日本では少子高齢化が進むにつれ、若い世代だけでは労働力を支えきれない状況が続いています。そんな中、65歳以上でも働き続ける人の数は増え続けており、働く意欲と能力を持つ層が確かな存在感を示しています。
かつては「補助的な戦力」と見られがちだったシニア人材も、いまは企業にとって欠かせない人材へと位置付けが変わりつつあります。これは、人材サービスを提供する派遣会社にとっても大きな転機で、シニアの経験を“価値”として捉え直すことで、新しい事業機会が生まれるタイミングでもあります。
本記事では、シニア人材の最適な派遣提案を実現するための具体的な方法を解説します。
データから見える高齢者の就業傾向
年齢ごとの就業状況
総務省統計局が「労働力調査」などを基にまとめた『統計トピックス No.142 統計からみた我が国の高齢者』によると、年々シニア層の就業率が上がっています。
65〜69歳では就業率が52%と半数を超え、70代前半でも34%と3人に1人が働き続けています。75歳以上でも一定の就業者が存在しており、「年齢が上がる=働けない」という以前の常識とは少し違った風景が見えてきました。
健康寿命が延びたり、将来の不安に備えたいという理由から「健康なうちは働きたい」「少しでも稼ぎたい」と考える層が増えていると考えられます。

出典:総務省統計局『統計からみた我が国の高齢者 』P.7
シニア層が希望する働き方とは
雇用形態では、65歳以上の役員を除く雇用者のうち 76.8%が非正規雇用 というデータがあります。

出典:総務省統計局『統計からみた我が国の高齢者 』P.8
ただし、働き方の選択肢として非正規雇用を主体的に選ぶシニア層も増えているため、非正規=低付加価値の仕事に従事している、という単純な読み替えには注意が必要です。
厚生労働省『高齢者雇用対策の概要』によれば、「不本意非正規労働者*」は全年齢の中で65歳以上の働く層が最も人数・割合ともに低いことから、正社員にこだわらない働き方を選ぶ人が増えている様子もうかがえます。65歳以上の就業率が上がっている一方で、短時間勤務など多様な働き方が増えていると考えられます。
*不本意非正規労働者・・・非正規雇用労働者のうち、現職の雇用形態に就いている主な理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」として、不本意に非正規の雇用形態に就いている人のこと

出典:厚生労働省「高齢者雇用対策の概要」P7
厚生労働省『高齢者雇用対策の概要』の「高齢者の就業理由」では、高齢者が働く理由として「収入がほしいから」が最も多く45.4%を占めています。しかし一方で、「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」「働くのは体に良いから、老化を防ぐから」「仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから」といった理由を合計すると49.8%に達し、収入目的をわずかに上回っています。

出典:厚生労働省「高齢者雇用対策の概要」P4
こうしたデータからも、高齢者が求めているのは、収入だけではなく、「これまでの経験を活かせること」や「人との関わりを通じて日々を健やかに過ごしたい」という思いも感じられます。働くことそのものが生活の一部となり、生き方の選択肢として大切にされている様子がうかがえます。
産業別の特徴と働き方
高齢者が最も多く働いているのは「卸売業・小売業」で、132万人と突出しています。店舗運営や接客、商品管理など、これまでの経験を活かしながら働ける職種が多く、安定した受け皿になっています。
一方で、存在感を急速に高めているのが「医療・福祉」です。過去10年で2.4倍へと大きく伸びており、介護施設や病院などの現場で慢性的な人手不足が続く中、シニアが担える役割が広がってきました。介護職のほか、生活支援や送迎、受付業務など、価値を発揮できる仕事が増えていることも後押ししています。
また、「サービス業(他に分類されないもの)」も高齢者の就業先として存在感を増しており、小売や医療以外の分野でもシニアを受け入れる動きが進んでいます。
製造業でも長年の技術経験や現場知識を活かす働き方が続いており、品質管理や補助作業など、無理なく続けられる職務が選ばれる傾向にあります。
さらに、宿泊・飲食サービス業でも高齢者の参画が広がっており、柔軟な時間で働きたい、あるいは接客経験を活かしたいと望むシニアにとって魅力的な選択肢になってきています。
このように、シニア人材の働き方の受け皿は、多様な産業にまたがって広がっています。派遣会社がこれら複数の産業のニーズを把握し、シニアの経験を活かせる職務設計をすることで、より柔軟かつ戦略的なマッチングが可能になるでしょう。

