考えています。

ー AIも大事だが、最後は人間力、ということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

AIも大事だが、最後は人間力

まとめ:人の心に寄り添うことは人にしかできない

今回、人材紹介業界のベテランである勝田氏のお話を伺い、AIがもたらす変化のスピードに改めて驚いた方も多いのではないでしょうか。

マッチングやスカウトといった「人が時間をかけていた業務」がAIに代替され、業界の過当競争に拍車がかかっているという現状は、危機感すら覚えます。

しかし、勝田氏が強調していたのが、AI時代以降もずっと続く「人間力」の重要性です。AIがどれだけ精度の高い情報を提供しても、「その情報に優先順位をつけること」や、「人の心に寄り添い、人生の決断の背中を押してあげること」は、やはり人間にしかできないことです。AI時代だからこそ、コンサルタントとして「誰に相談したいか」と問われた時に、第一想起される存在になることが、何よりも大切なのだと再認識できたインタビューとなりました。

AIを単なる「業務効率化のツール」と捉えるか、「顧客への価値提供を最大化するための武器」と捉えるかで、この業界の未来は大きく変わるでしょう。

AIによって解放された時間を使って、いかに「心をつなぐ」仕事に集中できるか。そのための勝田氏からのメッセージは、人材業界で働く皆様にとって、非常に力強い指針になるはずです。

プロフィール

勝田 裕 氏(株式会社カタリストエージェント 代表取締役)

勝田 裕 氏

株式会社カタリストエージェント

代表取締役

1997年に株式会社キャリアスタッフ(現・アデコ株式会社)に入社し、派遣会社の営業としてキャリアをスタート。立川支社チームリーダー、吉祥寺支社長を歴任。

2004年に株式会社リクルートエイブリック(現・株式会社リクルート)に転職。リクルートでは、不動産業界担当の法人営業や大手企業専任の企画部門プロジェクトマネージャー、新規開拓営業チームマネージャー、ハイキャリア・グローバル領域コンサルタント等を経験。マーケットMVPやQMVP等、多くの表彰を受ける。

2013年に株式会社ジェイエイシーリクルートメントにサービス領域のマネージャーとして入社。人材業界や教育業界、小売・流通、サービス業界等を管轄するサービスDivの部長を歴任。2019年には、建設・不動産領域を管轄する部門である建設・不動産Divを新たに立ち上げ、部長として業界でも最大規模の部門に育て上げる。

2021年に株式会社カタリストエージェントを設立。人材紹介業界に特化した転職エージェントとして、人材紹介会社の支援を中心に事業を行う。

▼こちらからカタリストエージェント代表の勝田氏のnoteをご覧いただけます。
https://note.com/catalystagent