CA面談の真の目的は「候補者のキャリアを前に進める」こと
人材紹介におけるキャリアアドバイザー(以下CA)の役割について、「アドバイザーとして親身に話を聞くべきか?」「それとも営業職として売上に貢献すべきか?」と、しばしば議論になります。
結論から言えば、CAは「アドバイザー」と「営業」の両方の側面を持つ職業です。そのためCAのミッションは「候補者のキャリアを前に進めること」と言えるでしょう。候補者の不安を和らげ、キャリアの悩みに寄り添い、希望の転職を叶えるために伴走する力が求められます。
その一方で会社の売上目標という現実との狭間で悩む方も多いのではないでしょうか?面談で話を聞いて終わりでは、会社の売上に貢献できないだけでなく、候補者からの信頼も薄れてしまいます。
本記事では、そんな悩めるCAの皆様に向けて「できるCA」として、候補者との信頼構築から、売上につながる候補者の応募承諾のノウハウを解説します。
面談の質を左右する「事前準備」
CAが面談前に最低限確認すべきこと
面談の成功は、ドアが開く前から始まっています。質の高い面談を実現するためには、候補者本人に会う前に、いかに多くの情報を整理し、仮説を立てられるかにかかっています。この準備を怠ると、面談の大半の時間が基礎情報の確認で終わってしまい、本質的なキャリアディスカッションに入る時間がなくなってしまいます。ここではCAが面談の質を高めるために、事前に最低限確認すべき項目を確認していきましょう。
- 職務経歴書の読み込み
職務経歴を追うだけでなく、「なぜこの会社を選び、入社し、そしてなぜ今は辞めようとしているのか」というストーリーを予測しておく - 必須情報と懸念点の抽出
希望年収や希望勤務地といった条件面はもちろん、職務経歴書の記載内容から、候補者が抱える不安や未解決の課題を予測する - 面談中の提案候補の選定
候補者の経歴や希望から、面談中に提案する「厳選求人」や、面談後に網羅的に提案する求人など、複数の提案候補をピックアップし、優先順位をつけておく

信頼構築の土台となる「面談導入」
面談導入は雰囲気づくりが重要
面談開始直後の数分間は、候補者の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作り出すために十分に配慮したい、面談の序章とも言える時間です。この短い時間に、差しさわりのない天候などの雑談や、心を開きやすい語り口調、穏やかな笑顔、安心感のある声のトーンで話すことなどが、候補者の本音や本来の姿を引き出すコツです。
候補者の方々は転職活動に不安を抱えており、CAを信頼して初めて、本当の希望や不満を語ってくれます。そうしてもらうためには、面談部屋の温度や照明、CA本人の清潔感なども含めて、候補者が話しやすい雰囲気を作るための「面談導入」がとても重要です。
候補者の本音を引き出す「ラポール形成」
フランス語で「架け橋」を意味する「ラポール」は、「信頼構築」という意味で使われることが多いですが、面談においてこの「ラポール形成」を通じて、いかに候補者の自己開示を促し、「この人に自分のキャリアを任せたい」と思ってもらえるかが重要です。
信頼関係(ラポール)を築くために何よりも大切なのは、「あなたがその人にまず興味を持つ」ことです。経歴書に書かれている事実をなぞるだけでは、候補者は「誰にでも話していること」しか話してくれません。
そこで、以下の質問を通じて、経歴の裏にあるその人の価値観を聞き出す姿勢が重要です。
- 今まで、重視してきた仕事選びの軸は何か?
- 前職(現職)を決めた当時の理由は何だったのか?
- どんな時にやりがいを感じ、どんな時に不満を感じたのか?