出典:総務省『統計からみた我が国の高齢者 』P.9
派遣会社にとってのシニア人材の価値
シニア人材の価値は、単に「長く働いてきた」という年数だけでは測れません。日々の業務の中で身につけてきた段取りの良さや、ちょっとしたトラブルの対処方法、初めての人にも安心感を与える接し方など、目には見えにくい力が蓄積されています。
派遣会社にとって重要なのは、このような経験をただ「ベテランらしさ」として扱うのではなく、企業の仕事にどう役立つかという視点で整理し直すことです。
たとえば、店舗運営の段取りが得意な人なら売り場改善のサポートに、長く顧客対応を担ってきた人ならクレーム抑止や受付業務の質の向上に、といった形で具体的な役割に落とし込むことができます。
また、シニア人材の強みは立ち上がりが早い点にあります。大がかりな教育がなくても、これまでの経験から仕事の勘どころを自然とつかみやすく、派遣先企業が求める役割を明確にできれば、現場にも無理なく馴染みます。
派遣会社として目指したいのは、企業が見落としがちな業務の隙間や、改善したいのに手が回っていない部分を拾い上げ、それに合ったシニア人材を提案していくことです。こうした一つひとつの積み重ねが、従来とは異なる派遣の活用領域を生み出します。大きな改革でなくても、小さな業務改善や役割の再整理から、確かな価値をつくることができます。

実践につなげるための3つの視点
現場でも十分に働き手として優秀なシニア層ですが、より高単価で派遣できる方法や、コストを抑えて派遣していく方法について解説していきます。
経験を生かした職務の再設計
シニアの働き方でよく聞かれる「短時間」「体力負担の少なさ」といった条件も、内容次第では十分に高い価値を生み出す仕事にできます。例えば派遣会社は、専門性を持つシニア人材の経験を「ジョブデザイン」として企業に提案できるのではないでしょうか。
- 専門性の高いシニア向け職務:
- 業務マニュアル作成や運用支援
- 若手社員へのOJT・メンター役
- 現場支援/コンサルティング支援
- 部門横断の改善プロジェクト支援
これらの業務は、その人が歩んできた経験がそのまま活きる領域です。短時間(たとえば週3日、1日4時間)でも、経験を活かせる仕事であれば集中して成果を出しやすく、単価設定の見直しにもつながります。
アルムナイ(元登録者)活用の視点
過去に派遣先で働いたことのある人材を、再び迎え入れるアルムナイ戦略も効果的です。仕事の流れや派遣の仕組みをすでに理解しているため、教育コストやミスマッチのリスクは低く、仕事への入り方もスムーズです。
また、労働者派遣法では60歳以上の派遣スタッフに対して「3年ルール*」の制約が緩和されており、企業としても長く働いてもらいやすい制度になっています。これを上手に活かせば、派遣会社として安定した供給力を示せる強みになります。
*3年ルール・・・同一の事業所で、同じ部署の同じ派遣社員を原則3年を超えて受け入れてはならないという労働者派遣法
DXによる管理コストの削減
シニア派遣が広がるにつれ、勤務条件や契約内容の幅が大きく広がる傾向があります。
たとえば、年金との兼ね合いで月あたりの収入を一定水準に抑えたい人もいれば、通院や家族の介護を考慮して週数日の勤務を望む人もいます。働く理由や生活状況が多様であるほど、派遣会社が扱う契約や勤怠のパターンも増えていきます。
こうした前提で運用を続けようとすると、派遣会社の負担が大きくなりがちです。特にシステム導入が十分ではない派遣会社の場合は、勤怠・請求・給与計算、契約期間、有給休暇の扱いなどが複雑化していきます。
複雑な業務を手作業のままで行うと、時間が膨大にかかる上にミスや属人化を招きやすくなります。そのため、これらの情報をシステムで一元化し、業務の自動化や仕組み化を進めていくことが望ましいでしょう。
DXは単なる効率化の手段ではなく、企業と働く人の双方が安心して続けられる環境を整えるための基盤です。シニア人材の多様な働き方を受け止め、無理なく運用できる体制を整えることが、結果としてサービスの安定にもつながっていきます。

