人材業界トレンド挑戦する派遣・紹介会社たち

人材紹介業界にAIの革命を 株式会社エーアシが目指す「エージェント品質の最大化」

「属人性」の壁をAIで打ち破る:未経験CAも高品質な転職支援を可能に
インタビュアー: 本日は、人材紹介業界に革新をもたらすAI活用について、株式会社エーアシ代表の奥村様にお話を伺います。

まずは奥村様の自己紹介と、貴社、株式会社エーアシの事業内容について教えていただけますか?

奥村氏: 同志社大学卒業後、レバレジーズという人材サービスを多角的に展開する会社に新卒で入社しました。IT専門職の転職・フリーランス支援事業に配属され、大阪支店の新規立ち上げをプレイヤーとして経験した後、名古屋支店の新規立ち上げ責任者を2年半務めました。その後は本社で売上50億円規模のグループマネージャーを経て、独立に至ります。

そして現在、私は株式会社エーアシとして「エージェント品質の最大化」をミッションに掲げ、人材紹介会社様のサービス品質向上を実現するプロダクトを展開しています。

インタビュアー: 「エージェント品質の最大化」をミッションに掲げている背景には、どのような思いがあるのでしょうか?

奥村氏: 長年人材業界に身を置いてきて、この業界はキャリアアドバイザー(CA)個人の能力に大きく依存する、非常に属人性の高いビジネスモデルだと感じていました。事業を拡大するにはCAの採用が不可欠ですが、多くは未経験者が占める傾向にあります。結果として、事業が拡大してもサービスの質が追いつかない、という課題を一定規模以上のエージェントが漏れなく共通して持っていました。

求職者にとって人生を左右する重要な転職活動が、どのCAが担当するかでその成果が大きく変わる、いわゆる「CAガチャ」の状態であることに強く問題意識を感じていました。一方でCAの皆さんも悪気があって品質を下げているわけではありません。だからこそ、人がやるべきことに集中し、AIが得意な領域はAIに任せることで、関わる全員がハッピーになる世界を実現したいと考えています。

決定件数5倍のインパクト!AIが実現する「最適マッチング」

インタビュアー: その世界観を実現するための具体的なサービスやプロダクトはどのようなものがありますか?

奥村氏: 弊社のメインプロダクトは「a-assi(エーアシ)AIマッチング」です。これは、自社(エージェント)にて保有する数千、数万の求人の中から、求職者様の経験、スキル、希望にマッチした求人をAIが高精度かつ網羅的にレコメンドしてくれるサービスです。加えて、レコメンドされる各求人ごとに、その求職者様の情報に基づいたおすすめ理由を生成します。これにより、求職者様の支援成功率を最大化し、求人選定・提案の品質向上を目指しています。

インタビュアー: 実際に導入された企業様で、課題が解決した事例があれば教えてください。

奥村氏: はい、インパクトのある事例があります。これまで月々の決定件数が1〜2件だったキャリアアドバイザーの方がいらっしゃいました。「a-assi(エーアシ)AIマッチング」導入から約2ヶ月後には、なんと月5件の決定を出すようになったんです。

このCAの方は、求職者様に寄り添う能力は非常に高かった。しかし、1万件近くある求人の中から最適なものを選ぶのが苦手でした。弊社のサービスを導入いただいたことで、求人選定・提案のクオリティーが引き上げられ、求職者様にとって最良の選択肢が提示できるようになり、結果として決定件数が導入前の5倍に向上しました。

インタビュアー: 決定件数が5倍とは驚きですね。キャリアアドバイザーの求人理解や求人選択プロセスが劇的に改善されたということでしょうか?

奥村氏: まさにその通りです。求人データベースが普及し、求人数確保は難しくありません。しかし、一つ一つの求人をすべて把握するのは非常に困難です。担当者はどうしても、記憶に新しいものやキーワードがマッチしているものを提案しがちです。それをAIが「求人の意図」を考慮し、選んでくれることで、最適な提案が可能になります。

「人がAIを育てる」数百時間のチューニングが精度を生む

インタビュアー: 最先端のAIを活用して人材紹介のプロセスを変革されていますが、そこに至るまでの難しさや大変さはどういった点でしたか?特にAI活用という点で。

奥村氏: 弊社のプロダクトは、生成AI、特にLLM(大規模言語モデル)のAPIを利用して開発しています。これを人材紹介業に特化して作り込んでいる点が非常に重要なんです。作り込まずにそのままChat GPT上で利用しても、まったく精度が出ません。この精度を出すために、私たちはひたすら時間を費やし、チューニングに励みました。これが非常に大変な部分でしたね。