こうした価値観を聞く姿勢は、血の通ったキャリアディスカッションとなり、信頼構築の土台となります。
候補者の本質を掴む「ヒアリング技術」
ヒアリングは、ただ情報を集めるだけでなく、候補者自身に自分の考えを言語化させるためのプロセスです。面談の限られた時間で、曖昧な転職理由や希望条件を、具体的に応募に繋がる意欲へと変えていくのが、CAの腕の見せ所です。本質に迫る質問を重ねることで、提案の精度を高めます。
経歴ではなく「その人だけの価値観」を深掘りする
面談の多くの時間を、候補者の過去の仕事選びにおける価値観の深掘りに費やします。
その人の価値観が見えてくると、その後の求人提案の方向性がブレなくなります。例えば、「安定性」を重視してきたのか、「成長機会」を重視してきたのか、その人の仕事に対する価値観を理解することが、求人提案の土台となります。
「現状の課題」と「理想の未来」を整理し、言語化を助ける
- 現状の整理
「今、どんな課題や不満があって転職を考えているのか?」 - 未来の整理
「今後、どんな風に理想のキャリアを描いていきたいのか?」
この2つを明確に整理することで、候補者自身も「自分が何に対して不満を持ち、どこに向かいたいのか」を改めて認識できるようになります。それを踏まえた求人提案は、候補者自身が客観的に自分の未来を想像することができるでしょう。
職務経歴書にない「強み」を引き出し言語化する技術
職務経歴書には定量的な成果は書かれていても、その裏にある定性的な「強み」は控え目にしてしまう方がほとんどです。定性的な強みは企業への推薦におけるアピールポイントになるため、候補者の成功体験を深掘りし、「強み」を言語化していきましょう。
CA: 「このプロジェクトで目標を達成したとのことですが、なぜうまくいったのだと思いますか?」
候補者: 「粘り強く顧客と交渉したからです」
CA: 「具体的なエピソードを教えてください」
候補者: 「顧客が提示する条件では費用や工数面が現実的ではなかったため、社内関係者と相談をして代替案をいくつか準備し、顧客と何度も打ち合わせを重ねて双方が納得できる条件を導き出しました」
CA: 「それはつまり社内関係者と調整した上で、クライアントとの交渉が成立したということですね。顧客の要望や制約を踏まえ、現実的な着地点を見つける「交渉力・調整力」が強みと言えますね」
このように、候補者の「うまくいったエピソード」を掘り下げ、「候補者自身が気づいていなかった強み」を発見し、調整力、交渉力、論理的思考力や問題解決力といった「キャッチーで説得力のあるワード」に落とし込んで言語化します。これにより、面接対策の精度が向上するのはもちろん、候補者からの信頼を強めることにも繋がります。

応募のミスマッチを防ぐ「条件整理(Must / Want)」
内定辞退の主な原因として挙げられるのが、希望条件面でのミスマッチです。このミスマッチを防ぐためには、事前に希望条件を整理する際、「譲れない条件」と「妥協できる条件」を明確に分けておくことが重要です。
- 優先順位の可視化
まず、候補者に「年収」「業界」「職種」「勤務地」「リモートワーク」など、希望する条件に優先順位をつけてもらいます。 - 条件の限界設定
「では、この1位と2位(例えばフルリモートと年収アップ)が満たされなかった場合、あなたは転職を諦めますか?」と、あえて厳しい問いを投げかけます。 - MustとWantの確定
この質問により、「それはさすがに譲れない(=Must条件)」と「できれば欲しいけど、なくても検討はする(=Want条件)」が明確になり、提案すべき求人が絞られます。
候補者を「動かす」求人提案
面談における求人提案は「質」がすべてです。ヒアリングで明確にした候補者の価値観に基づき、応募につながる求人提案を行います。安易に大量に求人を提案することは、候補者に「興味のない求人を出してくるCA」という印象を抱かせてしまい、信頼を失うため厳禁です。
なぜ「質より量」の提案は信頼を失うのか
人材紹介業界では、NPS(顧客満足度調査)などのアンケートにおいて、「具体的な求人を紹介してほしかった」という回答が寄せられることがあります。これは「質より量」で求人提案をした結果、候補者が自分に合わない求人を提案されることに不満を感じている、と感じる方が一定数いると考えられます。
転職成功が期待できる候補者ほど、自分に合った厳選された求人の提案を望んでいます。そのため、どの求人サイトでも見られるような求人を提案することは避け、「候補者」に焦点を当てた求人提案の質を意識することが、CAに求められていることです。
面談中の求人提案は「厳選5件」
面談時間は一般的には1時間です。そのうち候補者のヒアリングに40分、求人提案に15〜20分を割くこととします。その限られた時間で候補者と深くコミュニケーションを取りながら提案する求人の件数は、どんなに集中しても2~3件、多くても5件が限界です。
また、面談の場でそれ以上の求人を紹介すると、候補者の注意力は散漫になり、応募をする判断にブレが生じてしまいます。結果、一旦持ち帰りにもなれば、他のエージェントに逃げられてしまう可能性も高まります。
面談中に応募承諾を獲得する求人提案とは
