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IT導入補助金2025は狭き門に?採択率が低下した理由と、2026年対策を見据えた申請ポイント

IT補助金2025は狭き門に?

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者の業務効率化やDX推進を支援する制度として広く知られ、これまで比較的高い採択率を維持してきました。

しかし、2025年度に入り、その状況は一変しています。「以前は問題なく採択されたのに」「急に採択率が下がった」といった声が多く聞かれるようになっています。
実際、過去年度と比較して、2025年度の採択率は大幅に低下し、補助金獲得のハードルが急激に上がっています。なぜIT導入補助金は、ここまで「狭き門」になったのでしょうか?

本記事では、2025年度の採択率低下の要因を整理するとともに、この状況下でも採択されるための具体的な申請ポイントを、2026年度を見据えて解説します。

IT導入補助金2025 採択率が示す「狭き門」の現実

 IT導入補助金2025の概要と採択率の推移

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的として、デジタル化やDX推進を後押しするITツールの導入を支援する制度です。
2025年度も、通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠など、複数の申請類型が設けられています。

出典:中小企業庁『中小企業庁担当者に聞く「IT導入補助金2025」

2024年度のIT導入補助金は、特に新設されたインボイス枠も影響し、全体的に高い採択率を示す結果となりました。

2024年度 IT導入補助金 採択結果

通常枠インボイス対応類型電子取引類型セキュリティ対策推進枠
申請数25,14046,3941225
交付決定数16,54033,4381192
採択率65.8%72.1%100.0%85.3%

出典:IT導入補助金2025 『交付決定事業者一覧および交付申請件数2024

ところが、2025年度に入ると、この傾向は一変します。特に通常枠では3次締切以降の採択率は30%台にまで急落しています。インボイス枠においても、2024年度の最終公募前までは90%台まであった採択率が2025年度では40%台にまで急落しています。

2025年度 IT導入補助金 通常枠採択結果(1次〜5次締切 合計)

公募回申請数交付決定数採択率
1次締切2,9791,51150.72%
2次締切3,5161,44741.15%
3次締切3,8561,17430.45%
4次締切2,74293534.10%
5次締切2,9761,10337.06%
合計16,0696,17038.40%


2025年度 IT導入補助金 インボイス枠(インボイス対応類型)採択結果(1次〜5次締切 合計)

公募回申請数交付決定数採択率
1次締切分6,4463,71057.60%
2次締切分7,6093,59247.20%
3次締切分8,2703,34640.50%
4次締切分6,5842,85243.30%
5次締切分6,6703,16147.40%
合計35,57916,66146.80%

出典:IT導入補助金2025 『申請数および交付決定数

この大幅な採択率の低下が、IT導入補助金2025が「狭き門」と言われる所以で、「申請すれば通るだろう」という従来の認識は通用しないことを示しています。
この傾向は2026年度以降も継続すると見られ、申請内容を根本から見直す必要があります。

なぜ2025年は厳しい?採択率が下がった3つの主要要因

要因1:不正受給対策による「審査基準の厳格化」

採択率が低下した背景として、まず挙げられるのが審査基準の厳格化です。

特に、2024年度には、キャッシュバックや企業実態の偽装申請、架空経費など複数の不正受給事例が発覚し、社会的な問題として大きく取り上げられました。
この事態を受け、2025年度のIT導入補助金においては、申請内容の「質」および「申請要件への適合性」に関する審査が、厳格化されていると考えられます。

形式的な記述や漠然とした効果の説明では通らないのは勿論のこと、導入するITツールによって実現される具体的な成果を、定量(数字)+定性(業務改善)という両面について記述する必要があります。
また、実態に即した計画になっているかといった面も厳しくチェックし、審査員が納得できる内容にすることが大切です。

要因2:申請件数の急増による競争率の激化

IT導入補助金が広く認知され、多くの事業者に利用されるようになった結果、申請件数が急速に増加しています。これが採択率低下のもう一つの要因として挙げられます。
実際に、2025年度は、2024年度の同時期(1次〜5次締切)と比べて、申請件数が約2倍に急増しています。

しかし、申請数が大幅に増加したにもかかわらず、交付決定数は2024年度(22,998件)と2025年度(23,056件)でほぼ横ばいに推移しています。この結果、採択率は2024年度の85.05%という高い水準から、2025年度には44.25%へと採択率が急落しました。
申請件数の増加に対し、採択の余地が大きく拡大していないため、競争が激化していることが分かります。
この厳しい傾向は、2026年度以降も同様に続くと予測されます。

申請数交付決定数採択率
2024年度 (1次〜5次締切)27,03922,99885.05%
2025年度 (1次〜5次締切)52,10823,05644.25%

出典:IT導入補助金2025 『交付決定事業者一覧および交付申請件数2024
出典:IT導入補助金2025 『申請数および交付決定数

要因3:過去採択企業への「減点措置」の影響

3つ目は、過去にIT導入補助金で採択された企業に対する「減点措置」の導入が挙げられます。

IT導入補助金は、過去に採択されている事業者でも、交付決定を受けた日から12ヶ月経っていれば、再度IT導入補助金を申請することが可能です。
しかし、2025年度のIT導入補助金においては、過去採択された事業者に関しては「減点措置」が適用されます。
適用される条件として、IT導入補助金2023または2024で交付決定を受けたソフトウェアと、今回申請するソフトウェアの機能(プロセス)が重複する場合は減点、さらに機能(プロセス)が完全に一致する場合は不採択となります。

過去に採択された場合

  • 機能(プロセス)が重複 → 減点
  • 機能が完全一致 → 不採択

この措置により、これまで継続的に補助金を活用してきたリピーター企業は、以前と同じ感覚で申請しても採択されにくくなっています。そのため、申請を検討される際には、この減点措置が自社で適用されるのかどうかを、公募要領にて事前に確認することが大切です。

 採択を高める申請ポイントとは?