具体的には、生成AIから得られたマッチングの回答結果を、私自身が数百件にわたりレビューし、共同代表の久川がそれをもとにプロンプトやデータ形式を改善する。この地道な作業の繰り返しによって、エーアシのAIは高い精度を実現しています。私の長年の人材紹介経験の知見が、AIの「教師」となり、人間らしい判断基準を学習させていったんです。

インタビュアー: 奥村さんの人材紹介業界での経験や知見を、AIに教えてチューニングしていった、という形ですね。

奥村氏: おっしゃる通りです。私の実体験がかなり反映されていると思います。

導入後の徹底伴走:AIを「使える」ツールへ

インタビュアー: お客様に導入していただいてからの、お客様側での大変さや難しさはいかがでしたか?

奥村氏: どのSaaSプロダクトやツールでもそうですが、導入してから利用率を上げていくことは大変です。特にAIは「Aを返したら必ずBが返ってくる」というわけではなく、B’のような結果が返ってくるケースもあります。その結果をうまく活用するには、利用者側にある程度のコツが必要ですし、一度の体験が悪ければ利用しないという意思決定にも繋がりかねません。

この利用率を上げていくこと、そして「このツールは本当に有用である」と信用してもらうまでの心理的障壁を解決するのが、新規企業様への導入初期2〜3ヶ月で一番大変な部分です。私たちはこの課題に対し、丁寧に深く入り込み、伴走するようにサポートしています。

インタビュアー: 粘り強く伴走していった、と。

奥村氏: まさにその通りです。

人材紹介の未来を拓くAI求人管理の夜明け

インタビュアー: ここからは、現在の人材紹介業界でのAI活用やトレンドについてお伺いします。最近、特に注目されているAI活用やプロダクトはありますか?

奥村氏: AIを活用いただく上で、どのようなデータをどれだけ充実させて自社のデータベースに持っているかが非常に重要になります。現状、ATS(応募者追跡システム)上に求人があるものの、CRM(顧客関係管理)上に登録しきれていない企業が非常に多いです。

弊社は、この課題を解決すべく、AIを活用してATSなどの情報をCRM上に綺麗に自動登録させるプロダクトを構想中です。これにより、エージェントは求人検索性を向上させ、提案できる求人数を最大化できます。すでに多数のモニター企業様にご契約いただいており、大きな期待を寄せていただいています。

インタビュアー: 求人がAIで集められると、御社のAIマッチングがさらに活きるということでしょうか?

奥村氏: はい、おっしゃる通りです。求人数が最大化されること、そして求人情報が綺麗に登録されること、この2つの観点でAIマッチングに貢献できます。求人管理サービスの充実とAIマッチングによる提案の質向上によって、求職者様へ提案する求人選定の質を最大化する仕組みです。


AIが解放する「人の価値」:より深い顧客理解と情緒的な関係構築へ

インタビュアー: 履歴書作成や推薦文作成、そしてエーアシさんがされているような求人管理や求人マッチング以外に、何か注目されているトレンドや、AI活用が進むだろうと思われる領域はありますか?

奥村氏: 人材紹介は「リボン図」で表されるビジネスモデルですが、私たちは今、真ん中を含めた企業側の半分を展開しようとしています。

リボン図の求職者側の半分に関してでいうと、面談の録音・録画・解析ツールが普及していますが、最終的にはAIなのか判断がつかないクオリティーのAIアバターが面談する世界観になるのかなと想像しています。現状ではその手前にあたる、面談中にボットが登場し、聞くべき内容や深掘るべき内容をCAに教えてくれるようなツールも登場するだろうと見ており、私たちも非常に注目しています。

やはりキャリアアドバイザーの存在は、求職者の方に安心を与え、信頼を築き、人が伴走してくれるからこその安心感を追求していくものだと思います。そのため、書類作成や履歴書・経歴書の作成といった部分はAIが代替すべきだと考えていますし、そのようなサービスの高精度化を非常に望んでいます。

インタビュアー: つまり、リクルーティングアドバイザーやキャリアアドバイザーが、より顧客である企業や求職者に向き合う時間や質を向上させられるということですね。

奥村氏: はい、その世界観を実現したいと考えています。求職者支援における周辺業務に近い部分はすべてAIが代替できるようになります。これにより、アドバイザーの方々は、求職者とウェットにコミュニケーションを取り、信頼を獲得していくことや、安心を与えて良い転職活動をサポートすることに注力できます。

RAの方々も、採用担当者の方から、求人に対する思いや本当に重要にしたい部分を引き出すといった、人と人とのコミュニケーションの部分に、より重きを置いて活動していける世界になっていくでしょう。各人材サービス提供事業者様の差別化ポイントも、むしろ「」の部分になってくるだろうとイメージしています。

人材紹介の未来は「人」と「AI」の協調にある

インタビュアー: 奥村さんが考える、今後の人材紹介はAIでどのように変わっていくと思いますか?または変えていくのでしょうか?