CAの面談の目的は、候補者の価値観や条件面を理解した上で、具体的なアクション(求人応募)を起こすことです。誠実なヒアリングによって、スキルや課題の整理が終わったら、プロとして次のステップへ進む後押しをします。
候補者が抱える「現状の課題」を解決し、「未来のなりたい姿」へ導くため、面談中に提案する求人は、応募承諾に繋がる可能性が最も高い「勝負求人」として厳選します。そして、必ずその場で求人票を見せながら、応募を促します。
「あなたの〇〇というスキルは、こういう課題を持つ企業だからこそ最大限に活かせます」
「今のあなたが抱える〇〇という課題は、この環境であれば解決できると考えます」
こういった具体的な根拠を示すことで、候補者の不安を払拭し、求人への興味を促します。候補者のスキルや課題と求人内容が、どのようにリンクしているかを明確な理由付けと共に伝えることが、応募承諾率を向上させるコツです。また、具体的な根拠と合わせた求人の提案は、その場での応募承諾を得やすくなるだけでなく、その後の選考通過率をも向上させ、最終的に内定へと繋がりやすくなります。
面談後の「網羅的な求人提案」:使い分けの技術
面談中に提案した「厳選求人」以外にも、多数の求人を紹介することがあります。
この面談後の求人提案は、網羅性を持たせる目的で行います。具体的には、マイページやLINEなどのツールを活用し、応募意欲を醸成するための「質重視の対面提案」と、網羅的に情報を提供するための「量重視の非対面提案」を使い分けるのが効果的です。
- 面談中(厳選求人)
タイムリーに求人票を見せながら、熱量を持って提案し、その場で応募意思を確認する - 面談後(その他)
「他にもいくつか可能性のある求人をご提案しますね」と伝え、まとめてマイページに反映させたり、LINEなど連絡を取りやすいツールに求人情報を送る
長期的な信頼を獲得するために
長期的な信頼構築と今後の成約のためには、候補者の近況や直近の求人状況を見極め、無理に転職を勧めない勇気も必要です。この見極めこそが、CAのプロとしての価値を高めます。
「あえて進めない」勇気が次の成果へ
面談では、現状のスキルに対して理想が高すぎるなど、現状と理想のギャップが大きく、合う求人がないケースも必ず発生します。
こういう時こそ、「今は転職しない方が良い」と正直に伝える勇気がCAには必要です。良かれと思って無闇に転職を勧めるのは、返って信頼を失いかねません。
無理に進めず、候補者の希望がどこまで本物かを確認しながら、「この仕事に就くには、まずは〇〇のスキルを身につける方が先決です」「今の職場に留まり、〇〇の経験を積むことはできそうですか?それが可能なら3ヶ月後に再検討することをお勧めします」など具体的に次のアクションを伝えておくと、その後の展開が変わりやすくなります。
数ヶ月後、「あの時、具体的なアドバイスをくれたCAなら信頼できる」と、候補者の方から改めて連絡が来て、転職活動を再開するケースもよくあります。この時点で、あなたはCAとして、高いグリップ力を持った状態でスタートできます。
なぜ無理な転職推奨は「売上」にならないのか
応募意欲が低い候補者を無理に動かすと、書類選考は通過しても、その後の面接で辞退したり、内定が出ても辞退する可能性が高くなります。結果的にCAの売上には繋がりにくくなります。
それどころか、転職意欲の低い人材をクライアント企業に勧めることは、企業からの信頼を失うことにもつながります。最悪の場合は企業担当者から「ちゃんとスクリーニングしていますか?」とクレームになり、その後の取引に悪影響を及ぼしかねません。誠実な対応こそが、長期的な売上と業界での評判を築く唯一の方法です。
おわりに:面談は「行動を生む場」である
CAにとっての面談は、単に「話を聞くこと(信頼構築)」で終わりではなく、「行動を生む場」でなければなりません。
話を聞いた上で、候補者のキャリアと人生を考え抜いた具体的な提案をすること。その提案がドンピシャにはまり、候補者のキャリアが実際に動く瞬間に立ち会うことこそが、この仕事の最高の醍醐味であり、CAがプロフェッショナルとしての価値を最大限に発揮した瞬間です。
CAの価値は、話を聞くこと(信頼)と具体的な提案をすること(行動)の両立にある
1. アドバイザーとしての役割
- 目的: 信頼構築、本音の引き出し
- 効果: 面談後の連絡の継続、グリップ力(信頼)の向上
2. 営業としての役割
- 目的: 行動(応募)の獲得、成約
- 効果: 売上の達成、候補者のキャリア実現
最後に、CAの介在価値を最大化するために
CAの介在価値を最大化するうえで、質の高い面談を通じて候補者の信頼を確実に築き、それが応募獲得率の向上に直結することこそ、人材紹介ビジネスの根幹をなす非常に重要な要素です。
CAが、本来最も注力すべき「面談」や「候補者へのきめ細やかなフォロー」に集中できる環境を整備すること。そのためには、進捗管理やデータ入力といった裏方の煩雑な業務を効率化するシステムの導入が必須となります。
ノウハウの属人化を防ぎ、候補者一人ひとりの状態や進捗をチーム全体でリアルタイムに共有できる基盤があれば、マッチングの精度は飛躍的に向上し、「確度の高い売上予測(予実管理)」も実現可能になります。
もし今、貴社でCA業務の抜本的な効率化や、データに基づいたより確かな営業戦略の強化をお考えでしたら、ぜひ一度ブレイン・ラボへご相談ください。