ポイント1:初歩的なミス(要件漏れ・入力ミス)の徹底排除

一番重要となってくるのは、申請要件を満たしているかどうかです。
IT導入補助金には複数の申請要件が設けられており、これらに一つでも合致しない場合、審査対象外として不採択となります。また、前述で触れた「減点措置」に該当する場合も、不採択となるリスクがあります。申請を進める前に、まずは公募要領を確認し、要件を満たしているかを確認することが大切です。

加えて、以下の「初歩的なミス」は、審査員に悪い印象を与えかねません。申請の最終チェックでは、提出前に第三者にダブルチェックを依頼するなど、細心の注意を払いましょう。

  • 基礎情報の確認: 会社基本情報や事業内容の記載に、誤字・脱字がないか
  • セキュリティアクション自己宣言ID:11桁の数字に入力ミスがないか
  • 添付書類の有効性: 履歴事項全部証明書や納税証明書が最新のものであるか

ポイント2:課題×導入効果×数値目標の「整合性」を明確に

次に、重要になってくるのは、申請書に記載された「事業計画としての整合性」です。前章で触れたように、審査が厳格化された今、単にITツールを導入したいという抽象的な内容では審査員の評価を得ることは難しいでしょう。

整合性を示す申請書作成のポイント

  • 経営課題の明確化:
    自社の現状の課題を具体的に明記(例:営業リードタイムが長い、在庫管理にミスが多い、Excelや紙などの二重入力の手間が多い)
  • 導入ツールの期待・効果:
    導入するITツールが課題をどのように解決できるのか
  • 効果の数値目標:
    導入によって、その課題がどのように解決され、どれだけの定量的成果(KPI)が見込めるのか

具体的な目標設定の例

  • 「導入後の売上〇%アップ」「労働生産性〇%アップ」
     など事業成長に直結する具体的な目標を設定する。
  • 「入力時間を〇時間削減し、その分の時間を営業活動の時間に充てる」
     といった、業務改善の具体的な効果と、その後の行動までを明確にする。

この数値目標と導入効果の合理的な整合性こそが、審査員に好印象を与え、採択率向上につながってくるでしょう。

ポイント3:採択率を押し上げる「加点項目」の実施

IT導入補助金には、採択の可能性を引き上げる「加点項目」が複数設けられています。これらの加点項目を積極的に活用することで、採択率の向上につながります。また、減点対象となっている場合には、減点を補うために加点項目を実施することが重要となってきます。

以下の加点に関しては、2025年度で比較的どの事業者でも実施しやすいものとなっています。但し、申請枠によって加点対象になるものとならないものがあるので、申請前に公募要領等で事前に確認しておきましょう。

【加点対象となる取り組みの一例】

出典:IT導入補助金2025 『加点項目一覧

・賃上げの事業計画の策定、従業員への表明、事業計画の達成(*通|イ対|イ電|セ)
→事業計画期間において、以下各枠ごとの要件(詳細は
公募要領にてご確認ください)をすべて満たす3年の事業計画を策定し、従業員に表明するとともに、策定した事業計画を達成する必要があります。

・デジタル化支援ポータルサイト「デジwith」における「IT戦略ナビwith」を行っていること(*通|イ対|イ電|セ)
→中小機構が運営するデジタル化支援ポータルサイト「デジwith」における「IT戦略ナビwith」を交付申請前に行うと加点となります。

・クラウドを利用したITツール導入の検討(*通)
→導入するITツールとしてクラウド製品が選定されている場合、加点の対象となります。

・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか(*通|イ対)
→導入するITツールに、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているITツールが含まれていること。

・成長加速マッチングサービス(*通|イ対|イ電|セ)
→交付申請締切日時点において、中小企業庁「成長加速マッチングサービス」で会員登録を行い、挑戦課題を登録していること。

出典:IT導入補助金2025 『加点に必要な手続き
*加点略称意味:通…通常枠 イ対…インボイス枠(インボイス対応類型) イ電…インボイス枠(電子取引類型) セ…セキュリティ対策推進枠 

まとめ

IT導入補助金2025が「狭き門」となったのは、不正を防ぐために審査が厳格化されたこと、申請企業が急増し、競争率が激化していることが背景にあります。そのため、従来の「申請すれば通る」といった認識は通用しにくくなっています。

この厳しい状況で採択されるには、本記事で説明した「初歩的なミスをなくすこと」と「数値目標と導入効果の整合性を示すこと」と「加点項目を実施すること」がとても大切です。

2026年以降も、この厳しい状況は続くと予想されます。採択を確実にするためには、申請前の準備をしっかり行い、IT導入補助金の申請に知見のある信頼できる支援事業者と協力することが、採択の鍵となるでしょう。