奥村氏: キャリアアドバイザーが全く不要になる世界がいつか訪れるのかもしれませんが、それはここ数年で訪れるとは思っていません。やはり人が介在することで得られる安心感の大きさや、ノンバーバルなコミュニケーションから得られる情報量はまだ人が介在したほうが大きいと思いますので。

一方でAIの活用はもはや避けられないことです。どれだけ早く、そして適切にAIを活用していくかが、各人材紹介会社様の経営的な意思決定において重要になってくるでしょう。転職支援は大きなキャリアの意思決定になるため、情緒的な部分の比重がより大きいと考えています。「この人になら任せられる」という「人の価値」こそが、今後の人材紹介会社の差別化ポイントになるでしょう。

AI活用はすでに現実!まずは一歩踏み出し、未来を掴む

インタビュアー: 最後に、人材紹介会社へのアドバイスやメッセージがあればお聞かせください。AI活用に課題を感じている会社や、まだハードルが高いと感じている会社もあるかと思います。

奥村氏: そうですね。非常にドライな言い方になりますが、AIの活用自体はもはや避けられません。すでにリアルタイムに起こっていることです。ただ、人材紹介業においてAIをどううまく活用していくかというノウハウやティップスが、まだ世の中に十分落ちていなかったり、それを推進していかないといけないという強い危機感のようなものがまだない状況だと思います。

弊社は「人材紹介会社様の質の向上」というミッションをもとに事業を行っており、特に生成AI、LLMの活用文脈においては、かなり専門的な会社だと思っています。プロダクトとしてはAIマッチングや構想中の求人管理ツールがありますが、それ以外の部分でもAI活用に関するアドバイスをさせていただいたり、必要に応じて個別のツール開発も行っています。

人材紹介業において「AIを活用したいが、まだよく分からない」「どこから手をつけて良いか分からない」といったお困りがあれば、ぜひ私たちにお声かけいただければと思います。そして、まずは「トライしてみる」ことから始めるのが良いと思います。無料プランでも良いので、Chat GPTを使って何かしてみようとか、推薦文を作ってみようとか、履歴書の添削をしてみようとか。そういったところからでも良いので、ぜひこのAI活用に対するメンタルブロックを外して、トライしていただけると良いのではないでしょうか。

インタビュアー: そうすると、明るい未来が待っているかもしれない、と。

奥村氏: そうですね。どのような未来になるのかはまだ読めない部分も大きいですが、少なくともそこにはAIが伴っているはずなので。

インタビュアー: 奥村様、本日は貴重なお話をありがとうございました。

まとめ

株式会社エーアシの奥村氏へのインタビューを通じて、人材紹介業界が抱える「属人性」という長年の課題に対し、AIがいかに革新的な解決策をもたらすかが明らかになりました。

「a-assi(エーアシ)AIマッチング」は、決定件数5倍という驚異的な成果を上げ、その背景には奥村氏の深い業界知見と、数百時間にわたる綿密なAIチューニングという地道な努力がありました。

また、単なるプロダクト提供に留まらず、導入後の手厚い伴走支援を通じて、お客様がAIを「使いこなせる」ようになるまでの心理的障壁を取り除くことにも注力しています。

今後はAIによる「求人管理」の構想も進んでおり、AIが人材紹介のフロントからバックエンドまで、より深く関与していく未来が示唆されました。

奥村氏が繰り返し強調するのは、AIが事務作業を代替することで、キャリアアドバイザーやリクルーティングアドバイザーが「人に寄り添う」という本質的な業務に集中できる、という点です。

AI活用はもはや避けられない時代の流れ。今回のインタビューは、人材紹介会社が「人の価値」を最大限に引き出し、新たなビジネスモデルを構築するための、具体的なヒントと希望を与えてくれる内容でした。

プロフィール

奥村 壮 氏

株式会社エーアシ  

代表取締役/CEO

レバレジーズ株式会社の「レバテック」にて新規支店責任者、年商50億規模のグループマネージャーを経て独立後、HR SaaSや人材エージェント様向けのコンサルティングを行う会社を創業。

顧客支援を通して人材紹介エージェント事業における属人性に大きな課題を感じ、久川とともに株式会社エーアシを創業し代表取締役/CEOに就任。