法制度と現場のあいだにあるギャップ
高齢者の雇用環境は制度面で少しずつ整ってきています。
2025年4月の高年齢者雇用安定法(高年齢者雇用確保措置)改正によって、企業には「65歳まで希望者全員に雇用機会を確保する」制度の導入が義務化されました(定年延長・継続雇用・定年制廃止のいずれかを選択)。
一方、70歳までの措置は「努力義務」のため約3割程度にとどまっており、導入状況には企業ごとの差があります。 制度はあっても、実務への落とし込みは各社それぞれで、動き方もまちまちです。
令和6年の高年齢者雇用状況報告では、
- 65歳までの雇用確保措置はほぼすべての企業が実施
- 一方で、70歳までの措置は約3割程度にとどまる
- 65歳以上定年を設定している企業は約3割強
という結果が示されています。つまり、 「制度は整いつつあるが、70歳以降を見据えた運用はまだこれから」というのが実態です。
働く場をどう用意するか、どこまで任せられるか、勤務時間をどう調整するか——。制度の方向性は示されているものの、実際の現場で迷ってしまうことはいくつもあります。
こうした制度と現場のあいだに生じる揺らぎの部分こそ、派遣会社が具体的に関わり、価値を発揮できるのではないでしょうか。
試しに短時間から働き始めてもらう、業務を絞り込んで無理のない範囲でスタートする。こうした柔軟なアプローチは、企業にも働く側にも受け入れられやすく、新しい働き方の設計に役立ちます。高年齢者雇用安定法を“使える形”として促進し、シニアが無理なく成果を出せる働き方を提案することで、企業と働き手双方の課題を埋めることができるでしょう。

まとめ:シニア人材が力を発揮できる環境づくりへ
シニア人材の活躍が注目される背景には、「人手不足の穴を埋めたい」という理由だけではありません。長いキャリアの中で磨かれた判断力や段取り力、人との向き合い方など、目には見えにくい力が、いまの現場で確かな価値として受け止められ始めています。企業側もその可能性に少しずつ気づき始めており、シニア人材をどう活かすかが、これからの組織運営の大きなテーマになりつつあります。
そのなかで、派遣会社が担える役割も広がっています。シニアの方がどんな環境で力を発揮しやすいのか、どの程度の働き方を望むのか。こうした点を丁寧に整理し、企業側の業務や役割と自然につながる形で橋渡しできれば、短時間勤務でも成果を出せる仕事の設計や、現場にフィットするマッチングがより実現しやすくなります。そして何より、働く側と受け入れる側の双方が、無理なく続けられる関係づくりにつながります。
そのためには、多様な働き方を前提とした運用設計や、煩雑になりがちな管理業務をスムーズに回せる仕組みが欠かせません。こうした運用面をあらかじめ整えておくことは、派遣会社自身の負担を軽減するだけでなく、シニア人材にとっても安心して働き続けられる環境づくりにつながります。
こうした土台が整っていくことで、シニア人材が自分らしく力を発揮できる場は、これからさらに広がっていくはずです。
シニア人材の活用をしっかりと進めていくためには、幅広い雇用形態への対応や、最適なマッチングを支えるDX化が不可欠です。ぜひ一度、私たちにもご相談ください。
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